何もないことが幸せなのなら。
こんなところ早く連れ出して。
【叶わぬ願い】
真っ白で何もない世界。
私はただただ、泣いていた。
だってここには何もない。
それが幸せなんて。
そんな幸せ、幸せと感じられるの?
ここには言いようのない不安も、凍えるような寂しさも、業火のような痛みもないけれど。
震え上がるような喜びも、笑顔になれる楽しさも、温かいと感じる愛情すらない。
真っ白で何もない世界。
私はただただ、泣いていた。
何で、私は、泣いているの?
その答えも、この世界で出ることは叶わない。
何もないことが幸せだと。
誰かが呟いてできた世界。
そんな世界で終わるのなら、
私をどうか、連れ出して。
2010-11-18 15:51
愛されたい。
そう嘆く君へ。
【スターダスト】
私は輝いてる?
彼女は聞いてきた。
なんでそんなことを聞くの?
俺は、質問の意味がわからず、こう聞き返した。
そうすると、彼女は気を悪くするどころか顔を綻ばせて、言い放った。
だって輝いてる人って、自然と愛されるじゃない!
そんな素敵な人になりたいのと言う少女に。
充分なれてるよ。
俺は少し照れながら、そう答えたのだった。
気づいて。
私は、ここに、いるよ。
2010-11-15 20:35
今日は寒い!
だから今日の夕飯は――
【鍋奉行】
やっぱりこれだよねぇ〜
そう言いながら、彼女は肉を口に運ぶ。
こらっ肉ばかり食べない!
白菜も食べなさいという声と共に、俺は彼女の皿に白菜を投げ込んだ。
ちゃんと食べるもん!
そう言って頬を赤らめる彼女。
しかし俺は構わず指摘した。
皿の中、肉しか見えないけど?
彼女はうっと声を詰まらせる。
ついでに喉も詰まらせ、ゴホッと咳き込んだ。
あぁ馬鹿だなぁ。
そーゆうところが可愛いんだけど。
でもそこまで、俺は言ってやらない。
その代わりに、今度はネギを投げ込んだ。
こらぁ!
あとで食べるの!
そんな言い訳知ったことか。
そんなこと聞いてたら俺の食べる肉がなくなる。
すると彼女は一変して、しょんぼりして言った。
それは……ごめんなさい。
!
そういう不意打ちずるいだろ。
あーもう!
……食べたいだけ食べていいから。
冷えた体を温めなさい。
それに彼女は嬉しそうに微笑んだ。
2010-11-7 20:27
『私たち、結婚することになりました』
以前付き合っていた、幼なじみからの言葉。
【どうか、どうか、幸せに】
懐かしい、彼女からの招待状。
久しく会っていない彼女の、しかし幸せの知らせに、思わず頬が緩む。
そうか、結婚するのか。
まるで親が子の成長を想うような。
そんな温かな気持ちに、胸が満たされる。
しかしあいにく、この日はどうしても出席できない。
何か、祝いの気持ちを届けられないだろうか。
うーん……
カレンダーとにらめっこしていると、ふと目につくものが。
そうか、この手があったか。
思い立ったが吉日。
すぐに俺はパソコンで手配した。
大切な人に、いかがでしょうか?
11月5日は、電報の日。
2010-11-5 20:31