persona4 (花村と尚紀)

馬鹿言うな。あいつの声はぴしゃりと響いた。あいつの姉さんによく似た、か弱いような繊細な、それでいて芯の強さを感じさせる声だ。声だけじゃない。その高い鼻も、細い目も、色素の薄い髪の毛も。あいつの姉さんを、先輩を感じさせるものだった。
先輩に似ているんだから少しくらい面影を見たっていいじゃないかと思っていたのに、あいつはあっさりと了承し、先輩の代わりになることを望んだ。馬鹿なのはどっちだ。お前は先輩が死んでから何も変わっちゃいない。変わるのはスカしたうちのリーダーさんの前だけだろう? ああ、おれもそうだから馬鹿なんだろうな。
「あなたは結局姉さんにフられたくせに」
「だからなんだよ。シスコン」
「姉さんが好きで何が悪い? あなただって好きだったじゃないですか」
「……ああ。好きだよ。小西先輩のことが大好きだったよ! 弟のお前には分かんないかもしれないけどなァ、あの人は魅力的な人だったよ」
いまさら誰に知られたところで恥ずかしくもなんともない。というより、もうみんな知っているだろう。俺の口からちゃんと言えば、あいつは今のような、誰かの代わりをするような真似はしなかったのかもしれない。
あいつは間違っている。俺が好きなのはあの人で、小西先輩で。決してあいつではない。分かった上で、偽りでもいいからと愛を求めているのだ。滑稽でもある。脆弱でもある。おれはその弱みに付け込んでいる。最低な男と罵られようとも否定はできない。
「僕じゃだめなんですかねえ名前を呼んでくださいよなおきっていや早紀でいいです僕今日からあなたのために早紀になります」
「おまえ……」
「姉ちゃんは、小西早紀は、死んでないって、誰か」
「尚紀」
「……抱いてください。馬鹿だって分かっています。でも、馬鹿になるのって、とっても楽で、幸せで、つらいこともみんな……」
小西先輩。もしですけど、俺があなたと結婚したとしたら俺はこんな厄介な弟をもつことになったんですか。俺、あなたにフられて良かったはずなのに、いつからこんなことになってしまったんでしょうか。
「早紀、服脱げ」