またもや現実逃避のたいこさえてしまった
安定の小田薬です
ちゅーはしてますが、それ以上はございません
むしろそれ以上を自分以外の方のを見たい!だれかクリスマスプレゼントに書いて下さい
お礼に裸に靴下で土下座待機で貴女の眠りを守りますウソです
ふと胸が重く苦しくなった。それと同じに原因が分かる。
草木も眠る丑三つ時、涼やか虫の音色とかさかさと風が落ち葉で遊ぶ音、それと共に衣擦れの音。
「……、お前そこで何してるんだ」
仰向けに寝る俺の胸の上に跨がるは、同居の薬売りだ。
俯き、いつもは一つに纏めている髪は、滑るように肩にかかり腰へと流れている。髪で隠れて顔は見えないが、艶やかな髪やすらりと伸びる足元、ややはだけている胸元が光で更に蒼く白く見える。
「明日も商いだろ? 早く寝ろ」
ピクリと体が動くと、大の字になって寝ている小田島の脇の間に折り畳み足を置く。鍵に鍵穴がすっぽりとはまるように、小田島の脇に薬売りの膝がはまる。これでは肩を布団から離す事が出来ず、体を起こす事が出来ない。
なんだなんだ?!
自分の胸元をきゅっと握っていた指が、スルスルと首から顎そして頬へと撫でる。怖い事などないから、安心して下さいと言わんばかりの優しい手つきだ。
「怖い夢でも見たのか?」
その問いにふるふると頭を横に振る。
「どうした?」
小田島は困り果てていた。先からなにも話してくれないのだ、細い肩が震えている。泣いているのだろうか?と小田島はもやもやとした気持ちになった。
手を出来るだけ伸ばし、薬売りの顔を隠す髪を耳に掛けてやる。いつも藤色の紅と紅い隈取りをしているのだが今はしておらず、変わりに長い睫毛と、透けるように白い肌、ふっくらとした薄紅色の唇は弦を描いている。
「おい……なに笑ってるんだ」
クスクスと笑う薬売りを見て、ほっとしたのを悟られぬよう小田島は息をついて、鼻を小突いてやった。
「小田島様が心配して下さるから、面白くて……ね」
「あのなー」
ふふと笑うと、頬に手を添え親指で唇を撫でる。ここは彼の中で一番柔らかい場所と言ってもいいだろう。ざりざりとした顎とは対照的でつるりとしてしっとりしている。こうやって良いように触れるのは自分しか居ないと思うと、手放したくない感触だ。
「心配してくれて嬉しいんですよ」
「俺はげんなりだ」
「どうして……ですか?」
「試されてる気がしてならん」
ブスっとした顔で素っ気なく言い放つ小田島が可笑しくてたまらない。
「それは、すみませんでした」
屈んでちゅっと音を立てて唇を吸った。
もちろん彼はまん丸の目を更に大きく開いて驚いている。
あぁ可笑しい。私達はもうこういった仲ではないですか。今更恥ずかしがるなんて、あんたは生娘かなにかかい?
つい出でしまいそうになる言葉は心の内に止めておく。
しかし小田島様は、なかなか夜戯に誘ってくれない。今日こそはと意気込んで来たものの、期待を裏切らない相変わらすの狼狽ぶりだ。そんな反応も愛しいのだけども、
小田島様の身の内にある真を見てみたいと思う気持ちが、今は大きい。
「……許して下さいますか?」
「お前はまたこんな事をしよって!!許すもなにもあるもんか!」
「小田島様……」
逃げようとする手を掴み、自らの太股に乗せる。まるで熱いものにでも触れたかのようにぱっと手が離れるが、自分も小田島の手の上に添えると大人しく触れてくれた。
小田島の手はごつごつして節が大きい、掌は大きな皺と剣だごがある。
その質感と体温でさえ、甘美な快楽を生んでしまうのだから堪らない。
今は大人しく太股の上に居るが、意思を持ち、動き、攻めたてるのだと思うと、知らず知らず熱が集まりだす。
喉までくる火のような感情を、ほぅと一つ息を吐いて外に逃がした。
「おい」
「……はい?」
「お前布団に入れ」
思わぬ発言に驚いて目を見開く。
「体が冷えてるぞ。まったく、夜は寒くなってきたのだから薄着で過ごすなんて。お前は好き好んで風邪をひきたいのか?手なんか氷のようだぞ」
真っ赤な顔で目線をそらしながらの説教に、肩透かしを食らったが、自分の体を心配してくれている小田島が愛しい。
(……、逃げてるようにも見えるけど……まあ、それはそれで)
クスクス笑うと体をどかし、小田島の布団に入り込んだ。
冷えきった薬売りを小田島は招き入れる。
「俺がこんなに誘っているのに、あなたって人は」
確かに体は冷えている。仕返しだとばかりに薬売りは冷たくなった足先を小田島の足にぴとりと引っ付けた。
「ぎゃっ!」
「お相手が女性でしたら、愛憎つかされていますよ。だからモテないんですよ小田島様」
厚い胸板にすりより小田島の香りを胸一杯に吸い込むと、大きな手が頭を撫でた。
ややあって小田島は咳払いをして、真っ赤な顔で口を開いた。
「その……なんだ…………。明後日は休みなのだが……。それまで待っててくれんか?」
すっとんきょうな声で、まさかの言葉に一瞬何を待つんだ?と思った薬売りはポカンとした表情で小田島を見詰めた。
こんな事今までにあっただろうか?
小田島は見詰められる居たたまれなさに、薬売りの細い体を抱き締めた。綿夜着が肌に触りひんやりとするが、恥ずかしさで火照った体に丁度良い。
「もう少しだけ待っててくれ……たのむ」
胸に収まっていた腕がスルリと背に回された。顔は見えぬが、いつもよりへにょっと垂れているような耳が赤い。
「…………小田島様の頼み…でしたら」
あぁ参った。
この状況で寝れるのだろうか?
お互いに同じ事を思って目を瞑る。朝の気配はまだしない床の間の話である。