2012-1-22 18:27
さよなら日常。
こんにちは非日常。
泣きそうな自分を叱咤して、歩く。
どうせ奴等は追って来るわけがない。
だから、今は感情を押し込めて、泣かないようにしながら歩くより他ない。
何処か、一人になれるところ、例えばカラオケとか、その後は飲みにでも行こう。
飲まなきゃやってられない。
でも、何時からこんなに弱くて不安定になってしまったんだろう。
元来、私はレノをど突いてる時みたいな人間だったろうに、なのに少し冷たい視線に晒されただけで追い出すんじゃなくて、まさか出ていこうだなんて。
世界が敵みたいに思えた、そう感じたのがついこの間ってのが原因な訳?
そんななよなよしい女だったっけ?私…
「ああ、もう。どうしてこうなるかなあ…」
呟けば、言葉にしてしまえば、凄く空しかったりもして。
自分が思うよりも弱い、普通の女だったんだって思い知らされる。
それでも、誰かに頼ったら負けな気がして敢えて一人でも平気なふりをしてただけ、それが事実。
考え事をしていたせいか、気付けば大学の近くの公園の近くまで来ていた。
ちょうどいいやって思った。
私はその公園のブランコに座って携帯を取り出そうとしてジャケットのポケットを探る。
そうしてはた、と気づいた。
そうだ、私の携帯は充電器に繋いだままで部屋に放置されている。
バカだな、こういう時に携帯を忘れたら友達にも…って今頼れる人、居ないんだっけ。
ああ、駄目だ駄目だ。
このままじゃドンドン暗くなってしまう。
やっぱバス停まで行って駅周辺でぱあっと遊ぶに限るだろ!
思い立ったら即行動!!其れが私だ!!
すっくとブランコから勢いをつけて立ち上がる。
そのままの勢いで公園から出ようとして前を見てなかった私は何かに思いっきり鼻っ面をぶち当てた。
「ぃったぁあっ!!」
何だよ出鼻を本当に挫かれた、いや、へし折られたぞ!!
でも、そのぶち当たったものが柱でもなきゃ、遊具でも無いことは分かってて。
鼻を押さえながら何とか謝罪を絞り出す。
「ずみばぜん…」
鼻を押さえているからどうも間の抜けた感じなるのは仕方ないって。
謝ったしとっとと行こうと思うのも仕方ないよね、結構恥ずかしかったし…。
横をすり抜けて行こうとした私の腕は、ものの見事に私がぶつかった相手に掴まれて、驚きのあまりに振り向いて漸く、相手が誰だったのか気付くなんて、私はどれだけ下ばっか見てたんだろう。
そりゃ暗くもなるよな。
「すまなかった…」
そう言って真っ直ぐに向けられる双眸は不思議な光を内包していて、逸らそうとする私の意思が負けるまでそんなに時間は掛からなかった。
金髪の髪が風に遊ばれて、ふわふわ揺れる。
私の思考は逃避したまんま帰ってこない。
でも、私が逃げられない程度で、でも痛くないようにって込められた腕を掴む手から彼の優しさが伝わってしまうから、つい私はさっきまでの腹立たしさとか、悲しさとか空しさとかをころりと忘れてしまうんだ。
だから、きっとつい名前を呼んでしまったのだって、彼の不器用な優しさのせいだ。
「クラウド…」
やっと私が応えたからか、クラウドの肩から力が抜けた。
私はそんな彼の双眸からようやっと逃れて視線を落とす。
安堵したような、そんな目を見て気付いてしまったから。
疑心暗鬼になるのも仕方ないじゃないか、って。
そう思ったらするりと言葉は零れていて。
「ごめん」
その言葉がすとんと落ちて、私の中から彼らに対する不信や不快が消えていく。
だって仕方ないのだ。
彼等は突然私の家に落とされた。
右も左も分からないような世界で、初めて会った女の事情を鑑みろだなんて、無理だ。
そんなの高望みじゃないか。
私だったらいきなり落っことされた先で出会った見ず知らずの誰かを慮れるだろうか、答えは解りきってる。無理、だ。
なのに、クラウドは言うんだ。私に、我儘な私に言ってくれたんだ。
「悪かった。疑って、いい思いはしないだろう」
ああ、やっぱりこの人は優しいんだな、そう思える。
現金な私はそれだけで笑えるようになるんだから単純なのかもしれない。
だから、今度はちゃんと伝えてやるんだ。大丈夫だよ、って。
「大丈夫、私だって疑ってた訳だしお相子でしょ?」
言ってから、帰ろっかって手を伸ばせば、一瞬戸惑う仕種を見せたけど、クラウドは私の手を取ったんだ。
夕焼けこやけで日が暮れて、君と手繋ぎ帰りましょ!
(でも、その格好目立つから着替え用意するわ)
(………え)
続く?