温かく、柔らかい。
【紅茶はいかが?】
そろそろお茶にしないか?
歩き疲れた彼女を察し、俺はそう提案した。
それに意を汲んでくれたのか、ふんわり微笑んで彼女は頷く。
そして俺達は近くの喫茶店に入った。
しかし席につき、俺はメニューを見て少しばかり、困った。
何を飲もう?
まだそこまで寒いわけでもない。
だからといって冷たいものが飲みたいほど暖かくもない。
ココアを飲むほど暖かさを求めてはいないし、
ジュースを飲みたくなるほど暑さを感じているわけでもない。
それに第一、俺はコーヒーが飲めない。
それを察したのか、彼女はこてんと首を傾げた。
決まらないの?
俺がおまえは?と聞けば、私は決まったとの声。
何にしたんだ?
それに、
ミルクティー。
まさにそれに似合うような優しい笑みで、彼女は言ったのだった。
恥ずかしながら。
結局それに見惚れて俺も同じものにしたのは、彼女に内緒だ。
2010-10-19 22:04
暑さが過ぎ去って、訪れる。
【秋色】
涼しくなってきたね。
隣の優しい声に私は頷く。
気持ちいい風が吹く中、秋の匂いが私の鼻をくすぐった。
どこか、行きたいね。
そっと空を見上げて、私は無意識に呟いていた。
それを聞き逃さず、彼は静かに言葉を返した。
ドライブしない?
あ、いいかも!
思い付きに思わず食いつくが、ふと私は我に返る。
でもどこに……?
遊びに行く気分ではなかった。
でもドライブに行くからには目的が何か、ほしい。
秋といえばさ。
あるじゃん、もってこいな所。
彼の言葉に、頭に疑問符が浮かぶ。
そんなとこあったっけ?
さぁ、行こう!
えぇ!?
突然手を引っ張られ、車に乗せられる。
疑問符がさらに浮かぶまま、車に乗ること小1時間。
私は絶句した。
目の前に広がる赤と黄のコントラスト。
秋にしか見れない色彩。
声もないまま、
私たちは目の前の秋を眺め続けた。
2010-10-19 17:10