僕の親友(名前はA君とします)の体験した話です。
僕が頼み込んで絶対笑わない事を約束に聞きました。
まず始めに断っておくと僕らはある学校の寮に住んでいて、
お風呂は大浴場でした。
A君はバイトをしていていつも夜遅くに帰ってきました。彼
が帰る1時頃には普段数人の学生が風呂を使っていたんです
がその日は土曜ということもあり、彼はその浴場で一人でし
た。
彼はその時怖いと言う気持ちは微塵も無く、ただ「一人じゃ
ん、ラッキー」程度に思ってその大きな浴場に壁に背を向け
てつかりました。浴槽につかり出して2分ほどしたころに、
彼は後ろのほうから不思議な音を耳にしました。
「ジュルッ…ジュルジュル…」
始めは彼は後ろの壁の向こう、つまり低学年用の大浴場で誰か
寝ズリでもしてんのか?と小さく笑ったそうですが、その音が
だんだんA君の頭の後ろのほうまで近づいてくる気がしたそう
です。しかし、一瞬後、彼は水中にいました。なんと彼曰く、
何かに頭の上から押し込まれたそうです。
彼はパニックに陥りながらも、もしかしたら友達が知らない間
にびびらせようとしたのかと思い、水中で目をあけ、ぼんやり
と見える水上の様子を見上げました。そこには白い霧のような
ものが漂っていました。
そしてその力はとても強くて抜け出せず、彼は恐怖と息苦しさ
のあまり水中で気を失いました。
その時、たまたま入ってきた先輩が溺れている彼(気絶寸前だっ
たらしい)を発見し、彼を救助、A君は救急車で運ばれ、発見が
早かったのが幸いし一命を取りとめました。
A君はそのことを誰にも告げず、ただバイトを辞め、風呂には
多くの学生たちがいる8時頃に、浴槽には決してつからなくな
りました(今でも)。
しかし話はそれだけでは終わりませんでした。
ある日先輩はA君を呼び出し言いました(話はとても長いので簡
略)。
その話の内容はおまえが溺れてた時、湯気が人の形をしておまえ
を押さえつけてた。
ソイツは俺のほうを見て(なんとなくわかったらしい)壁の中に逃
げ込んだ。
そして、あれはいったいなんなのか?
というものでした。
その時、A君はそんなものを見たのに救助に来てくれた先輩の度
胸に感服したと言ってました。
そして、最後に先輩は気になったのでオレが調べるけどおまえは
どうする?と聞き、A君は何かわかったら教えて欲しい、と言っ
てポケベルの番号交換し別れたそうです。
そして数日後、その先輩から真相が分かったと言って明日の朝の
登校前に会いたいと言うメッセージが届きました。A君はその日
すぐに寝て明日を待ちました。
朝、待ち合わせの場所には先輩はきませんでした。ただ、その日
は何故か一時間目の授業が無く、全校生徒が体育館に集められ、
教壇にたった副校長は一言言いました。
昨晩、5年6組の山下卓郎君(先輩の本名、仮名)が浴場で亡くな
った、とのことでした。死因は心不全とのことです。しかし、こ
の集会がやたらと短かったのを覚えています。そして、先生方は
足早に体育館から去っていきました。A君はその時釈然としない
何かを先生方の態度から感じ取ったそうです。
その日ついにA君は先輩が死ぬ前に訪ねた定年まじかの先生に話
を聞きに行きました。その先生は始めに「やっぱり来たか…」と小
声でつぶやき、最初のうちは何もしらんで言い張っていたようで
すが、A君が毎日その先生の部屋に来るので先生もついに根負け
し話を始めました。
「最初に断っておく。絶対笑ったり、口外したりすんな、分かった
な」
そう言うと先生は話し始めました。
20年ほど前の冬にある学生いたそうです。彼はは少し周りと違
っていて、少し気味悪がられていて、ちょっとした(今のような酷
いものではなかったらしいが)イジメのターゲットとなっていたら
しいです。
ある日の夜中、彼は遅くに風呂に入りました。その時数人の友達
が彼をおちょくって笑おうと言って、彼が浴槽からでる所に濡れ
た石鹸を置き、彼がスッ転ぶのを見て爆笑、その後彼も爆笑、と
いう計画の些細な悪戯でした。
しかし、運悪く彼は頭の打ち所が悪く動かなくなり、友達たちは
恐くなって部屋に逃げ帰りそのことは誰も触れなかった…しかし
次の日彼は死んでいた。凍死だった。裸のまま朝まで発見されな
かったからだ。
その後、彼の友達たちは誰にも何も言えず、彼の葬式で本当に悔
いていたと言った。しかし、その中の一人がある日突然、自宅の
風呂場(土日で家に帰っていたと思われる)で死亡、立て続けにも
う一人も死亡した。
最後に残った一人は風呂が嫌いで三日か四日に一度しか入ってい
ないのが幸いし生き残った。しかし他の友達が死んでからはご飯
もロクに食べずにノイローゼとなった。そして彼は訪ねてきた当
時の担任、つまり今話してくれている先生、に全てを打ち明けた。
先生は学校の名誉のためもあるので、誰にも言わないと約束し彼
の部屋を後にした。しかし、数日後に彼は衰弱死した。最後の夜
彼は「やつが来る!!」と「悪かった!!」を叫びつづけていたそう
だ…
数年後、先生は卒論の担当をしているある学生と飲む約束をした。
その時、酔いも任せて先生はついその話をしたそうだ。その学生
は爆笑した。「石鹸で!!滑って!!し、死んだって!!バ、馬
鹿ですね〜!!」とその学生は笑い転げた。その時先生は、何故か
嫌な予感がしたという。
その次の日、その学生は息を引き取った。風呂で…
その話を聞いて先生は「これが2度目だ…」と小さくつぶやいた…
僕等は笑わなかった、いや笑えなかった。
きっと彼はいつもあそこにいるんだろう。そして、たまたま聞こ
えた彼のはいずり音に苦笑したA君を狙ったんだと僕は思う。そ
して自分の死を嘲笑ったもの、全てを殺す気なんでしょう。
そして、今もA君を狙っているのかどうかは分かりません。
ただひとつ、なんで僕がここにこの話を書いたか、分かりますか
それは今はノイローゼとなりつつあるA君が哀れで…
あなた達の誰かに…
この呪いを…
きっと彼は訪れるでしょう…
彼を嘲笑ったあなたを殺しに…
2011-11-20 14:39
俺が高校の頃の話。
秋頃、友人のMが悩みでもあるのか元気がなくなった。
友人連中で相談でも聞いてやろうと思って聞き出したら
「絶対笑うなよ」と前置きして話し出した。
悩みとはつまるところ「家に幽霊が出る」ってことだった。
もちろん笑ってしまった。
おまけにMの家に泊まって幽霊を見に行くという展開に。
Mは笑われたことで気が進まないようだったが、
他の人間が幽霊を確認するってのには賛成だった。
(どうも自分の頭がおかしくなったんじゃないかとか思ってたらしい)
Mの体験ってのはこうだった。
俺達が話を聞いた4日前。家族が寝静まった深夜。
そろそろ寝ようかと思ってMは寝る前にトイレに行った。
用を足し終えてトイレから出てくると電気のついていた廊下が真っ暗。
トイレの中の電気だけが廊下を照らしている。
廊下の明かりのスイッチをパチパチと切り換えるが反応無し。
「電球が切れたのか」とMは思った。
仕方がないので暗い中を手探りで部屋まで帰ることにした。
せめてもの灯りにトイレの電気を付けっぱなしにしておく。
それでも廊下の先は暗かった。
目は慣れてないが勝手の分かった自分の家なので問題なく階段まで辿り着いた。
後は階段を上ると自分の部屋はすぐそこ。
しかし階段は真っ暗だった。
「2階の廊下の電気もつけとけば良かった…」Mは後悔した。
諦めてゆっくり階段を上るM。
ギッギッギッ……。階段を上る足音がやけに大きく聞こえる。
ギッギッギッ……。さらに上る。自分の部屋の灯りが見えてきた。
「パッ」
階段を半分上ったところで突然背後の1階の廊下の電気がついた。
驚いて振り返るM。
階段の一番下に背広姿の男がいた。
父親かと思ったがもっと若い男だった。
くしゃくしゃの短い髪にグレーの背広。俯いていて顔はよく分からない。
Mは驚きで動けなかった。
そして男はゆっくりと足を上げると階段を一歩のぼった……。
気がついたらMは自分の部屋で目を覚ましたらしい。
俺達は夢じゃないのか?と突っ込んだんだけど、
トイレの電気は付けっぱなしだったらしい。
(母親に電気の付けっぱなしを注意されたとのこと)
Mはそれ以後、夢にまでその男を見るという。
あの男が階段の下で自分の部屋をじっと見ているんじゃないか。
あの男が一段ずつ階段をのぼって自分の部屋まで来るんじゃないか。
そういう想像まで膨らませていた。
「夜中にトイレなんかとてもじゃないが行かれへん。
学校の階段でも下に人がおったらビクッとしてまうくらいやし。」
Mはかなりビビっていた。
俺達はMのその話に盛り上がってしまいノリノリだった。
その週の土曜日にMの家に泊まりに行くことに即決した。
土曜日は雨だった。しかも台風接近中(笑)。
それでもM家訪問は決行された。
夕方にM家に集合。面子は俺とFとN、そしてもちろんM。
夕飯をご馳走になって深夜までゲームをしたりして時間を潰した。
Mの家族が寝静まると作戦開始。
一人ずつトイレに行って帰って来ることにした。
「奴」が出やすいように1階の電気は使用不可というルールになった。
くじによる順番決め。
N、F、俺という順番になった。Mは断固として拒否。
そのMの態度にちょっと怖くなる俺。
どこかでMの話を疑っていた俺だが、
雰囲気でMは嘘はついていないと思った。
Nが行った。帰ってくる。
「何もでぇへんなぁ」と笑う。でもちょっと怖かったに違いない。
やや引きつり気味の顔だった。
次はF。帰りが遅い…と心配になったころに帰ってきた。
「クソしてた」とか抜かしやがる。マイペースなFらしいと言えばらしい。
Mはその間怖さを紛らわすためかずっとゲームを続けていた。
我関せず、といった感じだった。
俺の番になった。
暗い廊下に出てトイレを目指す。
階段は少し急なため慎重に降りた。
話の通りギッギッと音がする階段。
階段を下りて右手に曲がりトイレへ。
トイレの電気は付けっぱなしだった。
Fが気を利かせてくれたのか、ただ単に消さなかったのか。
何にしても灯りがあるとホッとした。
用を足そうと思ったがなかなか出ない。
2階にいるときはあまり気にならなかったが
台風が近いせいか雨の音が結構大きく聞こえる。
ザーーーーという音。どこか不安になる音だった。
トイレから出る。
電気はどうしようかと思ったが
後で来て消せばいいと思い、つけたままにした。
正直ちょっと怖かった。
怖い話が好きな俺はこういうときに妙に想像力が膨らんでしまう。
暗い廊下の先に背広姿の男が見えるような気までした。
やや早足で階段へ向かう。
はやくMの部屋に戻りたい、と思った。
階段を上る。雨の音。
暗い上に慣れない急な階段のせいで速くは上れない。
後ろを振り返りたい衝動に駆られたが本当に男がいたらと思うと振り返れなかった。
やっと半分まで来た。…Mが言っていた階段の半分。
後ろに人の気配がする…と感じた。
その時、背後の1階の廊下の電気がついた。
「!?」思わず振り返る。
男がいた。スーツ姿。俯いている。
おまけに1階の電気がバチバチと激しく明滅し始めた。
俺は情けないことに一瞬でパニックに陥った。
1階の方を向いたまま階段を上ろうとした。
すると男は四つん這いになるとダダダッと階段を駆け上がって来た。
明滅する灯りの中、コマ送りで近寄ってくるように見える男。
あっという間に男は迫ってきた。
俺は声も出なかった。
男は俺に顔を寄せるとニヤッと笑って「ビビったか?」と言った。
…男は上着だけスーツを着たFだった。
今だから笑えるけどあのときは本当に死ぬかと思った。
Fが男役でNが電気を付ける役。前もって決めてたらしい。
俺がトイレに行っている間に1階の奥に移動したんだと。
くじまで細工するという周到ぶり。MもMで黙認してるし。
俺は安堵でこいつらを怒る気もしなかった(ヘタレ)。
…結局、Mの体験が何だったのかは謎のまま。
その後Mは元気になり、俺はちょっと元気じゃなくなった。
2011-11-20 14:30