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3周年記念

trickster0 (一次獅子と二次獅子)

知り合いのサイトの3周年記念に送ったやつ
名前乗ってるけど……まあいいか!

DON'T FORGET

persona3 (順平とチドリ)

飛ぼうとした天使は翼をもがれて地に落ちるのだ。いつの日か、私の烙印を天使の翼のようだと言った少女がいた。私にはあの子の笑顔のほうが天使に見えた。私はどちらかいうと薄汚れたカラスだ。
「チドリは薄着しないよなあ」
あの人はいつもヘラヘラ笑って私の心を揺さぶる。私の中に勝手に入ってきて、私の中はいつもあの人だらけだったから、あの人に会うのがこわかった。自分が無くなるようだった。
「脱ぎたくないの。烙印があるから」
冷めたように言っても彼の態度はなんら変わる様子はない。少しだけ心配そうな顔をする。
「烙印? 昔火傷でもしたんか?」
「火傷……間違いでもないかも」
自分自身どうやってその痣がついたのかはよく知らない。気付いたときにはすでにあって、私はそれを烙印と呼んでいる。人工的にペルソナを引き出した人間の証であるそれ。決して美しいものであるとは言えない。私はタカヤのようにそれを自分の宿命だとは思っていないし、あの痣が嫌いだった。あの日あの子に天使の翼の話を聞くまでは。
「あ、それ天使の絵?」
「……順平、よくわかったね」
大きな翼を持った天使は、きっと自由に空を飛ぶことができるだろう。順平のように。でも私はそれをもがれてしまった。もう空に帰ることはできないし、許されない。だから私は闇の中、地べたを這って歩くのだ。鳥を羨ましく見つめる蛇のように。
「なんかチドリみたいだな」
「……私は天使なんかじゃない。順平ってなんかヘン」
「ひどっ! でも綺麗だな」
穏やかなあの人の顔にまた心が揺さぶられる。私も本当は美しい翼で順平と空を飛びたい。でもそれは叶わないんだ。願ってはいけないんだ。この背中の痣は、翼にはなれない。禁断の果実を食べて地べたを這いずるように命じられた蛇と私は同じだ。
「……私も飛びたいよ」
「え、なに?」
呟いた私の声は順平まで届いてないだろう。この声は誰にも届いてはいけないんだ。神様にも知られてはならない。もう一人の私にさえも。
「いくよ、メーディア」
この炎が消えるまでは、止まることも許されないんだ。

デッドエンド

persona4 (花村と尚紀)

馬鹿言うな。あいつの声はぴしゃりと響いた。あいつの姉さんによく似た、か弱いような繊細な、それでいて芯の強さを感じさせる声だ。声だけじゃない。その高い鼻も、細い目も、色素の薄い髪の毛も。あいつの姉さんを、先輩を感じさせるものだった。
先輩に似ているんだから少しくらい面影を見たっていいじゃないかと思っていたのに、あいつはあっさりと了承し、先輩の代わりになることを望んだ。馬鹿なのはどっちだ。お前は先輩が死んでから何も変わっちゃいない。変わるのはスカしたうちのリーダーさんの前だけだろう? ああ、おれもそうだから馬鹿なんだろうな。
「あなたは結局姉さんにフられたくせに」
「だからなんだよ。シスコン」
「姉さんが好きで何が悪い? あなただって好きだったじゃないですか」
「……ああ。好きだよ。小西先輩のことが大好きだったよ! 弟のお前には分かんないかもしれないけどなァ、あの人は魅力的な人だったよ」
いまさら誰に知られたところで恥ずかしくもなんともない。というより、もうみんな知っているだろう。俺の口からちゃんと言えば、あいつは今のような、誰かの代わりをするような真似はしなかったのかもしれない。
あいつは間違っている。俺が好きなのはあの人で、小西先輩で。決してあいつではない。分かった上で、偽りでもいいからと愛を求めているのだ。滑稽でもある。脆弱でもある。おれはその弱みに付け込んでいる。最低な男と罵られようとも否定はできない。
「僕じゃだめなんですかねえ名前を呼んでくださいよなおきっていや早紀でいいです僕今日からあなたのために早紀になります」
「おまえ……」
「姉ちゃんは、小西早紀は、死んでないって、誰か」
「尚紀」
「……抱いてください。馬鹿だって分かっています。でも、馬鹿になるのって、とっても楽で、幸せで、つらいこともみんな……」
小西先輩。もしですけど、俺があなたと結婚したとしたら俺はこんな厄介な弟をもつことになったんですか。俺、あなたにフられて良かったはずなのに、いつからこんなことになってしまったんでしょうか。
「早紀、服脱げ」

ラストネーム

persona3 (主人公と真田|捏造10年後)

頬を掠めた風はまだ冷たかった。ゆらりゆらりと海が滑らかに動いて、それに合わせてあいつが海辺を歩く。3月の海に入りたいと、あいつが笑ったから俺も笑った。いつも理由なんて無い。強いて言えばあいつを少しでも幸せにしてやりたかったのだ。やれることは何でもしてやりたい。あいつはただの17歳の人間の男。それだけだから。
砂浜をぺたりぺたりと裸足で歩く姿が小さくて、昔と何一つ変わらないはずなのに、何だか無邪気に見えた。いや、実際無邪気なのだ。昔は見せなかったような、年齢より少し幼い顔をして笑うのだ。俺に気を使っているのだとしたら、本当の意味であいつを幸せになんてしてあげられていないのだろう。
普段から俺があいつを家に閉じ込めていたのは、あいつが他の人間に見られるのを防ぐためだった。もう死んだ扱いになっている人間だし、下手に連れ歩くと混乱を招くかもしれない。でも本当はそれだけなんかじゃなくて、何処かに独り占めしていたいという気持ちがあったのだ。もし今あいつを美鶴の目に入るようなことがあれば、間違いなく桐条のラボに連れていかれてそう簡単には返してもらえないだろう(もともと俺のものという訳では無いにしろ)。
なんてことのない、平和な幸せをあいつにあげたかった。できるならシャドウを生むような人間が居ない世界を、あいつに見せてやりかったのだ。それが訪れないと知っていても。
ひゅう、と一瞬細い風が巻いて、あいつが背中から海に落ちた。慌てて伸ばした腕は足りなくて、大きな水飛沫が静かな水面を乱す。ザパッ、と顔を出したあいつは酷く楽しそうで、泣きたくなったのだ。
「先輩がそんな顔することないのに」
お前こそ笑ってばかりいなくてもいいのに。ただ俺はずっとこのままでありたいだけ。戸籍のない今のお前に俺の名字をプレゼントして。二人でこのまま変わらずに寄り添っていたいだけなのに。
「あはは、二人でドイツにでも行きましょうか?」
「パスポートも無いけどな」
いつか誰も知らないようなところの海辺で、またこうして笑い合える日が来ることだけを信じて。あいつのミュージックプレイヤーからは10年前のまま音楽が流れ出して、俺はそれをあいつと二人で聞いた。繋いだ手に涙が落ちたのを、太陽だけは見ていたのだ。
「さあ、行こうか」

スーパースター

persona3 (主人公と真田)

夜の神社は好きだ。かつて木枯らし吹くこのベンチに座っていたあの人に思いを馳せるのも、健気にランドセルを背負って走っていたあの子を懐かしむのも好きだ。一人が好きだということもあるが、何故か自分の周りには人が多いのだ。それはそれで、楽しくてよいことなのは知っている。つまり僕は贅沢なのだ。そんな毎日が楽しくて仕方がない。
もうすぐ満月なこともあって、今日はやけに明るかった。星が瞬いて、僕は眠気を誘われた。どこまでも暗い夜のように、いつまでもこのままでいたかった。でもそれは叶わないような気が、ずっと前からしている。明けない夜はないのだ。
「こんなとこで寝るなよ」
聞きなれた声に目を開けようとしたが、まぶたが重くて断念した。もし僕がこのまま寝たら彼は家へと連れていってくれるだろうか。まあ、トレーニング代わりにされるのがオチなのだが。
「先輩、眠ってしまう魔法をかけられてしまったので王子さまの口づけしてください」
「無駄口叩けるなら早く起きろ」
一瞬、彼の手は僕の頭を撫でた。そんなことにいちいち反応してしまう自分がなんだか悔しいのだ。僕、先輩のことが好きで仕方がないんだ。分かっているのに再確認させられるような新鮮な感触がした。
僕はゆっくりと目を開いた。今まで走ってきたのか寒そうに体を縮こまらせて僕の隣に座っていた。僕なんて放っておいて走ってきてくれれば僕だって余計な気を使わずにすむのに。そんなことを思いながら内心喜んでいる自分があるのだ。
「走ってきていいですよ。途中だったんでしょう?」
「俺がお前を置いていったら、お前は今日帰らずにここで寝るだろう」
「先輩に何が分かるんですか」
意地を張ってはみるものの、確かに先輩に置いていかれたら僕はここで寝てしまうだろう。僕には家に帰るだけの気力も体力もない。あるのは漠然とした絶望と先輩への恋心。ああ、なんてつまらないのだろう。
「先輩、僕と死んでくださいよ」
「お前の冗談はたちが悪い」
冗談じゃなかったりするんですが。そんなことも言えずに僕はまた目を閉じる。でも先輩は自分から死ぬような弱い人じゃないと知っている。むしろ、そんな人なら軽蔑しているだろう。「先輩、トレーニングがてらおんぶしてください。だっこでもいいです」
「……おんぶで頼む」
なんだかんだ言いながら僕の周りに人はいて、先輩がいる。離れることのない繋がり。忘れることのない思い出。まだ僕は生きている。あなたを思って生きていけることがどれほど僕の救いになっていることか、あなたは知らないでしょう。
よく考えたら世界のためとかみんなのためとかそんな大それたことじゃなくて、ただあなたのそばにいたかった。S.E.E.S.に入ったことだって、先輩に会えることが嬉しかったから。リーダーを引き受けたことだって、僕があなたのことを守れるから。僕にはあなたしか見えていなかった。
こんな僕を笑うかな、なんて考えながら、先輩の背中から伝わる体温が切なくて、色素の薄い少しふわふわした髪の毛に顔を埋めた。シャンプーの香りが先輩らしくないと言ったのに、気にもとめない様子で先輩は僕を背負ったまま走った。
そんなあなたが好きです。今は考えるだけで、あなたを思うだけで精一杯なのです。
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