「出掛けるの?」
「ああ」
「どこに?」
「………Roma」
あ、今めちゃくちゃ言いたくなさそうな顔した!ひどい!
「い…一緒に行きたい…」
「そう言うと思ったから答えたくなかったんだ」
「そう言うと思ったから遠慮がちに言ったのに…」
「……」
舌打ちされたし…いいもん、めげないもんっ
「行きたい…」
「……」
「行きた…」
「っるせぇ」
「いたっ…!」
ボスはわたしに軽くデコピンをすると、「2秒で支度して来い」と言った。
やっ…やった!連れて行ってくれるんだ!
「ありがとボスっ大好きだよ!」
「2秒っつったろカス」
「スペイン広場行こうね!」
「行かねぇ」
「ダーメ!そこでボスにジェラート買ってもらうの、夢だったんだから!」
「くだらねぇ…」
「女の子の憧れなの!」
「そうかよ…」
結局、環境保護がどうのこうのとかで、スペイン広場でジェラートを食べることは叶わなかったのだけれど、ボスとデート(と言い張ってみる)ができただけでもわたしは最高に幸せだ。
※正一とハルが同じ年・学校設定
「あーもう…」
「どうしました?入江さん」
「木を描くなんて無理だよ…葉っぱが細かくて難しい…」
正一は盛大にため息をつくと、持っていた筆を放った。
「だから美術は嫌いだ…」
「はひー…でも、描かなきゃ成績つきませんよ?」
「うるさいなー。だから悩んでるんじゃないか」
「う〜ん……」
…しばらく流れる沈黙。
「………あっ!ハル思いつきました!」
「なに…って、ちょっ…!」
ハルはいきなり正一の眼鏡を外した。
「何するんだよ!返…」
「入江さん!木をっ…木を見てください!」
「は…?」
正一の目に映る木は、もちろん葉も幹もぼやけている。が、逆に輪郭がなくなり、まるで緑や黄緑、茶色の絵の具を使った絵画のようであった。
「眼鏡をかけて見るから描きづらいのでは、と思いまして…」
「………」
「はひ…ごめんなさい…」
「いや…目が悪いのも案外良いものだ…ありがとう」
「(あ…)は…、はいっ!」
「(あ…)」
(笑った…)