「…どうしよこれ…」

相変わらず白兎の家にハマってしまっている姫。
頭は屋根を突き破り、外に出てしまっている始末。
手は窓から外に出て、足は片足を玄関から出し、もう片方は家の中で胡座をかいている。

「…貴方の名前は?」
「お前等みたいな奴に名乗る名前はない!」
「…余所者のくせに名前の効力を知っていたか…」
「あぁ!?なんだって??聞こえねえよ!!」

(あーもー!!!ガリバーの気持ちが今なら分かるぜ!!動きにくいし、何言ってるかわからねぇし…畜生!!!)

するとそこに、さっきのドードー鳥が現れた。

「これはまた凄い怪物だなぁ…」
「おっさん!!!俺がわかんねぇのかよ!おっさーん!!!」
「はて?おっさんとは誰のことやら?」
「お前以外誰がいる!!!」
「ところでビル。こいつの始末はどうするんだ?こんな怪物を倒したらみんなの英雄になれるぞ!!」
「エース様には見張っていろと言われたのみです。始末をしても良いとのことですが。」
「だったら二人で英雄になろう!!この家を燃やすというのはどうだろう?」
「仮にもエース様の家ですよ!!?何を考えておられるか…!」
「良いではないか。もう半壊しているのだから。」
「確かに家は好きにしていいと言われましたが…」
「じゃあ好きにさせてもらえばいい!!!」

ボシュッ!

(うわぁ…イヤな会話ってのはわかるもんなんだな…俺焼かれる…!!!焼かれちまう!!)

ドードー鳥とビルは、燃やしやすい物を探して集め始めた。
ビルも覚悟を決めたらしい。

(何とかして逃げねぇと!!!何とかして元の大きさに戻るか、もっと大きくなって逃げるしかねぇな!!!なんか食べ物!食べ物!!食べ物!!!)

ふと目に映ったのは人参畑。

(コレだ!!!今は生でも食わないと!!)

ぱくっ
しゅううぅぅ…

「…やった!元に戻った!!」

(後は早くとんずらするだけだぜ!!!)

「ちょっと君!!」

ビクッ「なっなに…」
「そこのイスを持ってきてくれ!!」
「嗚呼、イスね。ほらよ。」
「ありがとうお嬢さん。コレで燃やしやすくなるな!」
「よかったなおっさん。ちゃんと跡形もなく燃やせよ!」

(にししっ…バカじゃないのかこいつら…まぁバレても俺の足は男子よりも早いからな…ひひっ)

すたすたすた…

「よし!ちゃんと火もついたし、後は逃げないように見張る…だけ…?おっさん?ああ!!」
「どうしたんですか?」
「ビル!!!なんでちゃんと見てなかったんだ!!?怪物に逃げられたぞ!!!」
「貴方が雑用ばかり押しつけるからでしょう!!?嗚呼…これではエース様にお叱りを受ける…!!!」

─────

また森が続いて、花々に雑草と間違えられ、散々な目にあった姫。

「あー…なんなんだよあいつら…俺を花って勘違いした上に雑草ってゴルァ!!失礼にも程があるぞ!!!」

「貴方…何をそんなに騒いでるの?」

目の前にAという形になった煙が迫ってきた。
その先には芋虫の体をした女の人がいた。
いや、体と言うか服装に近い。

「けふっ…お前だれ?」
「名乗らなくてもいいでしょ?名前なんてあっても邪魔なだけよ。その名前に縛られなきゃいけないわ」
「…だけどせっかく親から貰ったものだぞ?」
「大切さがわかるというのは素晴らしいことだわ。貴方はまだ狂ってないのね…なら本当の名前は隠しなさい。そうね…今空いてる名前は"アリス"よ」
「俺が…アリス?」
「そうよ。まだ貴方は誰にも名前を言っていないみたいでよかったわ。今頃大変なことになっていたでしょうね。」
「…その事を問う前に、聞きたいことがある。お前は此処ではなんて呼ぶんだ?」
「キャタピラよ。見ての通り。」
「じゃあ、白兎も…偽名だったりするのか?」
「偽名ではないわ。此処では立派な名前よ。あたしやチェシャ猫が名前を決められるの。女王からの命令でね。」

その時キャタピラは不適に笑った。

・・・next?