頭痛、とまではいかないけれど、頭の中がずっともやもやしていて落ち着かなかった。
いつもみたいに薬を飲んでから一息つくと、千登世お兄ちゃんが目敏くやってきた。

「痛いの」
「うーん」
「気持ち悪いの」
「うーん」

もやもやする。
痛くも、吐き気もしないけど、言い様の無い何かがいる。そんな、感じ。

千登世お兄ちゃんの指が、そっとこめかみを押した。
すると、いつの間にか忍足さんがやってきて、千登世お兄ちゃんに声をかけた。

「あまり押すのもよくないよ」
「じゃあ、どうすんの」
「透世ちゃん、目閉じて」

手のひらが、もやもやする場所を包む。
やんわりと押し付ける力は、気持ちのいいマッサージだ。

「多分、目疲れちゃったんだよ」

弓と、的を睨み付けていた今日。
指先の感覚が曖昧で、外してばかりいた。

悔しい、悔しい
もっと、私は強いのに。
強いのに!

「忍足さん、お話ししよう」
「いいよ」
「お兄ちゃんは無視か」
「お兄ちゃんには聞かれたくないの」

だって貴方、きっと無条件に優しくするでしょう?

忍足さんの、見透かしたみたいな笑いかたが気に入らなくて、心の中で睨んでやった。