短編小説を書いてみよう!


短編小説を書いてみよう!



このバトンは「お話をつくってみよう!2」というバトン内容を少し変えたものです。

5つのお題を全て入れて一つの短編小説を作ってみてください^^

版権でもオリジナルでもかまいません。お題を入れる順も自由です。
(文の内容が変わらなければ、漢字変換、文末の変更も可)


○流れゆく雲が
○青に溶け込んで
○ゆっくり、ゆっくり
○海にかえってゆく
○…どこへ行ったの?



有難うございました!
バトンを回しますか?

→好きにせぃ


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「あの人は海に返りました。」

彼女はそういって泣きそうな顔で空を見上げた。
流れ行く雲が僕らの距離を表しているようだった。

「…それで?彼の墓は?」
「ないわ。あの人、常日頃から海の青はいい。あの青に溶け込めたらって言ってたから。」

眼下に広がる美しい青。彼は、この海に溶けてしまったのだろうか。
彼は不思議な人間で、所謂頭のおかしい奴だった。

『僕はね、母の子宮で羊水と言う海から生まれたんだ。だから死んだら同じ海に返りたい。ゆっくり、ゆっくりあの青に溶け込んだら素敵だと思わないかい?』
『…水死体ほど醜いものはないよ。』
『はは、なら燃やされて骨を撒いてよ。そうすれば海にかえってゆくことも可能だし、綺麗だろ?』

呆れたけれど、笑った顔が頭から離れなかった。
その笑顔は本当に綺麗で、健やかで、美しくて。
だから彼が僕の居ぬ間に死んだなんて受け入れられなかった。

ザザァ―…と波が砂浜を打ちつける。
僕は靴が波に濡れるのも構わず遠くで混じる二種の青を眺めた。

「…本当に君は突然過ぎるよ。別れの言葉を残さないでさ。」

ぽつりと呟いた言葉を拾う人間なんて居なくて。

「ねぇ君さ…どこに行ったの?墓もなし、形見もなしじゃ死んだなんて信じらんないよ。」

ぽろりと零れた涙はそのまま波に浚われた。
もう会うことは出来ない。触れることも出来ない。
だからせめて君が溶けたという海に、僕は手を差し込む。

「好き。好きだよ。ねぇだから、僕をおいていかないで。」

冷たい水の中に一瞬だけ君のぬくもりが感じた。