「…隼人!!」
久し振りの声に驚く間も無く、それからはスローモーションのように時間が流れた。
いきなり力強く腕をひかれ、何事かと振り返れば山本の背中が視界に入った。
それから何発かの銃声が聞こえて、山本の左手から血が滴るのが見えた。
うまく思考回路が動く間も無く山本の背中が遠ざかり、こっちに銃口を向けた敵に斬りかかり、どさっという音とともに血まみれになった敵が倒れるのが分かった。
ほんの一瞬の出来事だった。
返り血をあびた山本が振り返って、目が合って。
そこでやっと身体が動いた。
「…っお前!左腕…!撃たれて…!!」
やっぱりまだ動揺してて、慌てて山本に駆け寄る。
自分のネクタイをはずして山本の左腕をきつく縛る。
「隼人、しめすぎ。痛いのな」
「文句言ってんじゃねぇよ!バカ!!っつーかなんでオレなんかかばって…!」
「大丈夫だって。大したことないし」
「腕だけか!?他は!?」
「大丈夫だってば。隼人は心配性なのなー」
「こっちは本気で心配してんだよ!」
けらけら笑う山本に苛立ちを感じ、胸ぐらをつかんで揺さぶる。
怪我人だとか、そんなの知ったことか。
…そういえば動揺してて忘れてたけど…。
「…山本…お前、声…」
「ん?」
お互いきょとんとして見つめ合う。
「…声、戻ったのか?」
「ホントだ。戻ってる」
自分の喉元を押さえてあーあーとか発声をしだす。
「…なんかイロイロと結果オーライじゃね?」
やっぱりケラケラ笑い続ける血まみれの山本に、安心感と、ほんの少しの苛立ちを感じる。
それからピタッと笑いをとめて、いつもの優しい笑顔になって。
山本の顔が近づいてきて。
「これでまた隼人の名前が呼べる」
「山本…」
血塗られたこんな場所で二人、ゆっくりとまぶたを閉じて、静かに口づけを交わした。
end
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長いことメールボックスに放置してましたあわわわわ…!
全然進展のない24山獄…なんでコイツら動かないの…!ジタバタ!!
山本!獄寺なんてもーガバッと押し倒しちゃえよっ!
やたらすっげぇテク持ってる山本といろんなぷれぇが好きな獄寺なハレンチな山獄も好きですが、いつまで経ってもなかなか進展しなくてウダウダやってるずっと初恋的な初々しい山獄も好きです。
隼人より俺の方が戦線に出てる数が多いだけ。
だから相手がかまえた時に、隼人より俺の方が動くのが速かった。
特攻隊と言われてる俺はどちらかといえば近距離戦向きだから突っ込んで行くしかない。
とりあえず目の前の奴等を片っ端から斬り倒していく。
昔はそれこそ死なない程度に致命傷を負わせる程度だったけど隼人が側にいる今、そんなこと言ってられない。
隼人が傷付くのも、手を汚すのも、俺が、見ていられないから。
だから隼人よりも速く動かなければ。
向こうも反撃してくるけど、それをかわしながら次々に斬り倒していく。
後方から隼人も支援してくれ、思ったよりも早くカタをつけることができた。
外で戦ってた部下たちからも鎮圧に成功した報告を受けたようで、あとはこの現場をどうにかしなければならない。
さすがに隼人と二人でこの人数は無理だから、部下達を待つことになる。
「…お前、いつもこんなムチャばっかしてんのかよ…?」
声がして振り返ると、眉尻を下げて、寂しそうな表情をした隼人と目が合った。
ムチャしてるつもりはないんだけど、と思い首をかしげる。
更に悲しそうな表情をして俯いてしまった。
隼人に近づいていって、頭を撫でてやれば、顔を上げた隼人と目が合う。
ケガしてない?
口だけをそう動かせば通じたみたいで。
「オレは大丈夫だ。お前は?」
ピースしてみせれば、少し安心したようで。
「外の方のカタがついたらオレの方の部隊が来る。それまではここで待機だ」
ジャケットの内ポケットからタバコを取り出し火をつけ、煙を吐き出して少し落ち着いた様子の隼人を見て、自分が倒した奴等を振り返る。
何人か息をしてる奴等もいるけど、ほとんどがこと切れた奴等ばかりだ。
いつものことでもう慣れてしまったこの状況にため息をついて、隼人の方へ向き直る。
ちょうど、隼人の後方に倒れていて、銃をこちらにむけてる敵が視界に入った。
「…隼人!!」
next
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