誰だって夢を見る事はあるだろう。
 しかしそれを夢だと自覚する事は稀ではないかと思う。

 オレは今、その稀な状態にあるのかもしれない。
 何故ならオレの目の前に、アマクラアズマとしか言いようのない人物が居るからだ。
 勿論、鏡などそこにはない。どう見てもアマクラアズマはそこに存在している。
 これは夢だ。そうとしか思えなかった。

 しかし、意外にも頬を抓るとそこに痛みはあった。夢ならば痛みなどないはずだ。これはどう言う事なのか。
 オレはアマクラアズマではなかったのだろうか。そんな疑問が湧いて出てくる。
 思わず頭に手をやればそこにはいつものバイザーの感触。手に取ると、思った通りのそれがあった。

 目の前のアマクラアズマも、変な顔をしながら同じような事をしている。それがまた鏡かと言う錯覚を起こしそうになるが、ある事に気付いた。
 アマクラアズマの持っているバイザーと、オレの持っているバイザーはデザインが違う。アマクラアズマのバイザーはブルーの透ける鍔が特徴的だ。オレのバイザーは、全体が全て同じ素材で出来ている。

 ならば、きっとアレだ。アレに違いない。
 他人の空似。彼はアマクラアズマではないのだ。
あまりにもそっくりだから驚いたが、そう言う事ならばあり得ない話ではないだろう。

「君、名前は?」

 折角だから、そっくりさんの名前を聞いておこうと思った。
 そして、返ってきた答えに頭を抱えたのだった。

「アマクラアズマって言います。あなたは?」

 なんてこったい!