夏休みです。


「スタバのチョコケーキほんとおいしい。フラペチーノ全部にトッピングできるなんて……神か」
「ほんと、お兄ちゃんって甘いの好きね」

千登世お兄ちゃんと、久しぶりの買い物。
立ち寄ったスタバで、飲み物おごってもらった。

「甘すぎじゃない?キャラメルくらいで限界よ、私」
「人を糖尿みたいに言って。飲んでみろよ、おいしいから」

ふいに差し出されたストローに、口をつけてよいものか悩んだ。それを勘ぐられてしまったのか、お兄ちゃんはそっと飲み物を引いた。

「やっぱだめ。全部飲まれるかもしれないから」

だって。

「可愛すぎか」



私の恋心は、ひどく危うげなバランスで成り立っている。
拒絶されれば、家族もろとも壊れてしまうものなんだ。お兄ちゃんはそれを嫌がって、微妙な距離に私を置いてくれている。

思うだけは自由だ。
に、したって


「なんか、無防備なんだよなあ」

たまにぼんやりと開いた唇だとか、おずおずと私に触れてくる手のひらだとか、きょとんとした目だとか
こんなに好きなんて、私も可愛いものだね。


「俺は」
「はい?」
「透世も無防備だと思う」

衝撃。
まさかまさか、気づいていたなんて。

「お兄ちゃんって、頭いいけど馬鹿よね」

ほんと馬鹿。
馬鹿、馬鹿、ばーかっ

無防備な女なんて、ほぼほぼ計算に決まってる。