久しぶりに、故郷に帰った。
【思い出す】
何年ぶりだろうか。
様々な部分が変わり、それでもどこか懐かしい土地。
懐かしさと少しの寂しさを覚えつつ、私は目の前の風景を静かに見つめた。
あぁ、帰ってきたんだ……
そうしながら思い出すのは、やはり青春時代。
あの小さかった頃、仲の良かった友人は元気にしているのだろうか。
……もう、ここにはいないのだろうか。
私も、ここにはもういない。
自分だけだとは、思っていない。
それでも。
会えたら。
私はとっさに首を振る。
頭に浮かんだ「彼」を振り払うように。
……だから、嫌だったんだ。
止めていた想いが膨らんでいく。
会いたくない。
――――――――会いたい。
見たくもない。
――――――――触れたい。
通る人の中に「あの人」がいたら良いのにと目が追うのに、
会ってしまったら最後だと、奥底で警鐘が鳴る。
あぁ、分かってる。
だから、
帰ってきたくなかった。
――――――――帰ってきたかった。
誰か、止めて。
2015-1-19 18:34
ねぇ、また会いたいって思ったの。
【明日が来るか分からないから】
なぜ会おうって言ったんだ?
お酒を飲んでその問いに、私は疑問符を浮かべる。
どういうこと?と聞くと、彼は言いづらそうに言った。
だって君には彼氏がいるじゃないか。
なのに……
そこで口を濁す彼に、でもそれで私は分かってしまった。
彼氏がいるのに、ほかの男と二人で会ってもいいのかと。
確かにそう思うよねと、思いつつ私はつぶやいた。
大切な人と会うことも、できなくなるなら彼氏なんかいらない。
彼はそれに目を見開いた。
私はたくさん悩んで、そのたびに貴方に助けてもらった。
なのに、私は貴方を助けることも、癒すこともできないの?
私はそっと、目を閉じた。
もちろん貴方が私と一緒にいることで、
つらい思いをしたり、
寂しい思いをするのなら、
私は離れます。
でも、少しでも貴方が私といることで、
少しでも安心や、救いになるのなら。
そんな、真っ直ぐ過ぎる気持ちは、言えないけれど。
もし私に明日が来なかったとき、会わなかったことを後悔だけはしたくないの。
そっと目を開いて、彼を見つめて、私はそれだけを伝えた。
利用?
してる?されてる?
そんなの、関係ないよ。
2011-8-8 19:49
前を見て。
未来は無限にも広がっている。
【∞】
小さなきっかけで、世界は変わるんだよ。
例えば人やものとの出会い。
受けた言葉や映像。
ストーリーを見た人は「こんなことで?」と、思うかもしれない。
でもね。
そんなささいなことで、人は、未来は変われるんだ。
ほら、君は好意を持たれたら、少なからず嬉しいだろう?
ほら、君はほめられたら、少なからず自信を持つだろう?
もう、ここで君の未来は君の中で、少し変化しているんだ。
忘れないで。
可能性を潰すのも、生かすのも、君次第。
でも、常に人は進んでいるんだ。
自分の才能を見て、励ましてくれたり、好きだと言ってくれたり。
この、人が見つけ好意を持ってくれた才能は、
君の中で必ず光になる。
2011-7-18 22:36
好き。
それは、本当に、真っ直ぐで。
【告白】
どうして、今さら。
正直、困惑した。
だって彼女は親しいとは言え友達で。
それにしか過ぎないはずで。
一度たりとも、彼女を恋愛対象と見たことはなかった。
それが伝わったのか、彼女は苦笑いを浮かべた。
だって貴方、言わなきゃ気付いてもくれないじゃない。
そりゃあそうだ。
言われるまで思ってもみなかったのだから。
なぜ、今。
茫然としたまま問うと、彼女は気持ち、眉を潜めて言った。
気付いてほしかったから。
叶わなくていい。
この緩やかな関係が壊れてもいい。
貴方の隣にいられる安心感よりも、
想いを知られない苦しさに、堪えられなかったのだと。
静かに告白する彼女。
自分は彼女の何を見ていたのだろうと思う。
伝えられて、よかった。
そう、呟く彼女はそっと微笑んだ。
なぜ、笑えるのだろう。
そのまま問えば、彼女は笑みを濃くした。
貴方は優しいから。
だから私を傷付けることは絶対しない。
そんなの分からないじゃないかと返すと、彼女は首を振った。
今、貴方は答えを出さない。
違う?
そう問われて俺は頷く。
これはそう容易に解決できるような問題じゃない。少なくとも俺にとっては。
すると彼女は小さく笑った。
答えを出す前に貴方を必ず落とすわ。
そう言って満面の笑みを浮かべる彼女に、
一瞬でも勝てないかもと思ってしまった俺がいた。
2011-4-13 22:25