じりじりと熱が僕の肌を焦がす。
「はぁ…っあつ、い゛ぃ…っ」「ふふ…でもそのあつさがいいんでしょ?」
「はっ…はいぃぃ〜っあああぁぁんん…っ」
肌を焼く熱さに加え、溶け出た僕の熱い飛沫が、彼の背中にかかる。
「ひぃいいい…っあづい゛ぃぃぃ〜」
「ふっ、んんっ…まだまだ〜」
「ひゃあああああぁぁぁ…っ」
はぁはぁと荒い息遣い。
だらしなく開いた口元から流れ落ちる、涎。
潤んだ瞳が浅ましく、僕を見上げる。
そんな褐色の肌をした、愛らしい彼を抱き締める。
「さぁ…早く僕と溶け合って、一つになろう…ね?」
「は…、はいぃぃぃ〜っ」
………チィ〜〜〜〜ン………!!
「あつっ!?」
『那由多!? どうしました? 』
「マヨネーズが指先に付いたぁ〜。あぁ〜熱かった」
『気をつけて下さいね?』
「うん!! さぁ食べよ食べよ…
照り焼きチキンサンド」
チャンチャン
ジングルベェ〜ル ジングルベェ〜ル すっずがなるぅ〜
ふんふんふ〜ん
あっ…そこから先は歌詞が分からないんですね。
小さなツリーを眺めながら鼻歌を歌う那由多。
そんな彼女の後ろ姿を眺めながらお茶を用意する。
今年のXmasは、特別何かをするでも何処か出掛けるでもなく、家でまったりと過ごした。
本来なら未だ仕事の彼女が25日に有休を取った位…。
なのでまぁ…昨夜は何時もより念入りに、可愛がらせて戴きましたが…。
キンと冷えた寝室の空気から逃れ、温かい寝具の中…
其れよりも心地好い互いの躯を飽く事なく抱き締め合った…。
その姿を思い返せば、あらぬ処に熱が灯りそうで…相変わらず素直な自身に笑いが洩れる。
「…ん?何か楽しそうだね…」『そうですか?』
ソファに座る彼女が微笑む。
『今年も貴女と過ごせて幸せだな…と思って…』
手の中…温かいカップの中味がこぼれない様に、そっと彼女の肩を抱き寄せ、囁く。
「……そぅだね……」
そう呟いた彼女の左手には自分と永遠を誓う、お揃いの輝る証。
死が二人を別つ時迄、永久に…あなたの傍で…この幸せな時間は、続いていく…
【 FIN 】
『…36.4。もう大丈夫ですね…』
差し出された体温計の数字を確認した私は、微笑む。
胸元を整えた那由多は小さく息をついた。
「ご心配をおかけしました」
『いえいえ』
先週末、那由多が熱を出した。病院へ連れて行けば、医者の診断はインフルエンザA型との事。普段風邪を引いても、あまり体調を崩さない彼女。
今回は久々の熱だった為、本人もグッタリと、身体をベッドに沈めていた。
幸い39度台まで上がった熱は、一晩ゆっくり休んだら、下がりその後も上がる事もなく済み、直ぐに食欲も戻った為、回復は早かった。
「うぅ〜〜…っ…」
『どうしました?』
病がぶり返さない様に、温かい格好をした那由多がソファーの上で唸っている。
自分に思い当たるが無かった為首を捻れば、眉を八の字にした申し訳なさげな彼女の視線と、ぶつかった。
「…ごめんね」
『……?何が、ですか?』
彼女の隣に腰掛け髪を撫でれば、猫の様にすり寄る。
視線で言葉の先を促せば、おずおずと那由多は口を開いた。
「…バレンタインのチョコ、用意が出来ませんでした。ごめんなさい…」
土日で用意するつもりだったの…でも寝込んじゃったから…と、彼女は悄々と言う。
何を言うかと思えば…そんな事
『お気になさらず…「でも!!」那由多…』
更に言い募ろうとする彼女を、そっと抱き寄せる。
『菓子メーカーに便乗したイベントなんかに拘らすとも…私には、那由多とこうして過ごす何気ない日々が、何よりの贈り物なんですよ…。だから…早く元気になって…』
貴女を…私に、下さい…。
最後の言葉は吐息と共に囁く。
バッ!!と耳を押さえた那由多は真っ赤になりながらコクコクと頷いた。
『…それは楽しみですねぇ〜』
甘いチョコレートにも負けない笑みを浮かべ、私は彼女の額に口付けた。
【 FIN 】
浮上する意識…。微睡みの中、温かな隣にすり寄れば、優しく抱き寄せられる。
うっすらと瞼を上げれば、笑みを浮かべた未散の顔と出会う。
「…ぉはよ…みちる…」
『おはようございます…ナユタ』
寝ぼけ眼で挨拶を交わせば、彼はおでこに小さなキスをくれた。
『でも、ナユタ…今朝の挨拶はこちらですよ?』
キョトンとする私を組み敷き、未散は微笑む。
『明けましておめでとうございます…今年もどうぞ、宜しくお願いします…』
「あっ…そうか…!!明けましておめでとうございます。こちらこそ宜しく…ンンッ…」
全てを言い終えられず、私の新年の挨拶は…未散の口内へと、吸い込まれた。
今年の一年も、未散と2人なら幸せな年に出来ると…そんな風に思いながら、彼の背中に腕を回した…。
【 FIN 】