この夏に俺と、俺の叔父が体験した怪異。 俺の叔父貴は山陰の方で農業やってて、早くに父親を亡くした俺のことを 半ば親代わりに気遣ってくれてる。それで、都会住まいの俺にちょくちょく、 収穫物を送ってくれる。今年の夏も、出荷用でなく家使い用に作っていた トウモロコシが穫れたというので、10kgばかりクール便で送ってくれたわけ。 穫れたてで甘いと聞いたので、早速箱から出して何本か皮を剥き、 塩を振ってラップに包んで電子レンジに突っ込んだ。 箱の中見ると、まだまだたくさん入ってる。モロコシウマー! 悪くなると勿体ないので、全部剥いて蒸してしまおうと、 ごそごそやっていたら、1本、変な物が入っていた……。
そのトウモロコシは、一番外側の皮は青々としてたんだが、皮を剥くと、 何というか、短い毛が入っていた。最初は、トウモロコシの頭の毛が 皮の隙間に周り込んだのか思ってたが、それにしては短く、 しかも植物質ではない毛。それがトウモロコシの皮と皮の隙間に入り込んでいた。
何だこれと思って、その皮引っ張ると、皮の隙間から、パラパラと落ちる 茶色い粒々……無数の小蝿の蛹の殻だった。どうやら中身は既に羽化して、 山陰の畑に放たれた様子。 うぇっと思いながら、さらに皮を剥いていくと、茶色い小枝がトウモロコシの 下のほうに刺さっている。幸い、本体に虫は付いてないようだったので、 皮を剥いて、小枝を抜こうとした、その時点で、これが小枝ではなく、 なにかの獣の牙の一部なんじゃないか?と気づいたんだ。


叔父貴にモロコシ届いたって電話しがてら、近況をそれとなく聞く。 「なあ今年は畑どうなの?」 「あー御蔭さんで夏の日照りがよかったんでモロコシは甘いぞ。 ただ山の実りは少ないみたいで猿が降りてきて困ってる」 「駆除した?」 「あー。何匹か撃ったな。大抵当たらずに逃げてくだけなんだが」 「いや、それ多分当たってたよ!」
どうやら、年老いた猿がトウモロコシの穂を食べに山から下りてきて、 夢中で齧っている最中に叔父が駆除、しかし弾は外れて逃げていった、 ということらしいのですが、その際、実は弾が当たっていて、下顎が砕けて そのままトウモロコシの中に残ったのではないか、とこちらの事情を説明。
「あーそうか、じゃそれ猿の顎だろうよ。悪かったなそりゃ」 「いやいいんだけど、猿の恨み買ってるんじゃないの?」 「ハハハ! 俺はもう、つるっぱげだから大丈夫だよ! それよりお前最近  散髪行ってるか? 男なら髪は短く切っておけよ!」
なんで猿とつるっぱげが関係あるのか。つうか叔父貴オカ板来てるだろ。 小一時間問い詰めたい気分で一杯になりましたが電話代が恐くて切りました。 翌日床屋に行きました。