ソーダー水越では、あなたが揺れちゃって
人のセックスを笑うなパロ。ネタばれになりきれて無いけど一応注意。あと性転換。
キョン(→?)←古泉←キョン子
バイトの最中、やってきたキョンくんは、あたしをお茶に誘った。
あたしはのこのこ着いてきた。
だいすきな古泉が、だいすきな人。
自由奔放で笑顔がかわいい、男の人。
あたしは喫茶店のテーブルで、向かい側のテーブルに座ってコーヒーを飲んでるキョンくんに言った。
「キョンさん・・・って結婚してるんですよね」
「そうだよ」
なんてことない風にそう言った彼に、あたしはちょっと戸惑いながら続ける。
「古泉・・・くんとは遊びですか?」
「古泉君と・・・付き合っちゃだめかなあ?」
「だめ、ですよ・・・」
「だってよー・・・触ってみたかったんだもん」
「だもん・・・、て・・・」
邪気なく笑うキョンくんは、確かに可愛かった。
あたしはココアを一口、飲み下す。
あまい・・・。
○ 。
「さむー」
「ストーブつければいいじゃないですか」
「さむーさむー」
「ったく・・・」
僕はのろんと立ち上がって、ストーブをつけに向かう。
毛布から離れて、素肌を外気に晒すとやっぱりぶるりと震えがはしる。
見慣れた室内。
彼の、アトリエ。
僕らが二人っきりになれる、かなしい場所。
心持急いでストーブをつけて、もぞもぞと毛布の中に入り込むと、腰の当たりにぎゅっと手が回される。
目を閉じながら、笑って顔を僕の肌に擦り付けてくる彼にどうしようもないくらい嬉しくなる。
「会いたかった」
思わず出た言葉に彼は驚いたように目を見開いて僕をじっと、見つめた。
その顔には「じゃあ会いにくればよかったじゃいか」と、でかでか書いてある。
ああ、しまった。
僕は胸にくすぶる切なさを必死に抑えて彼を抱き締めた。
髪にキスして背中を撫で回して、
さっきあんなに触れたはずなのに、もっともっと深く深く。
彼には僕の気持ちは分からない。分かってもらえない。
彼に奥さんが居る。その事実を突きつけられた僕の気持ち。
会いにくればよかったじゃないか、なんて
そんなことが悩まず出来るんだったら、僕はすぐにでもこの人を掻っ攫って海外にでも逃亡するだろう。
あったかくなっていく室内と
沈み込んで冷たくなってゆく僕のなか
。〇。
このあいだ、あたしはこの間キョンくんが東京に行くと、言うのを聞いた。
キョンくんが友達と開いていた個展を見に行ったときだった。
「嬉しいこと、あったんだ」
「古泉くんと、ですか?」
「ちがーう。仕事だよ仕事。俺東京行くんだ」
そのとき、丁度キョンー!と彼を呼ぶ声がして、あたしが何か言う前にキョンくんは「じゃあゆっくりしってって」と笑って風のように去って行った。
あたしは呆然として、頭の中が真っ白けになって。
いつその場を後にしたのか全く、覚えていない。
それからちょっとして、キョンくんはあたしたちの前から消えた。
。゜○
彼は消えた。
電話は一回だけあった。
『古泉ー!元気かー!!俺今インドにいるんだ』
「一人で?」
『んー?今熊さんとー』
「なんで」
『色々あってさー。仕事で』
奥さんと、インドにいると言った彼からの電話はその後電波が悪くなって、切れてしまった。
思えば、これといった始まりも無かった。
今じゃもう会えないし、
終わりだってきっとない。
僕はスクーターをイカレたみたいにぶっ放す。
○゜。
冬のあいだの、いかれた人たちのいかれたおはなし