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『純白の使者』

冷え込んだ空は
近々
純白の使者を寄越す

頬に触れ
肩に触れ

消えてしまう
儚き使者を寄越す

治まらぬ病と
治まらぬ熱とを抱き

私しは
また独りでその使者を
この手で
受け止めようとするのか

儚き使者は
私しの熱にすら耐えられず

フッと姿を消してしまう


それでも
私しは

真っ白な使者を
この手に受け止めようと

そっと
手を伸べてしまうのだ

『野良猫の忘れ物』

今宵の寝床の中

野良猫はふと
昔の…
ほんの一時を思い出した

仲間がいて…

居心地の良さよりも何より
居るべきと判断した場所

そんな場所があった



そこを追い出された時

全てを持ち出して
野良猫は逃げた

全力で

後ろから何かが追って来る
それを知りながら
猫は全力で逃げた




涙雨でずぶ濡れた猫

それを
一時的に預かりし人在り

野良猫を撫で、餌をくれた

汚い猫を
ほんの少し温めてくれた





時折

猫はその人の元へ行く

行きたくなる

だから
猫は通ってみた

笑顔が見たい

恩返しがしたい

あれやこれや………。

だから
猫は歩いていた

ただ
猫は自分を野良猫と思う

故に
野良猫は思う

「あそこに」
「忘れ物をしてきたよ」

野良猫は惑う

「あそこに」
「僕を忘れてきたよ」

居ても良い?

聞くのは怖い。

居ても良い?

飼われた事の無い猫

捨てられた事の無い猫

今宵の寝床で
微睡みながら

「明日の居場所は」
「どこかしら?」

あの人の元へ
帰りたいと思うのだけど

居場所の無い猫

未だ
野良猫

『一方通行』

湯気が昇っていく

引力など忘れて
片道切符

湯気じゃない姿になったら

戻っておいで…




片道切符で
カタカタなった

箱に飛び乗り
ガタガタ行くよ

君に会いたい

その一つだけで

片道切符
ギュッと握って

もしも
往復切符を得られたら

もしも
片道じゃなくて
繋がってたら




湯気よ

涙にならずに昇ってお行き

つぅと流れる
涙は飽きた

片道切符を
往復切符に変えておくれ

湯気よ

涙は飽きた

だから
片道切符を投げ捨てて
往復切符で
帰っておいで

『もぐら』

絶望が
穴に隠れた
もぐらの目を焼いた

希望が見えなくなって

もぐらは
太陽を失った



殻を破って
真っ暗な世界から出た時

ひよこは
どんな世界を見たのか

母の体から離れ
産声を上げた時

僕らは
どんな世界を見たのか




絶望が
そっともぐらに近寄る

もぐらには
絶望の気配しか解らない

でも

もぐらは
絶望の顔も
見えなくなってた

希望も無い
だけど
絶望も無い

絶望は
希望が必要だと

そこで初めて知ったんだ

『預言不信、不当』

怯えた。
部屋の中

祝福の歌
幸いの時

数多の預言者は告げるが

そんな音は
何一つ聞こえない

盲目の私し

耳すらアテにならぬ

どこかで
氷が割れる

どこかで
花が咲く

どこかで
指はかじかんだ

見えない
聞こえない
感じない

投げ捨てられた子猫を抱き

気が付いた時は
私し自身が
居場所を探す

不運にも

私しは
陰鬱の森の住人であり

私しは
未だ抜けられずにいる

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