要の声は、部屋の前で警備をしていた衛兵に捕まることになった。
「一体どこから侵入した!?」
「南の王の命を狙うとは、死罪ものだ!!」
口々に言われ、死罪という言葉まで出てきて、要は焦った。更に衛兵の腰に差してある剣を見ると、それは現実味を帯びる。要はとっさに一緒に寝ていた男に助けを求めた。
「ねえ!ここはどこなの!?日本じゃないの!?どうして私が此処にいるのか分からないの!助けてよ!!」
要が男に向かって叫ぶことで、衛兵の拘束はきつくなるが、ここで諦めたら自分には死しか待っていないだろう。男は上半身裸のまま要を見つめ、顎に手をかけた。
「見知らぬ女だな。しかも見たこともない服を着ている。」
顔や、身体をじっくりと見渡す。その目は真剣な要に打って変わり、何か楽しいものを見つけたような子供のようであった。
「王、女の迷い事などに耳をお貸しになる必要はございません。」
「でもなぁ、俺を殺しに来たようには見えないんだよな。」
男は要から手を外し、今度は考えるようなしぐさをとった。もう答えは決めているくせに。
「女、ニホンという国から来たのか?」
「そうよ!」
「だが、この四つに分かれる大陸には、ニホンという名の地名はない。」
「そんな……」
どうやら要は想像もできないような“遠い土地”に来てしまったらしい。あまりのショックに、抵抗する力も失せ、項垂れてしまった。
「女、名は何と言う?」
「一ノ瀬要(イチノセ カナメ)よ。」
落ち込んだまま力なく答える要に、要に男は恭しく礼をとった。
「要、そなたを国賓として招こう。ようこそ、黄金の国へ!」
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