ビースターズ63話SS (「待ってくださいよ」)
「待ってくださいよ!」
すぐにでもその場から立ち去りたかったのに、一歳下の大羊《ドールビッグホーン》の少年はレゴシの手を掴んで引き留めた。
「ハハハ、先輩超純粋なんですね! 一匹決めてる子がいるんでしょ? すごいなー。なんかイヌっぽい」
寡黙な性格のために周囲に誤解されることも少なくないレゴシの本心を、大勢の生徒たちと浮き名を流している後輩はなぜかずばりと言い当てた。
「僕に教えてくださいよ、純愛の極意を……」
屈託なく言ってくる後輩を、レゴシは黙って見下ろした。
「(分かってたまるか。俺がどんな思いですべて制御しているか、欲望のおもむくままに生きるこいつに……分かってたまるか)」