「ひぃいっ!!!まだ諦めてなかったんですか!!?」
「まぁな。色々聞きたいこともあるしな。」
「…聞きたいこと?」
「それはお前を捕まえてからでもいい。だから…おとなしく捕まりやがれ!!!」

ガバッ!!

「…じゃあ一つお願いが。私の手袋を探してきて下さい。何処に置いてきたか忘れてしまったのですが…何処までも私を追いかけてきた貴方なら探せなくはないでしょう。見つけてくれたらペットにでもなりますよ。」
「…信用ならねぇな…そんなに大事なのか?その手袋。」
「ええ。とっても」
「……わかった。」
「よろしくお願いします。」

────

白兎は外で待っていて、姫は中にいる状態。
逃げられるかもしれないということで、窓は開けっ放しにし、時折会話をすることになった。

(…探し始めたが…無いんだよな…やっぱり。)

白兎の家はやたらと広かった。
ベッドが一つだけと言うことは、一人(一匹)暮らしなんだろう。
一人で住んでいるには本当に勿体ないくらい広い。
まるで過去に誰かと住んでいたかのように…。

(白兎は本当に此処に住んでいるのだろうか…?だって…全く生活感がない。)

そう。白兎の家の中には、必要最低限の物しかなかった。
それに、

(……食べ物がない…。いつも何食べてんだ?人参畑はあるけれど、包丁もまな板も何もない。…何を食べて生きている?)

「お嬢さん。」

ビクッ「なっ…何だよ……」
「あまり部屋をジロジロと見ないで下さいね!恥ずかしいですから…///」
「……しょうがないだろ!!目に映るんだから!!!」
「そうですけど…;;」

(今の悪寒は何だったんだろうか……下手に詮索するのはよそう…)

そう考えていたら、ベッドの下が光っていることに気づいた。

(…なんだろ…)

手袋が一つずつ落ちていて、その手袋のハート部分が光を放っていたようだ。

(…なれたな…こーゆーファンタジーな感じにも…)

「あったぞ!!ほら受け取れ!!!!」

ぽーい

「ありがとうございます!!じゃあお疲れさまと言うことで、そこのテーブルのクッキーでもどうぞ〜!」

白兎の言うとおり、テーブルにはクッキーの管があって、中の一つを適当に口に含んだ姫。

「おっ気が利くじゃねぇか。これで飲み物もあれば最高なのに…」

パリッ

(飲み物…?クッキー…まさか!!!)

"私を食べて"

ぐんぐんぐんぐんぐんぐん…

「またこれかよ!!!!」

姫は前の時みたいに巨大化し、白兎の家に見事収まってつっかえてしまった。

「ではお先に失礼します。」
「!!こら白兎!!ハメやがったな!!!??」
「家にハマってしまったのは貴方ですよ!」
「ばっか!!意味がちげーよ!!!意味が!!!まっ待ちやがれ!!卑怯者!!!」

「気が済むまでほざくがいい。小娘風情に何と言われようが…微塵にも感じないわ!!!」

「!!!??」

(今のは…いったい誰だ…??それに今…白兎の目が…真っ赤な血の色になっていたような…)

「ビル。このお嬢さんを見張っていて下さいね。」
「わかりました。エース様。」

ビルと呼ばれたのはトカゲで、いつの間にか白兎の横に立っていた。

「ご機嫌よう…お嬢さん。」

ニコッ

「……」

白兎の微笑みに、姫は何故か恐怖を感じた。
とても綺麗な笑みだったはずなのに、どす黒い何かが白兎を包んでいて、あの顔は仮面を張り付けたかのように冷たかった。

(前見た汚れを知らぬ顔か、今見た残酷な冷たい顔か、どっちが本物の白兎なんだろう…)

白兎はそのまま西の森に歩いていった。
その時の白兎の目の色は、空の色に戻っていた。

・・・next?