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『人形姫』

扉を蹴り破り
中に傾れ込んだ

部屋の真ん中には
ポツンとベルベットの椅子

そこにはちょこんと
あの少女が座っていた…

壊れた人形の様に
ただ
微笑を浮かべただけの娘

心から笑ってなどいない…

騎士には
その真実が瞬で解った

人らしい形

だが
もう少女は壊れていた

壊れていた…

しかし
任務は一つ

彼女を生きたまま
見つけ出し
連れ帰る事

しかし
騎士は立ち止まる

コレを連れ帰って
誰が喜ぶのか…

もう笑う事もなく
話す事もない

知識が腐れ
夢すら見ない

こんな人形を連れて
誰が喜ぶのか




少女は騎士に抱えられ

屋敷を後にした

自分は
単なる政略の道具

自分は
単なる褒美のための手段

全てを知りながら

全てを理解しながら

だから
唯一の抵抗

心で感じず
肌にも解らず

腹を満たすだけの食事
身体を維持するだけの睡眠
生理的なだけの排泄

それ以外は
彼女の最後の抵抗

人間に成れなかった
人形の
最後の抵抗なのです

『数多の楽器と居た』

バイオリンと言ふ楽器は
美しい

鋭い悲鳴
赤子の鳴き声

何でも声真似
上手です

ピアノと言ふ楽器は
美しい

上から下まで
太い声から高い声まで

白と黒だけで
歌うから

ハープは クラリネットは
フルートは 太鼓は
ギターは タンバリンは…

みんな みんな
美しい

私しと言ふ楽器は
とっても嫌い

言葉一つも歌えないから
想い一つも発せないから

私しと言ふ楽器は
一番 役に

たてないから

『人体実験』

日課を一つ抜きました

いつもはしない
失敗ばかり

日課を二つ抜きました

いつもと違う
身体の喚きに悩みました

日課を三つ抜きました

言葉が溢れて
声を失いました

日課を四つ
抜く前に

涙が溢れて

身体が固まる

心が崩れて

あまりにも
辺りが騒がしくなった



結論がでました

抜こうが抜くまいが…

結果は一つの
こたえなのでした

『軍神と生きた』

黄金の羊に包まり
微睡みを噛み締めていた

戦地よりチャリオットが
勇ましく凱旋する

そんな音で
目が覚めた…

軍神アレス

雄々しく、美しい神

「お帰りなさい」

静かに包み込まれ
目を細めた

鮮血の香り 鉄の香り

彼は
流血沙汰の戦争の神

しかしながら…

「お帰りなさい」

迎えたある日

彼は敗北を背負っていた

戦略を駆使した戦神

アテナには勝てないらしい

また…

「お帰りなさい」

迎えた日

彼は屈辱と恥辱に塗れてた

美の女神との秘め事が

見せ物とされたと呟いた



それでも
お帰りなさい、アレス様

私の大事な守護神様

羊の月に堕ちて来た私の

大事な 大事な

守護神様

『冬』

柘榴一つ 娘は帰らず

季節の母は 悲しみの淵

だけれど

お陰で大地は雪の下

トロトロ微睡み 眠ってる

クピドの過ち

冥界の王の胸に刺さった

罪を犯したクピドは

それから

どうなったのでしょう?

美を母に持つクピド

連れ去られたペルセフォネ

季節の母は

独りで涙

悪戯に巻き込まれた
プルトーの御胸

ただ願うのは

罪無く

愛持ち この夫婦が

幸いに生きられますように

罪無く

母が笑いますように

クピドの過ちが

咎をおいませぬように…

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