弱虫ふぁくた


僕は不安で、自分の中に張り巡らされた無数の血管を傷つけたい衝動にかられる。
ぷつりぷつり

女を誘う君の匠なる自然な口説きに怒り狂い、僕は目をほじくり出す想像をする。
悲しみと怒りの嫉妬に満ちた感情は、大好きな君を大嫌いになるには簡素な薬で。
君に別れを切り出すことばかりを考え脳が腐敗してゆく。

「君が考えていることは理解できないよ」
そう言葉ではない手段で伝え、後悔する。だってこんなの狂言に過ぎないし、本当は僕の方が自分で自分が何を考え行動し生存しているのか分からないでいる。
理解とはなんなのか、軽率な責めの言葉を長々と吐き散らした自分にも再び後悔。

「ごめんなさい。以後気をつけます。」

空っぽな機会音の返事。
僕は理解しようと努力し、この人は自分の過ちを理解し争いを避けられる僕の一歩先をいく大人なのだ。と
僕の心は既に好きを取り戻しかけていた。
「これからも不安なことがあれば気にせず言って」
人を気遣え、僕を尊重してくれる言葉に僕は涙する。
嫌いなんて一瞬でも考えた自分が馬鹿だった。

完全に僕の心は浄化され、醜い部分は朽ち果て、ちぎれて落ちた。




(進化)(縫い合わせる血管)