オールキャラ&セシトキ?
…
デビューして各々の仕事につく中、大晦日をいつものメンバーで過ごそう、と言い出したのは音也だった。
それぞれ仕事もあるのですし、全員が都合良く集まるだろうかという危惧はあったが。誰一人として不参加を申し出ず、むしろ参加しなければいけない流れになってしまい、その波にのまれて私も参加することになってしまった。
レンや聖川さんはご実家の都合もあるでしょうに、元旦に行けば問題ないとあっさり返され、レンの「もちろんイッチーも来るよね?」という発言とそれに反応した面々の期待の眼差しに、頷くしかなかったのだ。
しかし、大晦日のぎりぎりまで仕事に追われていた私は、急いで皆が集まっている音也の部屋に向うも、すでに部屋中が出来上がっている状態だった。
そこかしこにノンアルコールのシャンパンや缶が転がっており、料理が置いてあったのだろう机にはトランプが散乱していた。
部屋全体が…屍累々とでも言うのでしょうか、音也や翔はともかく、七海くんや渋谷さんまでがカーペットで無防備に横になっており、四ノ宮さんと聖川さんは机にもたれてこちらも起きる気配はない。
この光景に唖然としていると、私が来たことに気付いたのだろう、部屋の隅からひょこりと影が出てきた。
「トキヤ!待っていました!」
「あ、セシルさん…。」
彼はやや顔を赤くしているが、いつもと変わりなくにこにこと私を出迎えてくれた。
どうやらこの部屋での生存者は彼だけらしい。
「セシルさん、あの、レンはどこに…?」
「レン?レンは、トランプをしていたら、明日が早いからと先に部屋に戻りました。」
逃げましたね。
大方、後片付けを放棄して先に退出したのでしょう。この中で意識を保っていられるのは私とレンぐらいでしょうから、自分に火の粉がかからないうちに悠々と部屋に戻って行ったに違いない。
まったく、恨みますよ。ため息を吐くと、セシルさんが心配そうに覗きこんできた。
「トキヤ、忙しいと聞きました。疲れてる、無理しない方が…。」
「ああ、いえ、違うんです。」
どうやら仕事の疲れが出ていると思われたのだろう。それを否定して、とりあえず部屋の惨状を何とかしなければ、と頭を切り替える。
「セシルさん、手伝っていただけますか?」
「Yes、ワタシは、何をすればいい?」
「七海くんと渋谷さんをソファへ運びましょう。さすがに女性を床に寝かせておくわけにはいきませんから。」
こくりと頷いたセシルさんと二人で彼女たちをソファへ寝かせる。起きる様子が見られないことから、熟睡しているのだろう。
それからセシルさんとロフトへ上がって、仕舞われているありったけの毛布を持ってくる。まず彼女たちが風邪をひかないようにと毛布をかけると、セシルさんが感動したように目を瞬かせた。
「トキヤは、紳士なのですね。」
またどこで覚えてきたのか分からない言葉を使うセシルさんに「そうでもないですよ」と返すと、セシルさんは首を振る。
「Non、女性に優しい人をそう呼ぶ。レンから聞きました。」
またあの人はそんなことばかりを教えて…と半ば呆れつつ、セシルさんに持っていただいていた毛布を床の男性陣にかけていく。
「…あまりレンの言うことを信じてはいけませんよ。」
一応、忠告はしたが、セシルさんはこてんと首をかしげている。そして、自分の持っていた毛布がなくなっていくのを見つめて、思いついたようにぱっと顔を上げる。
「なるほど、わかりました!トキヤは女性だけでなく、みんなに優しい。だから紳士ではないのですね。」
「…はい?」
一体どこをどう回ってその結果にたどり着いたのかは分かりませんが、セシルさんはまたもや考えながら困ったように口にする。
「でも、みんなに優しい人のことを何と言うのでしょう?」
呆然として答えられない私に、セシルさんの無垢な瞳が向けられる。
「し、知りません!ほら、片づけを続けますよ。」
ふい、と目を逸らした私に、セシルさんが不思議そうにしつつも元気よく「はい!」と答える声がする。
どうしてでしょう、今はまともにセシルさんの顔を見られそうになかった。
後日
セ「みんなに優しい人のことを、日本語では何と言うのですか?」
翔「みんなって…なんか、ずいぶん曖昧だな。」
レ「博愛主義、じゃないのかい?」
セ「Non、レンの言うことはあまり信じない方がいいと言われました。」
音「え?それって誰に?」
セ「トキヤです。」
レ「イッチーってば、嫉妬かい?」
聖「貴様がふざけた言葉ばかり教えるからだろう。」
音「まあまあ二人とも…で、なんで優しい人の話になってるの?」
セ「トキヤ、昨日みんなに優しくしてました。風邪をひかないようにと、毛布を持ってきたり…女性だけに優しいわけではないので、紳士ではありません、では、何と呼べばいいのでしょう?」
聖「む…確かに一ノ瀬の配慮はいつも素晴らしいな。」
翔「春歌と友千香だけソファだったしな。」
那「でも、僕たちが風邪をひかないように、ちゃんと毛布をかけてくれてましたよ?」
レ「後片付けもしっかり終わらせてたしね。」
セ「Yes!音也は食器の扱いが荒い、カップにチャシブというものがついていると、トキヤが怒っていました。」
音「げ、あれ磨いてくれたのトキヤだったのか…確かに、綺麗になってたけど。」
聖「茶渋のついた食器を放置するなど言語道断!一十木、そこになおれ!」
音「ええええ!なんかマサ、変なスイッチ入っちゃったし…!」
セ「う〜ん…やはり、トキヤは素晴らしいです、でも、何と呼べば…」
那「トキヤくんはきっと、超人なんです!」
セ「チョウジン?それは、何…?」
翔「那月!変なこと教えんな!」
セ「?ショウは分かるのですか?」
翔「あ〜…あのなセシル、トキヤは単純に、面倒見がいいんだと思うぞ…」
「トキヤは面倒見がいいのですね!」
「はい?そんなことはありませんよ。」
「Non、満場一致で可決でした!」
「は…?(またどんな会話をしてきたんですか…)」
…
HAPPY NEW YEAR!
よいお年を!