※髑ハル
ハルのお気に入りのケーキ屋さんで、ケーキをたくさん買った。
他人への、誕生日のプレゼント…今までそんなこと考えたこと無くて、悩んで、悩み抜いた結果がこれだ。
実に単純…。
花束とか、服とか、アクセサリーとか、頭にはたくさん浮かんだものの、金銭面と…その…センスの問題で断念した。
なんにせよ、早くハルに渡したい。早くハルに会いたい。早く、『おめでとう』って言いたい。わたしが、いちばんさいしょに。
ちゃんと言えるかな…
ちゃんと笑えるかな…
『お誕生日おめでとう』
って言って、それから…、
『生まれてきてくれてありがとう』
って伝えたい…。
生まれてこなければ良かった人間が、生まれてきてくれてありがとう、なんて笑ってしまうけれど…
ハルが大好きだから、伝えたい。
私はインターホンを、少し震える指先で押した…。
※CLANNAD もう一つの世界 智代編パロ
卒業を数ヶ月後に控えた高校3年の秋。
オレはなかなかに充実した日々を送っていた。
「ツーナさんっ♪」
「…」
「ツーナーさん!起きてください!」
「んー…うるさいな〜…」
目を開けるとハルがいて、もう朝か、と少し憂鬱になる。
昨日遅くまでゲームをやってたせいで寝不足だ…とりあえずハルの声をシャットアウトしたくて、頭まで布団を被った。
「ダメですよ!いい加減起きないと遅刻してしまいます!」
「…毎朝起こしに来なくたっていいって言ってるだろ…」
「これは義務です!ハルはツナさんの、"彼女"なんですから!」
オレの世話をやく時、いつもハルは「彼女なんですから」と言う。誇らしげに、嬉しそうに。そんなハルの言葉や笑顔が、くすぐったくて、愛おしくて、でもやっぱり恥ずかしい。
「…ツナさん?」
「………ハル、」
「はひ?」
「 別れよう 」
ただそんなハルを見てると、どうもからかいたくなってしまう。前はオレの方が振り回されてばっかりだったから、こういう所は成長したかなって思う。(Sっ気が出てきたっていうか…笑)
続く
「出掛けるの?」
「ああ」
「どこに?」
「………Roma」
あ、今めちゃくちゃ言いたくなさそうな顔した!ひどい!
「い…一緒に行きたい…」
「そう言うと思ったから答えたくなかったんだ」
「そう言うと思ったから遠慮がちに言ったのに…」
「……」
舌打ちされたし…いいもん、めげないもんっ
「行きたい…」
「……」
「行きた…」
「っるせぇ」
「いたっ…!」
ボスはわたしに軽くデコピンをすると、「2秒で支度して来い」と言った。
やっ…やった!連れて行ってくれるんだ!
「ありがとボスっ大好きだよ!」
「2秒っつったろカス」
「スペイン広場行こうね!」
「行かねぇ」
「ダーメ!そこでボスにジェラート買ってもらうの、夢だったんだから!」
「くだらねぇ…」
「女の子の憧れなの!」
「そうかよ…」
結局、環境保護がどうのこうのとかで、スペイン広場でジェラートを食べることは叶わなかったのだけれど、ボスとデート(と言い張ってみる)ができただけでもわたしは最高に幸せだ。
※正一とハルが同じ年・学校設定
「あーもう…」
「どうしました?入江さん」
「木を描くなんて無理だよ…葉っぱが細かくて難しい…」
正一は盛大にため息をつくと、持っていた筆を放った。
「だから美術は嫌いだ…」
「はひー…でも、描かなきゃ成績つきませんよ?」
「うるさいなー。だから悩んでるんじゃないか」
「う〜ん……」
…しばらく流れる沈黙。
「………あっ!ハル思いつきました!」
「なに…って、ちょっ…!」
ハルはいきなり正一の眼鏡を外した。
「何するんだよ!返…」
「入江さん!木をっ…木を見てください!」
「は…?」
正一の目に映る木は、もちろん葉も幹もぼやけている。が、逆に輪郭がなくなり、まるで緑や黄緑、茶色の絵の具を使った絵画のようであった。
「眼鏡をかけて見るから描きづらいのでは、と思いまして…」
「………」
「はひ…ごめんなさい…」
「いや…目が悪いのも案外良いものだ…ありがとう」
「(あ…)は…、はいっ!」
「(あ…)」
(笑った…)