空を見上げると、二羽の白い鳥が仲よさそうに飛んでいる。雲一つない空は、実に清々しい。
騎士の仕事として 外に出ていたフレンは、野営の準備のため、薪を集めていた。自分より下の立場にある者にさせればよいものの、動かずにはいられないのだろう、次々と仕事をこなしていく。
ある程度やることがなくなってから一息を吐く。
「隊長」
低い声の男がフレンへと話しかける。フレンは汗を拭うと彼へ視線をやった。
「お手紙が」
男はなんの装飾もされていない封筒をフレンに差し出す。彼はそれを受け取ると、封を切り中を読み出した。
読んでいる最中、所々で笑みが零れる。その様子を見て、男は首を傾げた。
「いや、すまない。友人からだ」
フレンは手紙を戻すと、辺りをキョロキョロと見渡す。
「これを持ってきたのは?」
「青い犬です」
「そうか、ありがとう」
「隊長どちらに?」
いきなり歩き出したフレンに男は問いかける。彼は手を挙げると、短く『散歩』と言った。
野営地の近くにある森に来ると、ユーリとラピードの姿があった。彼の仲間は居ない。ユーリはこっそりと抜け出してきたのだろう。
フレンは笑顔を彼に向けると、こちらの姿を確認し近付いてきたユーリに軽く抱き付く。
「直接来ればいいのに」
「いや、あの女居るしな」
「ソディア?」
「そう」
ユーリから体を離したフレンは腰を落とし、嬉しそうに尻尾を振るラピードを撫でた。
ラピードは撫でられ上機嫌になると、フレンに寄りかかるようにして座り込む。動けなくなったフレンは、ユーリを見上げ苦笑するとその場へと座り込んだ。
寄り添うようにユーリが隣へと腰掛ける。
「どうだ、仕事の方は」
「順調だよ。それこそ休みがないくらいに」
「とか言って、部下にさせりゃいいこと自分でしてんじゃねぇの?」
「あ、バレたか」
「アホ」
ユーリは笑いながらフレンの頭を小突く。それに対し彼は小さく笑った。
空を見上げれば緑が多い茂っている。青く澄み渡る空には、二羽の白い鳥。今の自分とユーリのように仲良く飛んでいる。
安らんでいるとき、銃声が響き、一羽の鳥が下へと落下する。フレンは状況反射で立ち上がると、鳥が落ちた方へと走り出した。
いきなりのことに状況が飲み込めないユーリとラピードは、互いに顔を合わせるとフレンの後を追うように走り出す。
フレンの姿を見つけたユーリは、そこに座り込む彼にそっと近付く。彼はゆっくりと立ち上がると、手の中で赤く染まる鳥を抱え、優しく撫でていた。
「治癒術をかけても、無駄だったよ」
「鳥?」
問いかけに首を振る。連れ添いの死を悲しむように、もう一羽はフレンの肩へと乗ると、悲しく啼いた。
「おい、俺らの大切な獲物返してくんねぇか? 今日の飯にすんだよ」
大柄な男たちが気味の悪い笑顔を浮かべながら近づいてくる。この鳥を撃ち落としたのはこいつらだろう。
ユーリは動きをみせないフレンを庇うように彼の前に立つと、剣を鞘から抜くことなく構える。
フレンなら言うはずだ。無駄な殺生はしたくない、と。
ラピードも身を屈め低く唸る。その犬の姿を見た男一人が銃を構え、ラピードに狙いを定めた。
彼らは言うなれば狩人なのだろう。なんの害もない動物を殺し自分たちの食にする。
ユーリは皮肉に笑うと、口を開いた。
「あんたら、うちのもんを飯にする気か?」
ユーリは片足を横にずらすと、ラピードを隠す。照準が狂った男は舌打ちをすると、また狙いを定め始めた。どうやら人間に害は加えないようだ。
「おいフレン、さっさと引き上げようぜ」
「あぁ」
ユーリが踵を返した時、男が喜々の声を上げると引き金を引く。しまったと思った時には遅く、弾はラピード目掛けて飛んでくる。
銃声に驚いた鳥たちは驚き、木々を鳴らし一気に飛び立った。
弾が当たれば皆吠える。そう思ったが、響いたのは金属音。ユーリは安堵の息を吐くと、ラピードを撫で先に帰らせた。
フレンは男たちを睨みつけるように剣を地面に突き刺している。彼がラピードを弾から救ったのだ。ほんの、一瞬の出来事だった。
「散れ。狩りなら魔物を狩ればいい。食べれないこともない」
「なん……」
「聞こえなかったか? 散れと言っている」
やけに清々しい声で言う。男たちは舌打ちをすると、文句を言いながら去って行った。
「お前って怒ると本当恐いよな」
ユーリは苦笑すると、剣を強く握るフレンの手にそっと手を添えた。触れなくても分かるくらい、彼は震えている。
鳥を救えず、ラピードが狙われたことが悔しかったのだろう。
涙こそは流れてはいないが、沈んでいるのが痛いほど分かった。
鳥の墓を作ると、フレンはいまだ肩に乗る相方を手に乗せる。
「辛いかもしれないけど、新しく相手……さがしな」
鳥は喉を鳴らすと、羽を広げ飛び立っていく。その姿見えなくなるまでフレンは空を見上げ続けた。
不意に背後から腕を回され、優しく抱き締められる。
「お前さ、また余計なこと考えてない?」
「え?」
耳元でユーリに言われ、顔の向きを変える。彼を見れば、優しく笑みを作ってくれていた。
余計なこと、もしかすると考えているかもしれない。
「例えば、俺たちが分かつ……とか」
「考えたく、ないけどな」
「なら考えんな。リラックス、リラックス」
両腕を掴まれ、それを力無く上下に揺さぶられる。フレンは笑うと、ユーリに背中を預けた。
そうだ、何も考えずリラックスしていれば、不安なんてないのかもしれない。
いつか、なんて言葉は不安を呼ぶ。だから、前向きにいこう―――……。
End
あとがき
ユーリが目立ってないし、またかっこいい感じのフレンを書いてもう……。
しかも今度は人に捧げるもので、すみませんです…
切ないってかなんだろこれ←
小鳥遊様、こんなのでよければもらってあげてください!
相互ありがとうございますv
2008.9/18 桜庭昂
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うふふなんて素敵なユリフレ文っ!!!
ありがとうございます凄い嬉しいですっ(*`∀´*)v
私には勿体無いくらいです私なんかが頂いて良いのだろうかあわゎゎゎっ…と思ったけどもう貰っちゃったから私のもんだ誰にも私はしませんっ!!!←
桜庭様、相互本当にありがとうございましたっ(*>∀<*)v
これからどうぞよろしくお願い致しますっ!!!