persona3 (主人公と天田)

それはとても暑い日だった。夕日が部屋の中を真っ赤に染めて、僕はそれが真田先輩のようだと思った。
「ちょっといいですか」
滅多に部屋に来ない天田は、ドアを開けた僕が真っ赤で驚いていた。
「なんの用だ、珍しいな」
特に何かあった訳じゃないんですけどね、と天田が含みを見せる。今日の天田は年相応の無邪気な顔だと思った。
「実はですね、夜に寮の前で花火をやるそうなんですよ!リーダーも、やりますよね?」
「そうだな、ロケット花火がいい」
一度やってみたかったんだあれ、と言う僕の意見に天田は反論する。
「僕は、情緒豊かな線香花火がいいです」
お前は幾つだ。そんな老けた小学生を初めて見た。口には出さずに苦笑いをしたら、意図を汲み取って天田はロケット花火が子供っぽいと言った。
「お前も子供だろう」
ぐ、と詰まる天田の背中を押して、部屋を出る。今日ぐらいはしゃげばいいのに、と素直じゃない小学生を振り返る。
「我慢することが大人じゃない。それくらい、大人な天田は分かるだろう?」逆光で浮き出る天田の影が長く伸びて、自分の足と重なっていた。日も、そろそろ落ちる。
「それくらい、あなたに言われなくたって分かっています!」
怒りながら横をすり抜ける天田を見て、あいつはまだまだ大人にはなれないな、とくすりと笑う。僕は花火の計画をしに順平の部屋のドアをノックした。