「…俺を知らないのか…?」
「ええ、知ってたら早くここに呼んだわ。」
「……そうか…」
(今帽子屋の気分を身を持って堪能しました。…しかも…この世界の創造者…)
「どうしたの?」
「いや…」
「そうだ!クローケーがしたいわ!一緒にやりましょうよ!!」
「待ってくれ!俺は話があってここに来たんだが…」
「話なんて後でいいじゃない!私は早く真っ赤な貴方が赤まるけになるところが見たいの。クローケーが終わったら紅茶でも飲みながら話しましょうよ。」
(赤まるけ…?どういうことだ)
「…わかった」
────
フラミンゴでハリネズミを打つ…過激なゲーム…それが女王のクローケーゲーム。
(成る程な。大出血パーティーなのな。赤まるけって。)
「…いつもこんななのか?」
「?なんのこと?」
「フラミンゴとハリネズミ」
「クローケーはこうじゃなきゃ面白くないじゃない。」
「……そうか」
(…二匹とも無傷じゃすまないだろうに…よし)
ボソッ「フラミンゴにハリネズミ。よく聞け。怪我なんかしたくないだろ?空振りするからハリネズミはハチャメチャに転がればいい。…いいな?」
怯えていた二匹はしっかり頷いた。
「じゃあ私の番ね…えいっ!!」
ゴッ!!
フラミンゴともハリネズミともわからない血が飛び散った。
ハリネズミは瀕死の状態で転がされ、フラミンゴは顔面崩壊。
女王はハリネズミなんて見てなくて、血の跡を舐めるように眺めてうっとりしている。
(…エグい…我が妹ながらなんて狂いようだ…)
「アリス」
「!!」
「ふふふっ!貴女の番よ?」
「…わかった」
(頼むぞ2匹とも!)
ヴォン!!
コロコロコロコロコロコロ
ハリネズミは無我夢中でコース外まで転がっていった。
「…つまんなーい!アリスってクローケー初めて?」
「嗚呼、知らないしな」
「あら!じゃあ悪いことしちゃったわね…」
「ふふっ…アリスには過激すぎたみたいですね」
笑顔で話をする二人は幸せそうだ。
内容が内容だがな…
城から庭に全速力で走ってきたこれまたハートの刺繍がついている燕尾服の者がこちらに向かって叫んできた。
「エース様!キング様!罪人を捕まえました!」
(罪人…!?トゥィートルディーか!!?)
「私のお仕事の時間ですね。では行って参ります。」
「あら残念…じゃあ私達は続きをしましょうか」
「いや、その仕事を見学しにいこう!」
「それはよろしいのですか…?クローケーだけであんなにお顔が青くなっていたのに…」
「余計なお世話だ。次はそんな風にはならないぞ!!」
(二人のけじめがつかないまま現実に戻したらダメだろ!!!俺のせいで捕まったんだから助けないと!!!)
「どういたしましょう?クイーン?」
「そうね。久し振りに私も見学しようかしら。アリスが見たいっていうんだもの」
「決まりだな。白兎。案内してくれよ。」
「…後悔しないことですね」
─────
「断罪の間。裁判で有罪になった者を此処で裁くんですよ。」
小部屋がいくつもある大きな部屋で、天井や壁の絵画は大半赤で重ね塗られたように血がこべりついている。
不思議と異臭はせず薔薇の香りが花を擽る。
「ふふっ。一般人は絶句しますよね。」
「嗚呼!!美しすぎて絶句するって意味ね?わかるわその気持ち!!」
「クイーン。アリスはまだ正常なんですよ。」
「これから好きになってもらうわ。否が応でも。」
「はは。職人の目つきだな」
(そういえば、黒髪のキングとか言うのが見当たらないな…何処へ消えた…?)
「なにすル!!離せトランプ!」
「姉さんに痛いことしないでよ!!!」
(この声は!!トゥィートルディーとトゥィートルダム!!まだ無事でいたか!)
next?