これは俺が学生だった頃の話。短期のアルバイトでお寺がバイトを 募集していたんだけどちょうど雑誌で見かけた俺はそれに応募して バイトすることになった。寺の名前とか場所とかは教えません。 そのバイトは寺で一週間くらい行事みたいなのがあって(行事の名前も 言えません)参拝者が多く来るので掃除やお守り売ったりとかするバイトだった。 俺のほかにオタクっぽいとっつきにくい男とsさん(女で一つ上)が同じ バイトで採用された。


そのオタクっぽい男はあまり話しかけやすくはなかったので俺とsさんは 自然とあいさつとかしてそこそこ仲良くなった。 それである日sさんが俺に 「このお寺ってなんか封印かなんかしてあるらしいけど何?」 と聞いてきた。俺もそんなもの初めて聞いたのでわからない。 どうもsさんも参拝者から、何かが封印(?)されてるらしいけど 何が封印されてるのか、と聞かれてそこではじめてそれを 知ったらしい。


それで俺は気になったのでお寺の人に聞いてみたけど知らないと言われた。 住職にも聞いてみたけど知らないといわれた。けどそのとき一瞬だけ 嫌そうな顔をされたので何か知っていても話したくない、秘密にしたいのだ ろうなあと思った。 そうしているうちにバイトの最終日が来た。 俺とsさんは気になっていたのでずっとそればかり頭にあった。 バイトが終わり帰ろうとしたときsさんは、山の中になにかあるけど 知ってる?と尋ねてきた。 そういえばその寺の裏には山があり寺と密接にくっついているような 感じだった。しかし裏山をうろついているとお寺の人から見ると あきらかに怪しいので夜に来て探索してみようということになった。


後日にsさんと一緒に裏山の麓のあたりに来てみたんだけど 裏山へと上るにはうっそうと茂った草を掻き分けていかないと いけないことを知りあきらめようとした。 けどそのとき奥へと続く小さな道らしきものがあることに気づいた。 草で覆われているけどあきらかに道だった。 その日はそれで帰った。sさんはミュールをはいてきていたし 草を掻き分けて奥へ入るような格好じゃあなかったからだ。 後日また来ようということになり帰った。


そして後日また俺たちはその場所に来た。 今度は奥へと進むつもりだった。 sさんと俺は草を掻き分けてその道を進んでいった。 しばらくすると杭が打ってありロープがまかれ進入を拒むように なっていた。しかしそんなものは無視して進んだ。 またしばらく進むと小さな小屋のようなものがあった。 俺とsさんはかなり興奮していたがかなり気味が悪かった。


かなり山奥に入ったしあたりはまったく人気などない。 そのぼろっちい小屋はかなり古いもので山奥にこんなものが あるなど明らかに不自然だった。 sさんはぶっこわれそうな戸をあけて中に入ろうとした。 俺も戸を開けるのを手伝って中に入った。 中は物置みたいになっていたが仏壇のようなものがあって 何かを封印していると考えるならここしかないように思えた。 sさんは気味が悪いと散々言っていたが積極的に探索を始めた。 かなりほこりをかぶっているものでも平気で触るし正直かなりの 怖いもの好きだと思った。


そしてすぐにsさんは何かを見つけたらしく 「これこれ!みてよ!」と木箱を指差していった。 すこし大き目の木箱がありいかにもという雰囲気だった。 そうとうほこりをかぶっておりさわるのも嫌だった。 sさんはその気箱を開けたが中には木箱と同じくらいの大きさの ガラスケースが入っていた。おまけにガラスケースにも ほこりがかぶっていてまっくろで中が良く見えない状態だった。


sさんはなんとハンカチを出してほこりをふこうとした。 よくやるなあと思い見ていたら 「うぇ!」 とsさんが声を上げた。 懐中電灯でよく照らしてみるとなんとそのガラスケースの中には 綿みたいなのがしきつめられておりsさんがふき取ったガラスケースの ほこりの間から赤ん坊の頭らしきものが覗いていた。 それはミイラになっていたけどどこからどうみても赤ん坊の頭にしか 見えなかった。


sさんはかなりびびったらしく立ち上がり 「何これ・・・」 とかなり気分悪そうな表情を見せた。 俺も気持ち悪かったけどsさんのハンカチでガラスケースのほこりを 取り除いた。するとなんとケースの端に4つの赤ん坊の頭のミイラがあり そしてケースの真ん中には手のようなものがあった。 その手のようなものはあきらかに人間のものではなく鬼の手みたいな 感じだった。鬼かどうかはわからないけど生きているとしたらそうとう でかい生き物だしそもそもこんな手はどんな動物も持っていないし。 しかも指がちゃんとあって5本あったと思う。 ミイラになっていたけどなんというかさっき死んだのではなかろうか というほどみずみずしい感じがした。


sさんと俺はしばらくそれを見つめていたが 「帰ろうか・・・」とsさんが言い出した。 sさんはかなりびびってしまっていて俺は木箱を もとのようにふたをして小屋を出た。 車まで戻ると俺とsさんはさっきのことは二人だけの内緒にしようと 言い出した。俺は内心「なんで?」と思った。 このことを他の友達にも話したかったからだ。


その日はそれで帰ったんだけど1週間ほどしてsさんからメールが来た。 内容はもう一度行ってみたいというものだった。 俺はその一週間その寺の資料とかをネットで調べていたんだけど なにもそれについて手がかりになるものはなかったし気にはなってはいた。 友達にも話したかったけどもしそれがその寺の住職の耳に入れば 俺たちが呼び出されるのは目に見えたからだ。 sさんは内心住職のことを嫌がってはいたのを知っていたし(ちょっと くちが悪く不良の住職みたいな感じだったから)面倒なことには ならないようにとの配慮だった。