話題:企画
遅くなりましたが…主任と私。シリーズ番外編です。
もう少し短い作品になる予定だったんですけど…
どうも、あっさりと書けないらしい。
そしてどの辺にポイントがあるのか……?
書き終えた後でもよく分からないw
基本このカップルは、彼女がちょっと敬語使ったり使わなかったりという
恋人同士ではあるんだけど、馴れ合いな感じではない雰囲気で書いてます。
話題書きから飛んできて、初めてましての方は
一次創作【主任と私】
というカテゴリーをさかのぼっていただけると良いかと思います。
ちなみに今作はpart.11の続き、ではなくあくまでも番外編です。
追記よりどうぞ〜。
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今はまだ、ぼんやりとしか感じられないけれど。
それでもいつか……キミの中の未来に俺がいてくれたらいいなという願いだけはあたためている。
――心の中で、だけどな。
〜思い描く未来 主任と私。番外編〜
食卓の上に無造作に投げ出された俺の携帯電話が、ピピピピ……と着信音を響かせる。
「……んー?」
かけてきた相手によって着信音を分けたりはしないから
液晶画面を見るまで相手が分からない。
「げっ」
そんな声が出てしまったのは、そこに
“実家”
という表示がされていたから。
どうせ、ロクな用事じゃないだろうけど……この着信を無視してもまた時間をあけて再度かけてくることは間違いない。
「もしもし」
ふぅ、とため息をひとつ吐いて俺は電話の向こうの相手に呼びかける。
「博史?生きてる?」
「……あぁ」
生きてなかったらこの電話取ったの誰なんだよと心の中で毒づきながらも
そう言えば最近電話もしてなかったか……と、少しだけ反省する。
「今日荷物送ったから」
「え?」
「新米と野菜が少し。明日の夜8時以降に時間指定で」
「あぁ……ありがと母さん」
うちは農業はやっていないけれど、親戚の作っている米や野菜が時々実家を通して送られてくる。
米はあっても困らないものだからこうやってシーズンになるたび送ってもらえるのはありがたい。
「最近帰ってこないけど、忙しいの?」
「まぁ……ぼちぼち」
ひとりで実家に帰ったところで地元の親しい友人は皆家庭があるし、下手に長居をすると見合い話を持ち掛けられたりもするから
最近は、少し実家から足が遠のいている。
「たまには顔見せなさいよ」
「……あぁ。今度の正月には、」
そこまで言って。
彼女を連れて帰ったらどうなるのだろうかという疑問が浮かぶ。
「そう。予定が分かったらまた連絡して」
「分かった」
「彼女連れて帰ってもいいわよ?」
「はぁー?んなことするかよ」
即座に出てきた答えに自分でも少し驚く。
さっきまで同じことを思っていたくせに、母親が相手では相変わらず素直になれない。
けど、待ち構えられてるのは……彼女も、苦手なんじゃね?
「おばあちゃん、喜ぶわよー?」
「あ。そ」
平然と答えてはみるものの、内心胸が少しチクリとする。
敵もなかなかやるもんだ。
……母親は、敵じゃないけど。
「みんな……、変わりないのか」
「んー?そうねぇー。あ、おばあちゃん入院したけど」
「はぁ?聞いてないし!」
「言ってないもん」
「何だよそれ」
遠くに住んでる息子には関係ないってか?
「だって翌日に退院したから」
「ちょっ……脅かすなよ」
それを先に言ってくれ。
今も入院中かと勘違いしていた俺は何だったんだ。
「大丈夫。こっちは何も心配ないから、博史は自分のこと頑張んなさい」
「……あぁ、」
こういう時は
ちゃんと“ありがとう”と、言うべきなのだろうけど。
そんな習慣はついていないせいか、まだ照れくさくて心の中だけに留めておく。
――その代わり、というのも変だけど
「母さん」
「なに?」
「お正月は、無理かもしれないけど」
「ん?」
俺の一存では、決められないことだから。
「いつか、タイミングが合えば。その、」
本人の了承も得たその後ってことになるけど
「彼女。……連れて、帰るよ」
「あら、そう」
「あんまり……期待せずに」
「そうね。いつ振られるか分かんないもんね」
「なっ、」
何で俺が振られる前提なんだよ。
「冗談よ。いつでも帰ってきなさい」
「……うん。あ、」
「えっ?」
「ありがと」
こんな言い方で。
伝わったかな。
「はいはい。しばらくそういう話、してこなかったから少しは期待して待ってる」
どうやら、電話の向こうも照れてるらしい。
「また……連絡、するよ」
「風邪引かないようにね」
「母さんこそ。ばあちゃんと、あと皆によろしく」
父親と弟は、この際ついでで良い。
「はーい。じゃあ、おやすみ」
「……おやすみ」
電話を充電スタンドにセットした後、ソファーにドサッと身体を預ける。
勝手に実家に連れて行く約束なんかしちゃったけど、沙知を困らせてしまうだろうか。
別に、婚約者だと連れて帰る訳じゃないけれど。
地元に住んでて「夕ご飯食べにきました」と県外に住んでて「一緒に帰省しました」では、意味合いと重さが全然違う。
真剣に付き合っているつもりだし、彼女も若いとは言えそういうことを……現実的ではなくても考えることはあるだろうから……
きっと拒否されることは無いとは思う。
……けど。
「やっぱ、……イヤかな」
俺が沙知の実家に行くことを想像すると、家族総出で俺の品定め、そして質問攻めが始まる図が頭をよぎり、一瞬で背筋が寒くなる。
申し訳ないけど、あまりそういう状況には置かれたくはない。
「わっ!」
静かな空間に、またしても電話の着信音が響く。
さっきの電話で何か言い忘れたことでもあったんだろうか。
「……あれ」
てっきり実家だと思った液晶の表示が
“沙知”
となっていて。
思わず携帯電話に“ちゃんと話つけろよ”と言われてるみたいな気分になる。
まったく。
電話のクセにおせっかいな奴だ。
「もしもし」
「博史さん?今大丈夫?」
「あぁ」
「あのね。明日うちに来ませんか?」
「んー?」
「実家の母がね、新米送ってくれたの」
「へぇ」
それはまた。
何とも奇遇な話だ。
「親戚が作ってるお米なんだけど……すっごく、美味しいから!!」
「それはどうかな」
「は?」
「実は俺も明日実家から新米が届く」
「えっ?本当に?」
「だから俺の親戚が作ってる米の方が絶対にうまい」
「えぇー!何ですかそれ!うちのお米だって美味しいもん!」
おすそ分けをもらっている立場同士のクセに、
新米のこととなるとやたら白熱してしまうのは相手も同じらしい。
「んじゃ。食べ比べるか?」
「んー?」
「俺がそっちに送ってもらった米持って行くから」
「食べ比べ?」
「そう」
「炊飯器一台で?」
「土鍋で炊いてもいいけど?」
思わずこっちに有利な条件を付加してみる。
「あ!それずるい!」
「分かった。なら土鍋と米を持ってく」
沙知の家にも土鍋はあるから、これで同条件だ。
「うん」
「勝負は何事もフェアじゃねぇとな」
「ん……」
さっきまで元気だったのに、突然彼女の返事が勢いをなくす。
「どした?」
「やっぱり、しません。食べ比べ」
「あ?」
ほんの数分前まで、ノリノリだったくせに何を言い出すのだろう?
「だって、うちのお米は美味しいけど、博史さんの親戚の方だって一生懸命作ってくださったんだし」
「ん、まぁな」
「ただ食べてるだけの私たちが汗水流して、それこそ命がけで作ってくれたものに対して優劣付けたりするのって」
「あぁ」
確かに彼女の言う通り、ずい分と失礼な話だ。
「味の好みはあっていいけど、これも、それも、愛情込めて作ったお米はみんな美味しいハズだから」
「そう、だな」
まだ20代の彼女の方が、俺なんかよりよほどしっかりしているのではないかと
こういう会話をしていると思い知らされる。
「新米は、どんな米でも美味いよ」
「……うん。私もそう思います。あっ!」
「どうした?」
「博史さん、新米届いたら最初に何食べます?」
「そりゃもちろん卵かけご飯だろ」
「あぁーっ!そっちですか……」
「はぁ?」
そっち、って何だよ。
美味い新米イコール卵かけご飯は日本人なら誰もが思いつく筈だけど。
「ん、あの、あのね?塩むすびって答えが欲しくて」
「あぁ。そっちな?」
なるほど。
それならさっきのリアクションも納得だ。
「明日こっそり持ってったら、おにぎり食べてくれます?」
「……デスクで?」
そんな危険行為はごめんだけど。
「あぁーそっか。食べる場所、ないですかね?」
「いや、会社が無理なら晩メシ代わりにするし」
「塩むすびを?」
「心配すんな。それだけにはなんねぇし」
「あ、ですよね……」
「炊きたてよりも、冷めた時に美味さが分かるしな」
「ん」
こんな話をしていると、妙にお腹が空いてくる。
そして今食べるならやっぱり……
「あー、米食いてぇな」
「えっ?今から?」
「食べないけど。……そうだ、」
「ん?」
不意に頭に浮かんだ考えに、心が躍る。
「沙知、米研ぐの今から?」
「え?あ、電話終わったらセットしようと思って」
「何合?」
「とりあえず……2合かな」
「3合に変更な。んで、俺今からそっち行く」
「は?」
電話の向こうで目を丸くしている彼女の姿が脳裏に浮かんで
思わず笑い声が零れる。
「卵買ってくから。明日の朝卵かけしようぜ」
「あっ……そういうこと」
「そーゆーことだ」
「高級卵でお願いします」
「いいだろう」
「やった!」
炊き立ての新米に合わせるんだから。
この際贅沢しようじゃないか。
「着替えて、買い物してくから……また連絡する」
「はぁい。待ってます」
何気なく発せられたその一言に、なぜかドキっとして。
胸のあたりがじんわりとあたたかくなってくる。
「気をつけて」
「あぁ。じゃあ、また」
動揺を悟られないように通話を終了して、早速出かける準備を始める。
彼女の家で、美味い新米でも食べたら……さっきは拒否反応を示していたけれど彼女の家族に自然と会いたいと思えるだろうか。
「多分……俺が行く方が先だよな」
沙知の立場になってみたら、父親がよほど厳格でもない限り、見知らぬ土地へついて行くよりも恋人を連れて帰る方が気分的にも楽だろう。
……こんな俺でも、紹介したいと思ってくれていたらの話だけど。
「ふっ、」
声にならない自嘲気味な笑いを零した後、俺は玄関の扉を開ける。
彼女の部屋に着いた時、俺を玄関先で出迎えてくれる姿を日常にしたいと思えたら、
美味い新米にお礼を言いたくなるほど感激できたら、
沙知に、尋ねてみることにしよう。
「実家、いつ帰る?」
――と。
-END-
何だろう?この妙な終わり方……w
男性の結婚したくなる瞬間とかタイミングとか私には分からないのですが…
30代になったら比較的早い段階でそういうことを男性側も考えたりするのかなー??なんて。
キュンとするポイントとかほぼなかったんじゃないかと思いますが
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わぁーい。感想ありがとう!!
ふふ、ニヤニヤできるポイントあった?
書き終えて読み返したら何か微妙だなぁーってw
ね、高級卵もってお米食べに来てくれるのは嬉しいよね(^^)
ほかにも笑うポイントがいい感じに入ってて面白い!
後半は後半で、新米の話しかしてないのにニヤニヤする(笑)
高級卵を持って新米食べに来てくれる人がいたらなーと思ってみたり。