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叶わぬ願い

 
何もないことが幸せなのなら。
こんなところ早く連れ出して。



【叶わぬ願い】



真っ白で何もない世界。
私はただただ、泣いていた。

だってここには何もない。
それが幸せなんて。

そんな幸せ、幸せと感じられるの?

ここには言いようのない不安も、凍えるような寂しさも、業火のような痛みもないけれど。
震え上がるような喜びも、笑顔になれる楽しさも、温かいと感じる愛情すらない。

真っ白で何もない世界。
私はただただ、泣いていた。

何で、私は、泣いているの?

その答えも、この世界で出ることは叶わない。

何もないことが幸せだと。
誰かが呟いてできた世界。

そんな世界で終わるのなら、
私をどうか、連れ出して。
 

スターダスト

 
愛されたい。
そう嘆く君へ。



【スターダスト】



私は輝いてる?

彼女は聞いてきた。

なんでそんなことを聞くの?

俺は、質問の意味がわからず、こう聞き返した。
そうすると、彼女は気を悪くするどころか顔を綻ばせて、言い放った。

だって輝いてる人って、自然と愛されるじゃない!

そんな素敵な人になりたいのと言う少女に。

充分なれてるよ。

俺は少し照れながら、そう答えたのだった。


気づいて。
私は、ここに、いるよ。
 

鍋奉行

 
今日は寒い!
だから今日の夕飯は――



【鍋奉行】



やっぱりこれだよねぇ〜

そう言いながら、彼女は肉を口に運ぶ。

こらっ肉ばかり食べない!

白菜も食べなさいという声と共に、俺は彼女の皿に白菜を投げ込んだ。

ちゃんと食べるもん!

そう言って頬を赤らめる彼女。
しかし俺は構わず指摘した。

皿の中、肉しか見えないけど?

彼女はうっと声を詰まらせる。
ついでに喉も詰まらせ、ゴホッと咳き込んだ。

あぁ馬鹿だなぁ。

そーゆうところが可愛いんだけど。
でもそこまで、俺は言ってやらない。
その代わりに、今度はネギを投げ込んだ。

こらぁ!

あとで食べるの!
そんな言い訳知ったことか。
そんなこと聞いてたら俺の食べる肉がなくなる。
すると彼女は一変して、しょんぼりして言った。

それは……ごめんなさい。



そういう不意打ちずるいだろ。
あーもう!

……食べたいだけ食べていいから。

冷えた体を温めなさい。
それに彼女は嬉しそうに微笑んだ。
 

meteoric shower

 
一緒にいたかった。
でも、もう。



【meteoric shower】



涙が止まらない。
ずっと一緒に、いると思っていた、のに。

貴方はもう、隣にいない。

どうして?
この流星群、一緒に見ようって言ったじゃない。

星が好きな貴方。
この流星群はすごいから、絶対に見ようねって。

そう、笑顔で、言ったのに。


その笑顔のまま、貴方は逝ってしまった。


ねぇ、流星群、見えないよ。
全部、ぜんぶ、貴方のせい。

降り注ぐ星の雨。
にじんでぼやけて、何も見えない。
 

どうか、どうか、幸せに

 
『私たち、結婚することになりました』
以前付き合っていた、幼なじみからの言葉。



【どうか、どうか、幸せに】



懐かしい、彼女からの招待状。
久しく会っていない彼女の、しかし幸せの知らせに、思わず頬が緩む。

そうか、結婚するのか。

まるで親が子の成長を想うような。
そんな温かな気持ちに、胸が満たされる。

しかしあいにく、この日はどうしても出席できない。
何か、祝いの気持ちを届けられないだろうか。

うーん……
カレンダーとにらめっこしていると、ふと目につくものが。

そうか、この手があったか。

思い立ったが吉日。
すぐに俺はパソコンで手配した。


大切な人に、いかがでしょうか?
11月5日は、電報の日。
 
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プロフィール
紗夜香さんのプロフィール
性 別 女性
年 齢 37
地 域 三重県
血液型 B型
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