どうしても、今日。
【メリークリスマス!】
ねーあれ!欲しい!
俺は彼女の声にめずらしいと驚いた。
彼女はあまりワガママを言う方ではない。
おねだりなんていつぶりだろうか。
何が欲しいの?
たまにしかないおねだりだから、できれば叶えてあげたいと、彼女に聞いてみる。
すると彼女は指さしてコレっ!と言った。
それに。
……これ?
さらに驚いたのは仕方がないと思う。
指さす先にはペアの指輪。
つかの間思考が停止した。
それに彼女は気づいたのだろう、慌てて訂正を入れた。
結婚指輪とか、そーゆうのが欲しいんじゃないの!
ただその指輪が欲しかっただけで!
それに俺はほっと肩を下ろす。
一瞬プレッシャーをかけられたのかと思った。
もちろんいいよ。
クリスマスだしねと付け加えれば、彼女は少し頬を染めて、嬉しそうに微笑んだ。
せっかくだからプレゼント用に包んでもらい、そのまま渡そうとしたとき。
ちょっと待って!
彼女から思わぬストップが入った。
どうしたの?
それに。
私も渡したいものがあるの。
クリスマスだから。
そう言われて出されたのは。
同じ包みの、同じ大きさの包装紙。
まさか。
クリスマスのプレゼントは、交換するものでしょ?
そう言って彼女は、照れくさそうに微笑んだ。
メリークリスマス!
2010-12-25 03:02
やっぱり外に出るんじゃなかった。
【イブの憂鬱】
そうだよね、そうだよね!
今日はどこ行ったってカップルしかいない!
そんな日だった!
周りを見渡せば人、人、人。
イベント事ってすごいなと、客観視してしまうぐらい、うじゃうじゃいる。
よく外出る気になるなぁ。
まぁ私もその一人だけど。
ぼそっと呟いて、一人空を見上げた。
独り身にこの空気はつらい。
どこもかしこもラブラブで。
そんな幸せオーラが眩しい。
それでも外に出たのは。
完全なる一人より、雑踏の中の一人の方が、マシだったから。
少し歩けば、クリスマスにあやかったイベントばかり。
イルミネーションは綺麗だと思うし、
街の雰囲気も好きだ。
でもやっぱり一人は中々そういったものの恩恵も受けられない。
やっぱり帰ろっかな。
そう呟いたとき。
お一人ですか?
聞いていたのか、突然の声にびっくりして、振り向いた。
てっきりナンパかと思って見てみれば、
彼の恰好に私は目を丸くした。
サンタ、さん?
彼はニッコリして頷き、そっと手を取った。
貴方にも幸運が舞い降りますように。
そう言って手に置いたのは。
きれい……
四つ葉のクローバーが閉じ込められたガラス細工。
カップルには別のものを渡してるんですが、
他の方にはこれを渡してるんです。
ぜひ受け取ってください。
その声に、優しさに、胸の奥が温かくなる。
ありがとう。
そう言うと彼は満面の笑みで会場に戻りながらこう言った。
ハッピークリスマス!
貴方が笑顔で過ごせますよう!
2010-12-24 11:55
何もないことが幸せなのなら。
こんなところ早く連れ出して。
【叶わぬ願い】
真っ白で何もない世界。
私はただただ、泣いていた。
だってここには何もない。
それが幸せなんて。
そんな幸せ、幸せと感じられるの?
ここには言いようのない不安も、凍えるような寂しさも、業火のような痛みもないけれど。
震え上がるような喜びも、笑顔になれる楽しさも、温かいと感じる愛情すらない。
真っ白で何もない世界。
私はただただ、泣いていた。
何で、私は、泣いているの?
その答えも、この世界で出ることは叶わない。
何もないことが幸せだと。
誰かが呟いてできた世界。
そんな世界で終わるのなら、
私をどうか、連れ出して。
2010-11-18 15:51