「オレの気持ちがいつまでも同じだとでも思ってるんですか」
 思わずそう吐き出すと驚いたように目を見開く。
 いつまでも変わらないと、そう考えていたのだろう。だから、そんな事を平気で言えるのだ。
 それ以上オレは何も言わなかった。きっとこの言葉が悪い意味で伝わる事に気付いてはいた。でも、それで良かった。
 同じではないからと言って好きじゃなくなったとか、そう言う意味ではない。以前よりもずっとずっと好きなんだ。でもそれを簡単に言葉にして伝えるのはどこか悔しい。
 言わない事は悪い事ではない。実際、オレは数え切れないほど気持ちを伝えたけれど、返ってきたものは欠片ほどしかないのだから。
 だから、言わない。今は。
 寂しげに揺れる瞳に真っ向から向き合う。
 さぁどうしますか。問う代わりに瞳を伏せた。

「じゃあ、終わりにする?」
 控えめにそう問うが動揺も何も見えなかった。伏せた瞳の色が見えない。
 嗚呼、本当に変わってしまったのか。胸のうちだけで呟く。
 人は変わらずになんていられない。そんな事はよく分かっていた。
 それでも、どこかで彼は変わらないままでいてくれるのではないか。外見が変わっても、内側だけはずっと同じでいてくれる。そんな考えはただの甘えだった。
 答えはない。このまま何も言わないつもりだろうか。
 今までならば彼が何か言うまで待ったのだろう。しかし今、待つ余裕なんてどこにもなかった。
「答えてよ」
 瞼が持ち上がる。自分でも驚くほど真っ直ぐに彼を見つめていた。
「答えるも何も、オレはずっと気持ちを伝えてきました。答えるのは、オレじゃない」
 突き放すような言い方だった。思わず食い下がった。
「言ってる意味が分からない」
 何をどう答えろと言うのか。意図が見えない。どうしてどうしてと問いたい衝動に駆られる。
 気持ちばかりが急いて仕方ない。気付けば身を乗り出していた。
「だから、終わりにしたいなら終わりにするって言えば良いんです」
「そんな事……!」
 衝動的にはきだそうとして、思い留まった。
 今、何て言おうとしたんだろう。口の中だけで繰り返す。
 そんな事言える訳がない、だ。
 胸の内を晒すような真っ直ぐな言葉だった。
 伝えられない。どう伝えたらいいか分からない。だって、ずっと曖昧にしたままだった。今更はっきりと言うなんて、できない。
 視線を落として押し黙った。
 こんな事くらいで熱くなるなんてらしくない。らしくない、気がする。どうだろう。分からない。
 でも、きっと。ここにあるのは以前とは違う自分の姿だ。
 知らないうちに、自分自身だって変わってしまった。そんな事に今更気付いた。
 そう、全て今更だ。
「君も、オレの気持ちがいつまでも変わらないままだって思うかい?」
 同じ問いを返すと頬に手が触れた。促されるまま俯いた顔をあげる。
「いいえ。そんな事を聞くって事はきっと変わらないままじゃなかったんでしょう」
 瞳に映るのはいつもの笑顔だった。