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『妹海』

産声を上げた時

すでに天と地は姉弟だった

近くて遠くて

二人はいつも喧嘩していた

天は
「私に従え」
と地に吠える

地は
「僕がいるから君なんだ」と天に噛み付く

それならば…

神々は海を派遣した

海は優しく地を抱き

海は慰めに天を映す

天と地よ。
それで幸せですか?

されど気が付け…。

生み落としし雲は天を覆い
包みながら地を削る

お姉ちゃん、
お兄ちゃん、
私も…二人と同じだよ

海の歌声。

気付いて、気付いて。

二人と同じくらい

ワガママで強いんだ。

気付いて、気付いて。

『敬愛』

それは、
日本一と謡われた鬼

たぶん
人以上に人間だった鬼

血酒飲み干し

テンテンテン

首が転じて

テンテンテン

幼き私は、貴方を恐れた

恐れのお山でこんにちは

滅びの歌に疑問符ポロリ

大江のお山でこんにちは

再会した時、涙がポロリ

なにしおわば…

天に使わされし者に

支配されて
見守られて
生かされて

血酒を酌み交わし

肉食らう

歌え 歌え

貴方の歌を

歌え 歌え

君讃える歌を


酒呑童子は
滅びたり
京に平和戻りくる

されど我には
悲しみが
ありあり溢れて止まらない




赤き顔、高き背

肉食らい、赤き酒を飲む

言語通じず、
ひっそり隠れて生きる

後に付け足された

「人」の恐れに殺された

貴方を讃えよう。

貴方を求めよう。

『二頭鬼』

蒼鬼が泣いている

「朱鬼、朱鬼、何処にいるの?」

蒼鬼は泣いている

あの頃は言っていた

「朱鬼、君は笑えばいい」

無くした物が多い朱鬼。

だから、蒼鬼は与えた。

一族総出で、
太陽に騙されたフリをして

自分に降り掛かった
不幸も呪いも

全部無視して、

「朱鬼、君は笑ってくれ」

…と。

しかし、運命は無情。

蒼鬼に定められていたのは、

朱鬼を帰す事。

天に生きる事が約束されていた朱鬼。

地に縛られている蒼鬼。

蒼鬼に定められていたのは、

朱鬼を天に帰す事。

太陽に帰す事。





「そろそろ本気出しなよ」

朱鬼の言葉。

それは、

「僕を帰して」

という事。

「朱鬼、朱鬼、何処にいるの?」

蒼鬼は泣いている。

泣いた蒼鬼。笑った朱鬼。

この物語で、唯一救われるのは

最期に、朱鬼も泣いてくれた事。

偽りの、母の声。

「大丈夫よ」

の前に、朱鬼が泣いてくれた事。

朱鬼、朱鬼。

何処にいるの?

『手紙』

最近会っていない親友に
手紙を書いた

まず、何から話そう?

やはり、
自分が元気でいる事か?

それとも、
相手を気遣うべきか?

こっちの様子を書いて

あっちの様子を聞こうか?

言葉が次々に浮かんでは消える

はて?

何で私は手紙を書こうとしたのだろう?

様子が知りたいから?

何かを伝えたいから?

いや、違う。

変わらずに繋がっている事を、確認したかったからだ。





拝啓、心友よ。

私は元気です。

色々と相変わらずですが…。

そちらはいかがですか?

お変わりありませんか?

寒くなって参りました。

お変わりなく。

お互い、お変わりなく。

あ、そうそう…

〜云々。〜云々。

『裏切りの華』

裏切りの華が一輪
毒々しい色で咲いた。

名前の無い、毒々しい華、雑草花

「私は綺麗ですか?」

聞かずとも良い

されど

華達はそんな無駄な言葉を放つ

手折られるのを望む

しかし、

本当は手折られぬ方が良い

手折られたなら、

もうかの茎には帰れない

あの根を思い出せない

それなのに

華達はそれを知らない



毒々しい華、雑草花。

風に手折られ、気付いてしまう。

あまりにも愚かで悲しい現実と、

己で亡くした可能性。

毒々しい華、雑草花。

裏切りの華、雑草花。
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