『あのカップルの、おそろいかな』

狭いバスの中でこしょこしょと話しかけてくる千秋さん。すぐ隣に座っていたカップルのことで、愛おしそうに組み合う腕にはよく見る天然石のブレスレットがふたつ。


はずかしくておねだりなんかできなくて、でも素直にいってみた

「おそろいって、いいねー」

『何かしよっか。ネックレス?
んー、それか指輪かな』

さらっと言うから何かわからなくて
「ネックレスよりかは指輪かなー」

なんて可愛くない返事。
指輪ですよ。まさかの。指輪ですってよ

ずっと、ずっと、ペアリングが憧れだったあたしにはもうその言葉だけでお腹いっぱい。
つけるの嫌じゃないんだ
本当にそれだけで嬉しい

なくてもいいの。ちゃんと全部かたちになってくのが分かるから。急がなくてもいつかの話で大丈夫
そんな絶対の安心感。


バスの旅は少し長くて、暇を持て余した千秋さんがちょっかいをかけてくる

にこっ

(なに、なんか怪しい)
「な、なに」

『いや?いま抱きついたら怒るんだろうなーと思って』(にこにこ)

△△△

にこっ(にかいめ)

「なにやし」

『やめたー。いまちゅーしたら怒るかなと思って』(にこにこにこ)


そんなことが何度も。
バスの車内はぎゅうぎゅうで立って乗ってたのに、そんなこと平気でしようとする。とんでもない。。

「それいいよって言ったらほんとにするでしょ」

『するよー』ぎゅー

「…やめなさい」


耳もとで急に息を吹きかけるように話しかけては「わあー!」と車内でびっくりして叫ぶあたしを見て、満足そうにけらけら笑ってた

話題:ペア○○