妖怪ネタ、元親転生後
恋い焦がれた続けた月を溶かし込んだ銀の髪は穢れを知らぬままに、降り注ぐ陽の光のもとを駆け回る。
燃え盛る紅の瞳は成りを潜め、顔を覆う布地の下には光を映さない眼球。
彼の人と同じ、しかし確かに違うその子供の今生がどうか幸せであるようにと切に願う。
例えそれが自分と交わることがないとしても。
最早自分にしかわからないネタ。
今生が〜…のフレーズ書きたかっただけ。
魂になったアイオロスとデスマスク
薄闇が広がる視界の端で、淡い光が瞬いた。
体に馴染むひやりとした気配は、普段自分達の操る小宇宙とはまた違う。しかし蟹座であるデスマスクには恐らく小宇宙を知るよりもずっと昔から身近に寄り添っていた異質さだった。
「よお、アイオロス」
当たり前のように投げかけられた名前に答えるように人魂は明滅する。それを肯定と取ったのか、デスマスクは唇をゆるく上げると冷たい石畳の上へと腰を下ろした。
十二宮、吹きさらしになった宮の入口には容赦なく冷たい風が吹き付ける。整えた髪を乱す風はそのままに、問い掛けるように言葉を紡ぐ。
「長かった、っつーのかな…」
消え入るようにほろほろと零す音を拾うのは魂のみ。
その魂も答えてなどはくれないけれど。
「俺らが全て正しかったとも思わねえけど、間違った事をしたとも思わねえ。自分の選択に後悔はしてねえよ。」
懺悔のように綴られるのは確かに己の内にある思いで、柄にもねえな、と苦笑しながらも何時になくデスマスクは饒舌に続ける。
「やるこた全部やったんだ、こっから先に俺らは必要ないだろうよ。そろそろ場違いな死神は退場かね」
くつくつと笑い声を上げるその横顔はどこか穏やかで、ひとつの終わりを感じさせた。
「ほんとはあんたも連れてってやりてえけど、まだ、やることあるんだろ?」
ゆらり、また返事のかわりに人魂がひとつ瞬く。
それを見て満足そうに笑うと、すっかり体温の移った石畳から腰を上げて、踵を返す。
向かう先は黒々と闇を湛える宮の奥。
「じゃあま、俺は先に行ってるわ」
片手をひらつかせてゆっくりと遠ざかる。
明日になればこの聖域の全てが変わる。女神が戻り、あるべき形へと正される日。塗り固められた虚構は終わりを告げる。
すっかり大きくなってしまったデスマスクの背中を、アイオロスは見えなくなるまで見つめていた。
Reverse Day
アイオロスの魂は聖衣に宿るというよりも地上に止まって、女神のために聖衣を星矢達に届けていて、だから何年も経っているのに転生もせずに居たのかなっていう妄想。
それを蟹座であるデスマスクだけが知ってて、本来なら送ってしまうべきである魂をそのままにしてた。
蟹座はそういうのが仕事だったらいい。
突発的に。
ふわりと川辺特有の心地良い風が髪を攫う。
過ぎ去った風を追ってバルコニーの下へと視線を移せば、夜の帳が降りつつある中で街頭に照らされ浮かび上がる人々。行き交う彼等は皆、中世の舞踏会を彷彿とさせる煌びやかな衣装を身に纏い、その顔を覆い隠す仮面を着けていた。
仮面舞踏会。
そういうものだと言われたのは此処に連れて来た男が、呆気に取られている自分に何処から調達してきたのか中世ヨーロッパ貴族を模した濃紺の衣装を差し出した時だった。
わけもわからず、豪奢な羽根をあしらった白い仮面を見つめていると、男は着替えて来いよ、と促す。
そうする必要性は見出せなかったが、断るさしたる理由もなければ、わざわざ楽しそうな相手の気分に水を差す必要もないので言われるがまま、部屋へと足を向けた。
慣れないごてごてと飾り付けられた服に顔の上半分を覆う仮面。苦戦しながらも何とか着替えて出てきたが、先程そこに居たはずの男の姿はなく、変わりに閉めていた筈のバルコニーへと続く扉が開け放たれていた。
そこから入り込んでくる喧騒と何処からともなく流れてくる緩やかな旋律、柔らかく鮮やかに夜を照らす街頭の明るさに誘われる様にして外へと出て行く。見下ろした先で行われている煌びやかな舞踏会にうっとりと目を細め、彼はこれを見せたかったのかとひとり悟散た。
この曲はなんと言っただろうか?思い出そうと思考を巡らせていれば、背後によく見知った気配。
振り返った先に居たのは大きなハットを被り奇抜なペイントの施された仮面を身に着けた銀髪の道化師。覗く口元には上機嫌そうな笑みが浮かんでいた。
デスマスク、と紡ぎかかった唇をそっと人差し指で制した男は足元に跪き流れるような動作で無抵抗な手を取ると、その甲へと恭しく口付ける。
そして此方へと手を差し出してこう言うのだ。
『俺と一曲、踊りませんか?』
Palla mascherata
Twitterで話してたら浮かんだやつ。
仮面つけたデッちゃんはイケメンです。
自分よりも5つ年上で、この巨蟹宮よりもひとつ下の宮を守護し、神のようだと称され、聖域中から尊敬されている最強の黄金聖闘士。
そんな男が弱々しく自分に縋り付き、整った顔を涙で濡らしながら告げる言葉は、何時の頃からか切実な響きを帯びるようになった。
私はもう疲れた、死にたいと壊れたオルゴールのように途切れ途切れ繰り返すその姿はかつての自信に満ち溢れたものとはかけ離れて、痛ましさすら覚える程。
彼の望む通りにしてやれれば彼は楽になれるのだろうけど、今はまだそう出来る時期ではない。
今彼を失ってしまえば、まだ10を幾らか過ぎたばかりの自分達だけでこの聖域を治めていくことなど出きるはずがないのだから。
サガ、サガ。
俺達はあんたの為ならこの手を幾ら血に染めたって、悪だと罵られたって構わない。
あんたの抱えてる後悔や葛藤だって、その身の内に潜む暗い部分だって、受け止めてみせる。
俺達だって、もう力のない守られるだけの子供じゃないんだから。
だから、頼むから、死ぬなんて言わないでくれよ。
これほどまでに心の中を全て、余すことなく伝えることができればと願った事が果たしてあっただろうか。
ぎゅうぎゅうと引き絞られるように痛む喉は音を紡ぐことはできなくて、らしくもなく滲んできた視界を誤魔化すように、彼の大きな背中に回した腕に力を込めた。
メンヘラサガちゃんと蟹
共依存がとっても似合う年中サガちゃん
目は口ほどにものを言うとはまさにこいつのようなやつのことを言うのだろう。
昔から相も変わらず仏頂面で、不器用で、心の整理が下手くそな幼なじみ兼悪友。
端から見ればいつも通り、任務を終えて戻って来ただけにしか見えないんだろうが、俺に言わせればお前の目は節穴かとしか思えない。
「シュラ?」
そらみたことか。
振り向いたシュラの目には常のような鋭さはすっかり形を潜め、深い碧を湛えた瞳は頼りなさ気にゆらゆらと揺れている。
悲痛に歪むその色を見ていられなくて、自分の手を伸ばし、そっと目を塞ぐ。
外させようと動いたシュラの手をもう片方の手で握り締めて、そのまま背後から抱き寄せる。
「デス…」
じんわりと覆った掌に広がる温もりを感じたと同時に、苦しい、と声にならない悲鳴が聞こえた気がした。
弱った山羊とそれを支える蟹。
シュラは目が全てを語ってそうだなあと。
13年間でこういう事があったらいい。
どっちがどっちかはご想像にお任せで…
どうやらこの兄弟弟子は我らが師のことが好き、らしい。
クールであれ、との教えは何処へやら、ひとりで百面相よろしく表情を変えながらそわそわと落ち着かない。
「氷河、それ程なら告白したらどうなんだ」
師弟だとか、同性だとか、そんなことをとやかく言うつもりは毛頭ないのだが、会う度にこれではいい加減に鬱陶しい、と言外に訴えるが当の本人にはまったく届いていないようで。
何か言いたそうに顔を歪めたと思えばその場にうずくまって悩まし気な呻き声を上げはじめた。
「何故そうまで頑ななんだ…」
「アイザック…だが、もしカミュにこの想いを伝えたとして、それで気まずくなるくらいなら…」
俺は今のままの方がいい、とついには抱えた膝に顔を埋めてしまった氷河に聞こえぬよう、アイザックは密かに溜め息を零した。
「まったく、師弟揃って同じ理由で後込みしているなど、先が思いやられるな…」
さて、これからどうしてやろうか、と思案しながら見上げた空は、いっそ憎たらしい程に青く澄んでいた。
ついったでの会話から両片思い氷カミュと
相談役にされるアイザック。
頑張れアイザック…先は長いぞ…
いっこまえの続き。
蟹視点。
こいつは希に不安定になる。
別にネガティブだとかそういう事が言いたい訳じゃあなくて、ただ、どうしていいかわからなくなる。
不安気に揺れる目で見つめられて、微かに震える腕ですがられて、俺はお前のそんな顔が見たいんじゃないのに。
余計な事を考えられなくなってしまえばいいと、悦楽だけを与えて、どろどろに甘やかして。
「デス、」
詰まるような声で、助けを求めるように何度も繰り返し呼ばれる己の名前。
「…シュラ」
柄にもなく口から零れたそれは、シュラにとっては決定打だったようで、堰を切ったように濡れ羽色の瞳から涙が溢れて、つられるように視界が滲むのがわかる。
悟られないようにと俯いた額に柔らかく口付けられ、思わず顔を上げれば、目元に滲んだ涙を舐めとられた。
「何を、泣いている」
そういうシュラの頬こそ伝い落ちた涙で濡れていて、赤くなった目でふわりと笑う。
「お前に言われたくは、ねえなあ…」
なんか尻切れトンボ…
時折、無性に思う事がある。
人肌が恋しいのかと言われれば否定はしないが、そうではなくて、ただこの体温と混ざりあってひとつになってしまえれば、と。
「デス、デス…!」
途切れ途切れに名前を呼べば察したように合わせられる唇の温度が心地好くて、このまま境目などわからなくなってしまえばいいのに、とぼんやりと霞み始めた頭で考える。
ひとつになってしまえばこいつが一人で抱えようとする痛みも苦しみも、全て分かち合う事が出来るのに。
すがるように手を伸ばせば微かにデスマスクが笑う気配。
「訳わかんなくなるまで、シてやっから」
んな顔すんな、と柔らかく髪を鋤かれて堪らず背中に回した腕に力を込める。
与えられる穏やかなそれに身を任せれば、緩やかに纏まっていた思考が解けてゆく。
「デス、」
最早口をついて出るのは名前と、意味を成さない音ばかりで、すがり付く腕にも力が入らなくて。
「…シュラ」
それでも耳元に落とされた囁きに知らず、涙が零れた。
久々小ネタ。
深夜の萌え語りの産物。
蟹山羊も山羊蟹も好きです。
GOODED後
彼の甘い香りが優しく鼻腔を擽る。緩いウェーブのかかった柔らかな髪が頬に落ちた。
あの頃からは考えられない程に穏やかで、心地の良い微睡みの中、彼は今どんな顔をしているのだろうとちょっとした好奇心が覗く。
しかし半覚醒状態の体は思うように動かず、重たい瞼は一欠片の光すら拒んで
(これは夢なのか、それとも現実なのか。)
そんな不思議な感覚に見舞われた。
現実である筈なのに視界は閉ざされたままで、体に力は入らない。
困惑している頭に不意に彼の大きな掌が埋まり、途端にピリッとした痛みが走って、これは現実だと確信する。
何も言わずにぐ、っと髪を捕まれ昔の事が頭を過る。
そんなことはないだろうとわかっているのにまた強引に髪を引かれるのではと嫌な汗が背筋を伝う。
はっとして無理矢理目を開けると、彼は目を閉じ、祈るような慈しむような手つきで髪を撫でていた。
こちらが起きた事には気付いていないのか、口元はゆるやかに笑みをなぞっていて。
それが無性に堪らなくなって彼の無防備な首に腕を伸ばし絡める。
驚いた表情をした彼は思いの外可愛く見えて、誘われるがままに目の前の唇に己の唇を重ねた。
分かりやすくハマりました。
再開後はなんやかやで穏やかに暮らしてればいいなあとかそういう。
たまには蒼葉の方からもね。