persona3 (主人公と真田)

「初日の出を見に行こう」
思えば、彼から誘われるのは初めてではないか。いや、一緒にトレーニングに行こうと誘われたこともあったが、今回は少し違う。
1月1日の朝。僕たちはムーンライトブリッジに立っていた。まだ辺りは暗い。いつもの僕ならまだ寝ている時間だ。僕たちは昨日、とても大事な決断をした。
それは、僕たちの影時間にまつわる記憶を無くすことにもなる。それは、今の僕たちの繋がりを断つということ。もう、二度と思い出せないかもしれなかった。いや、思い出したとして、僕はそこにいないような気がしたのだ。
どうせ忘れてしまうかもしれない。でも、僕は今のこの瞬間が幸せだった。今がよければ何もいらないと思った。ただ、あなたを守ることが、僕の全てだったのかもしれない。あなたを忘れてしまったら、きっと生きる意味を失ってしまうのだろう。
「寒いですね」
「そうか?いつもと変わらん」
あの人はまだ前をじっと見ながら歩いていた。その横顔が綺麗で、僕は何も言えなかった。きっと今、荒垣先輩のこと考えてるんだろうな、なんて嫉妬してから苦笑いをして。
どうした、なんて先輩が立ち止まったとき、水面に光が走った。夜明けだ。
「わ」
手すりから身を乗り出して、僕はただ光に目を奪われていた。夜明けは、こんなにも美しかったのだ。
「俺は毎朝、トレーニングの途中にここで夜明けを見る。俺は、お前にも見せてやりたかった」
僕は微笑んでから、ありがとうございますと言った。先輩は顔を歪めた。
「礼は勝った後だろう?」
「ふふ、そうですね」
僕、本当は先輩のために生まれてきたんじゃないかと思うんです。だって、僕はあなたの行動にこんなにも喜ぶことができる。あなたの言葉に落ち込んだり元気が出たり。僕はあなたに振り回されっぱなしなんだ。
僕があなたを守ってみせます、と目の眩むようなお天道さまに誓って。だからその時まで。