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血が出たらよかった


ふたりについて、考える。

「たまに、ふたりが羨ましくて仕方なくなるよ」

優しくて、人の気持ちに敏感な次男
なんでもできて、自分に厳しい長男

男の人の、独特な世界観で生きるふたり。
私ではついていくのがやっとで、兄弟で、疎外感も感じてしまっている。


「身長高いし、頭いいし。常世お兄ちゃんなんて、運動できるし。千登世お兄ちゃんはバイリンガルだし。なんか、いい会社に勤めてるし」

きゃあきゃあ
女の子達から、何気に人気があるのも知っている。
愛されてるなあ、いいなあ。
いいなあ。


「私は、」

私は、期待に答えられているだろうか。
無意識に、誰かをがっかりさせていないだろうか。
誰かに、愛されていたりするんだろうか。
寂しさに、おいてけぼりにされないだろうか。


「やだなあ」

嫌い、けど、好き
だけど、嫌い。
……自分が、嫌い。



コップが落ちた。
コップは、粉々になって足元に散らばる。
指先が固まって、みぞおちのあたりを冷たいもので撫でられる感覚がした。

「大丈夫?」
「……お兄ちゃん」

今日はダメだ。
なんだか、落ち込んでいる。





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