※正一とハルが同じ年・学校設定

「あーもう…」
「どうしました?入江さん」
「木を描くなんて無理だよ…葉っぱが細かくて難しい…」

正一は盛大にため息をつくと、持っていた筆を放った。

「だから美術は嫌いだ…」
「はひー…でも、描かなきゃ成績つきませんよ?」
「うるさいなー。だから悩んでるんじゃないか」
「う〜ん……」


…しばらく流れる沈黙。


「………あっ!ハル思いつきました!」
「なに…って、ちょっ…!」

ハルはいきなり正一の眼鏡を外した。

「何するんだよ!返…」
「入江さん!木をっ…木を見てください!」
「は…?」

正一の目に映る木は、もちろん葉も幹もぼやけている。が、逆に輪郭がなくなり、まるで緑や黄緑、茶色の絵の具を使った絵画のようであった。

「眼鏡をかけて見るから描きづらいのでは、と思いまして…」
「………」
「はひ…ごめんなさい…」
「いや…目が悪いのも案外良いものだ…ありがとう」
「(あ…)は…、はいっ!」
「(あ…)」



(笑った…)