グレイスの愛情を感じて、アルトはシェリルは決して孤独ではないのだと思った。
「アルト君……こんな事貴方にお願いするのは私のわがままなのだけど」
「なんですか?」
「この子のまわりで世界が動きすぎたわ。私と出会う以前から1人耐えて来た。…そろそろ限界なのかもしれない」
「!?」
「シェリルはごまかせてると思ってるみたいだけれど。最近、ちょっとした段差で躓いたり体に力が入らなくて立ち上がれなかったり」
「どこか悪いのですか?」
穏やかな呼吸からは病のニオイはしない。
「精密検査をしてみないと何とも言えないのだけれど…蓄積されたストレスが我慢出来る限界値を越えた…のかもしれない」
まわりの期待。自分が掲げた高い理想。アルトには分かる気がした。自分は逃げ出したけれど、シェリルは全身で立ち向かって居る。
「シェリルの側に居てあげて…ただそれだけで良いの」
グレイスの心痛な願いにアルトはうなずいた。シェリルの側に…言われなくともそうせざるおえない見えない糸を感じたからだ。