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立ち入り禁止

AとBの男二人が、とある深い山間に川釣りに出かけた。
全く知らない土地で多少不安はあったものの陽気につられてしまい、
つい山の奥まで舗装されていない道路を沢沿いに車を走らせる。
釣れそうなポイントはないかと探していると、道沿いに少し雑草の茂った広場があり、
林に囲まれた沢に通じる小道への入り口が見えた。
まだ先に道は通じているものの長時間の運転だった為、もうここしかないな、と車を降りてみる。
と、その小道の入り口に木製の古びた看板に、「立入禁止」と筆書きしてある。
つまり穴場ってことだな、と勝手な解釈をする二人。
気にせず緩やかな下り坂を数十メートル進むと、上流から大きな岩が連なる沢へとたどり着いた。
ここなら良さそうだ、と釣りの準備を始める二人。
その場所からは、林の隣接した上流の景色が数キロにわたって眺められ、
青い空と白い雲の下、木々の緑と川のせせらぎが堪能できた。
沢沿いの小道もそれに沿って続いていたので、
仮にその場所で釣れなかったら、いつでもポイント移動しようと二人は川に糸をつるす。
熱くもなく寒くもない、紅葉の垣間見える山間での午前11時ごろの魚釣り。
あまりの陽気と早起きしての長時間の運転の為か、
Aはついうとうとし始め、この景色を見れただけで十分という気になってきた。
二人の竿には何もかからない。
一時間位たっただろうか、Bがポイントを上流へ変えてみると告げと移動した。
黒いジャンバーのBの背を生返事で送りつつ、多少強めの日差しを感じ眠気を覚ますA。
あまり奥まで行かないよう言うべきだったかなと、多少後悔しつつもぽかぽかとした暖かさには勝てず
帽子を目深にかぶり直して、後ろの岩に背を持たせる。
川の流れる音が心地よい・・・

何かが、ピカッと光った。
目を覚ますA。
どのくらい時間がたったのだろうか、竿に引きはなかったようだ。
うつろな目で上流に見るもBの姿は確認できない。
岩陰のどこかにいるのかな思いと竿のえさを付け替えていると、
何やら上流数キロ先の小道から、黒い服装の人物が手を振りながら歩を進めてくる姿に気付いた。
黒ジャンバー、Bか、何だろ?とBらしき人物に手を振り返してみる、あまり視力の良くないA。
それにしてもずいぶん奥まで行ったもんだと多少呆れて見ていると、まだ手を振っている。
こちらからBが見えてるのだから、当然Bもこちらが見えて手を振ってるはずなのに・・・
何かあったのか、大物でも釣れたのか・・・?
聞こえるかどうかは別にして、どうした〜〜〜!?とAは大声を上げてみる。
木霊する訳でもない声は川のせせらぎの音にかき消されたらしく、
Bは腕を振り回すといってもよい位、手を振り続けているように見える。
そして、その腕が時折チカチカ光っている。おそらくBの付けてる腕時計が、
日光で反射しているのだろう・・・さっきはそれで自分は起きたのかな?
しばらくそのまま様子を見ていたAだが、少し妙なことに気付いた。
手を振り回す動きの速度に比べて、その歩みが余りに遅すぎる。
急ぎであれば小走りくらいするはずが、そのようには見えない。
よく見ると右足を引きずっているようにも見える・・・
いかん、Bの奴、怪我してたんだ!
自分の鈍感さに嫌気が指しつつ釣り場を離れBの元へと急ごうとするA。
川沿いの岩場から小道までたどり着き駆け寄っていこうとした瞬間、Aは我が目を疑った。

目に自信のないAにも確認できる500m位先の岩場に、釣り糸を下げているBがいた。
目を凝らして見る。間違いない、明らかにBだ。
今までAのいた場所からは、単にBの姿が岩陰になって見えなかっただけだったのだ・・・
とりあえず、良かった・・・と安堵するも
では、1km程先で今も手を振り続けている人物は誰なのか・・・?

多少不気味さを感じつつも、足を引きずってるのだから確認しなければ、と思い直すA。
人の心配もよそに釣りに夢中になっているBを憎らしく思いつつ、
Bの方がその人物に近い為、Bに対しておーい!を声をかけるA。
その人物と同じように手を振りながら幾度か大声をあげていると、やっとBが気付いてくれた。
どうした?というような素振りを見せるBに対し、
その腕を振り回す人物の方を何度も大げさな素振りで指し示すA。
きょとんとした表情を浮かべたようなBがどうにかその人物の姿に気付き、
しばらく確認していたのだが・・・

突然、驚いたような素振りを見せたBが、岩場から足を滑らせた!
何か慌てた様子に見えるが、Aからは何が起こったのかわからない・・・
滑った時腰を強く打ったらしいが、痛がりつつも大慌てで竿と荷物をまとめようとするB。
理解できないながらも手を振る人物よりBの事が気になりだし、小道をやっと上流に歩み始めるA。
その人物の姿も徐々に大きく見えつつあるが、視力の悪いAにはいまだ全貌は確認できない。
Bは何やら言葉にならない言葉を叫びつつ、足の悪い岩場からほうほうの態で小道へとたどり着いた。
A、B,腕を振る人物、の三人がほぼ一直線500m位の中に等間隔でいる形・・・
Bは息を切らせつつ、一度だけその人物の方を振り返るとあらん限りの力でAの元へと走り寄って来た。
何なんだ、どうした!?とAも訳がわからず歩み寄りBの荷物を受け取ろうとするが、
いいから、急げ、急げ!!とやっと理解できるような言葉を振り絞るB。
BがAの右腕を引っ張りつつ車の方へと引き返そうとするも、その人物の姿から目の離せないA。
いいから、いいから、と一度渡した荷物を取り上げ、結局動かないAを諦め走り去るB。
少しずつAとその人物の距離が近まる、一体何なんだ?、目を凝らして見る・・・

・・・やっと、分かった・・・・・

残バラ髪の頭から血を流した鎧を着た武者姿の男が、
狂ったように刀を振り回しつつ足を引きずりながら、
必死の形相で何やら叫び近づいて来ていたのだった・・・

あの光は、刀に反射したのか・・・?
と、思った瞬間やっと我に返り全力疾走で小道を引き返すA。心臓が痛いようだが気にしてられない。
自分の釣り道具も沢にそのまま、何とか車にたどり着き
車中で震えてAを待つBと共にその場を離れる事ができた。
帰りの山道もなお、長い・・・ 放心状態の二人、無言の車中。
途中、地元の農家の人らしい老人が歩いていたのでAはとっさに車を降り、尋ねた。

すみません!上流の広場あたりで・・・

・・・おぉ、あそこか、立入禁止の看板立っとったろうが?

・・・・・・・・・・・・

返却BOX


しまった!
今日がDVD返す日だった!!
夜中布団の中で、はっと気付いた。
時計を見ると1時ちょうど。
店は深夜1時までなのでまだ間に合うかも!
私は飛び起きてレンタル店へ走った。
店に着くと、もう中は真っ暗で営業は終わってしまったようだ。
え〜どうして?
いくらなんでも1時ちょっと過ぎまでは営業するだろ、普通。
仕方ない、返却BOXに入れとくか。
返却BOXにDVDを入れようとしたら、入れ口に何か白いものがあった。
なんだこれ?ビニール袋の持つ部分?
あっ、そうか、私の前に返却した人がちゃんと入れずに引っ掛かったんだ。
・ ・ ・もしかしてこれってチャンス?
いいDVDとかだったらもらっちゃおうかな。
周りに防犯カメラや人が居ないのを確認してから、私は入れ口から少しだけのぞいているビニール袋の端を引っ張り、引き出そうとした。

「ズルッ」

勢い余ってかなり乱暴になってしまい、ビニールは破け、中身は飛んで私にぶつかってバラッと落ちた。
結構大きな音がした。

「カラッ、カラッ・・・」

まずいな、誰かに見つからなかっただろうな?
少しその場を離れて見回してみたが、大丈夫、誰も居ないようだ。

さて、何のDVDかな?
ケースは見当たらず、中身だけ落ちている。

傷がついてなければ良いけど。
私は拾い上げようとして手を伸ばしたが、そのまま固まった。
それはDVDではなく、鏡だった。
手鏡の取っ手部分をむりやり折って丸い部分だけになった鏡だった。

なんで?!

私は意味が解らず、しばらくその鏡を見つめていた。
その時、店の前を車が通りすぎた。
一瞬だがヘッドライトの光がこちらに向いた。

鏡に反射してピカッと光った。
まぶしい!
思わず目をそらしてしまった。
再び鏡を見ると、無くなっていた!
ほんの一瞬目を離しただけなのに。
更に分けがわからなくなって、もういいや、とりあえず自分のDVD返却して帰ろう。
そういえばあの入れ口、壊れて無いよな?かなり強引に引っ張ったからな。
入れ口を見てみると、ギョッとした。

入れ口から手が出ていてこちらに向かって「おいで、おいで」をしていたのだ。

・ ・ ・いや、待てよ、できすぎだ。
あ〜、なるほどねえ。
店を早めに閉めてバイトが私みたいな客に仕掛けたいたずらか!
たしか前に自販機の取り出し口から手がでていたとかネタがあったよな。
鏡にも糸かなんかついていて私が目を離した隙に隠したんだろう。
「おいで、おいで」をしている手を良く見てみると女の子の手のようだ。
ピンクのマニキュアをしている。
耳をすますと、心なしか、小さな話し声も聞こえるようだ。
私は「うわ〜」と大げさに驚き、一目散に逃げた。
ように見せて、こっそり店の裏に回り建物の影から入れ口を覗いて見た。
まだ「おいで、おいで」をしている。
随分やってるな。
もういいだろ。早く出てこないかな。
もし可愛い子だったらこれをきっかけに・・・などと考えていると、

「ポトリ」

手首から先が落ちた。

・ ・ ・なにも考えられなくなった。
ただただその手首を見ていると、

「カサカサ、カサカサ」

指を足のように使いながら這いずりはじめた。
なにかを探しているかのよう・・・あっもしかしてあの鏡か?
これって相当ヤバイんじゃ。。

「ガタッ」

無意識のうちに壁に体をぶつけてしまった。
すると手首が動きを止めた。
指が5本ともこちらを向いた。
しまった、見つかったか!!

手首は私の方へなにかの生き物のように這ってきた。
逃げようとしたが全く動けない。

「カサカサ、カサカサ」

足を1歩伸ばせば届く所まで近づいた。
もうダメだ、私は歯を食いしばって目を閉じて観念した・・・

だがそれは私の横を通りすぎていったようだ。
だんだん「カサカサ」という音が遠ざかっていく。
5分ほど経っただろうか、そっと目を開けて辺りをうかがうと、何も無かった。
汗をびっしょりかいたが、冷静になって自分を思うと少し恥かしくなってきた。
何、真夜中に店の裏で立ちすくんで汗だらだらかいてんだ!自分?
手首が動いたように見えたのも、ビニール袋が風で転がったかなんかだろう。
は〜あ、あほだな自分。
思わず一人ぼけ突っ込みをしながら店の前に出た。
端の方にまだビニール袋が転がっている。
もう騙されないって!
まあ私をあれほど怖がらせたビニール袋だ。
悔しいから1回くらい蹴飛ばして帰るか。
近づいて見ると、ビニールではなかった。
そこには折れた鏡を大事そうに撫でまわしている手首があった。

私は無言で後ずさりをしてクルッと振り返って、これ以上速く走ったら死ぬかもという勢いで家に帰った。
そしてそのまま寝入ってしまった。

次の日の朝、親が血相変えて起こしに来た。

「お前が良く行ってるレンタル屋、強盗入って女の子が死んじゃったって!」

えっ、昨日返しに行ったけど・・・と言おうとして止めた。
机の上にはまだ返していないDVDがあったので、昨日の出来事は夢だったんだろう。
あ〜変な夢見たな。
なんか良く寝たはずなのに疲れたよ。
店に警察がいっぱい来ていて大騒ぎだから見に行こうと言うので、着替えようとしたら、何かが胸のあたりからポトリと落ちた。
キラキラ光っている。

拾い上げてみると、鏡の破片だった。

終わらない鬼ごっこ

これは俺が小学校6年の時に、同じクラスのSって言う奴との間に起こった出来事です。
コイツはいつも挙動不審でわけのわからない奴だった。事業中はいつも寝ていて
給食だけ食べていつも帰っているだけという感じだった。もちろんクラスでは馬鹿にされていたし
俺も馬鹿にしていた。今にして思えば軽い知的障害があったのかもしれない。
小学校の3年か4年の頃も一緒のクラスで、このSも含めて数人で鬼ごっこをやった事がいちどあった
チャイムがなった後にイスに座ったら終了と言うルールだった。

つまりチャイムがなった後に、鬼を残して全員が席についたら鬼が負けという事だ。
最初は俺がじゃんけんに負けて鬼になった。Sは一人だけトボトボ歩いていたのですぐにSにタッチした。
Sは鬼になっても走らないでトボトボ歩いていた。チャイムがなってもそれは変わらなかった。
チャイムがなるとみんないっせいに教室に向かい自分の席に着いた。S以外は全員自分の席についた。
『あいつ追いかけてこないからつまんねーな』『あいつなんなんだよ』
などとみんなでSの文句をいっていた。そしてまもなくしてSは教室に入って来た。
そしてなぜか泣いているふうに見えた。Sはイスに座っている俺にまっすぐ向かってきた。
そしてあろうことか俺に殴りかかってきた。どうやらイスから無理やり立たせようとしてきたのだった。
それとほぼ同時に担任が教室に入って来たのでそのまま喧嘩にもならないまま終わってしまった。
Sのやった行動はクラスの奴が全員みていたのでSと遊ぶ奴はもちろん、話す奴もいなくなってしまった。
そしてSの半径5m以内に近づかないゲームというのがクラスで流行りだした。
これはSと同じクラスの間中ずっと続いた。
・・そういえばSが授業中に寝るようになったのもこの頃からだったような気がする。


小学校6年の7月くらいに席替えでSと同じ班になった。
これは狭い会議室を一緒に掃除する事を意味していた。
さすがに近づかないゲームは終わっていたが関わりたくなかった。
この会議室は先生が見ていない場所なので、だれも真面目に掃除をするものがいないところだった。
俺は手のひらの上にホウキを乗せてバランスをとって遊んでいた。
他のやつらも適当にホウキを振り回して時間を潰していた。Sだけが糞真面目に掃除していた。
掃除の終わりを告げるチャイムが鳴った。みんなそれと同時にホウキを掃除箱に放り込んで
逃げるように会議室をでていった。俺はほうきでバランスを取る遊びの途中だったので、
バランスを崩して終わったらホウキをしまおうと思っていた。俺はバランスを崩しゲームが終わった時
会議室にSと二人きりということに気づいたので、すぐにほうきをしまって教室から出ようと思った。
そして同時にしまったと思った。Sが掃除箱の前で仁王立ちしているのだった。
 
今思えばホウキをその辺にほっぽり出して教室から出ればよかったのだが。
ホウキが出ていると怒られると思ったので、Sに言った『そこ邪魔だからどけよ・・』
Sは言った『あの時タッチされてない』
そういうと猛ダッシュでSは俺から逃げていった。
教室に帰ってからもSは追いかけてもいないのに俺から勝手に逃げ回っていた。
自分のイスに座るとSはニヤニヤして勝ち誇った顔で俺を見てきた。
あの時の続きをやっているのだろうか??そしてこれは、この日から毎日続いた。
最初は呆れていたし相手にしていなかったが、まえに突然殴られたときやり返していなかった事なども
あってか、凄くムカつくようになった。

しかし、タッチでもしようものならこの馬鹿と鬼ごっこをすることになると思ったのでこらえた。
相手にしなければ勝手に止めると思っていたが、Sの行動はエスカレートしていった。
トイレに行くのにもイスに座ったまま引きずりながら行くようになったのだ。
そして勝ち誇った顔で俺を見てきた。俺はSがムカついてしょうがなくなっていた

そして俺はある事を思いついた。終業式の日に俺がタッチして逃げれば学校が始まるまであいつはずっと
鬼になるのだから、もの凄く悔しがるに違いないと思ったのだ。
もちろんSは俺の住んでいるところを知らないし。教えてくれる友達もいない。
あいかわらずSは俺から逃げ回っていたが、タッチされた時の悔しがるさまが想像できて
逆に笑えるようになって来た。
そして、とうとう終業式の日がやってきた。俺はSが運動靴に履き替える為に上履きを脱いだ時に
タッチして逃げると言う作戦を立てていた。

終業式が終わり帰りの会も終わった。俺はSを相手にしていないふりをしてそそくさと教室をでた。
Sは馬鹿なので学校で使う道具をこまめに持って帰っていなかったので、Sの机だけ荷物が
凄いことになっていた。俺は逃げやすいように手ぶらで済むようにしていた。
俺は運動靴をはいて、隠れてSが来るのをワクワクしながら待った。
30分くらいして、パンパンのランドセルを背負ったSが、荷物をひきずりながら歩いてきた。
Sが上履きを脱いだ。俺はその瞬間うしろからSの頭をおもいっきりはたいて、『タッチーw』と
憎々しい声で言ってその場から全速力で逃げた。
 
Sは想像以上のもの凄い反応をした『ををぉーおー』ともの凄い大声で叫んだのだ。
俺は笑いながら走った。必死で悔しがりながら走ってくるSを見てやろうとふり返った。
この時はあの大荷物じゃ走って追いかけてきてないかもしれねーつまんねーのなどと思っていた。
しかしSは靴下のまま、荷物もほっぽり出して俺を追いかけてきていた。
Sの必死さに俺は大笑いしながら走った。Sは『殺す!』『呪う!』『待て!』を
もの凄い声で叫んでいた。最後のほうは喉が変になっているのに無理やり出しているような声だった。
俺は家に帰ってからも笑いが止まらなかった。あーせいせいしたと心から思った

夕方頃、家でテレビを見ていると、『をおうー』という人間とはおもえないような声が聞こえた。
Sが殺すといっている声だと直感的に感じ冷や汗がでてきた。
あいつ、まだ探してるのかよ・・俺・みつかったらどうなるんだよ・・と
その日の夜、家に緊急電話連絡網が、回って来た。
Sが死んだからだ。
トラックに跳ねられたらしい・・
後で知った事だが信号を無視して道路に飛び出してきたらしい
そして靴を履いておらず足の裏と喉がズタズタだったそうだ。
そして、Sが事故にあった時間は丁度おれがあの声を聞いた時間だった。
Sが大荷物で教室から出てくるのが遅いせいか、俺が関っている事は誰にもばれなかった
もしかしたら死ぬ直前まで、Sは叫びながら走り続けていたのかもしれない・・

あの不気味な声だけで終わればどんなに幸せだった事か・・


その夜、Sが死んだ日に聞いたあの声が聞こえてきた。
今度は追いかけられる番なのかもしれないと思った。
それからというもの、俺は毎日イスに座って過ごしている。
イスに座っていれば安全かもしれないと思っているからだ。
今はまるであの時のSのマネをしているような生活をしている。
イスに座って寝ている様など、授業中に寝ていたSそのものだ。
今ではSのように他人が突然追いかけてくるようにおもえて近づくことができない
また半径5m以内に近づけないゲームをやることになるとは、何と言う皮肉だろう。

怨みとともに成長する霊

2年前の話です。
私の友人のお母さんが難病にかかり、自宅にて療養していらっしゃいました。
友人宅はお父さんと友人の弟の4人暮らし。
 
ある日、お宅に招かれて食事をすることになりました。
友人は僕が少し霊感があることを知っており、食事に誘ったのもその関連の話があるためだったようです。
 
食事の場にはみなさん揃っており、話というのはそのお母さまのことについてでした。
 
病気になってからほぼ毎日、休息のために昼寝をしているそうなのですが、大体その時間は仕事や学校で家族はみなでかけており、家にはそのお母さま一人になるそうです。
 
そんな時、2階の寝室でベッドに一人で寝ていると、突然金縛りになり、足もとにすごい形相をした青年が立ち、じっと睨むのだそうです。
あるときには首をしめられたこともあったそうです。
 
あまりの恐怖に、1階のソファーで寝るようにしたところ、2階の寝室ですごい音がしたそうで、行ってみると誰かが暴れたように物が散乱していたそうです。
ちょうどその日は友人も部屋におり、隣の部屋で起きた出来事に驚いたそうです。
 
それまでは正直、病気のせいで精神的にまいってしまい、幻覚でも見てしまっているのかとみな思っていたそうです。
 
その後も一人のときは、1階のソファーで寝るようにしていたのですが、あるとき、そこでも金縛りにあったそうです。
恐る恐る目をあけると、目の前に例の青年がおり、口元に歪んだ笑みを浮かべながら、
 
 
「こんなところにいたんだ」
 
 
と言われてまた首を絞められたそうです。
そんなことがあり、誰に相談すればいいのかわからず、とりあえず僕に話だけでもと思って呼んだそうです。
 
その話を聞き、まずは2階の寝室を見せてもらった。
この家事態、入った時から空気が重いなぁと思っていましたが、その部屋はさらに空気が重かった。
そして中へ入り、青年がいつも立っているという場所に、私も立ってみた。
その瞬間、さらに空気がずっしりと重くなり、今までに感じたこともないような感覚に襲われた。
ためしに友人と友人の弟にも立ってもらうと、霊感のない2人にも空気の違いを感じるほど強烈でした。
 
これはただごとではないと感じ、その場で知り合いの霊能者に連絡。
するとすぐに電話口でその家の霊視をはじめた。
 
すると部屋の前の廊下に小さい窓がないかという。
出てみるとたしかに小さい窓があった。
どうやらその窓の下に、むかし祠のようなもがあったようで、家を建て替えする時に場所をうつしたのだそうだ。
それがちゃんと行われていなかったようで、神様が怒っているとのこと。
 
またそれだけではなく、例の青年というのは、お母さんが小さい頃に、ご両親の不注意で幼くして亡くなった弟の霊で、きちんと供養されておらず、怨みと共に成長した姿なのだということだった。
お母さんのご両親は数年前に他界してしまったため、怨みの矛先を向けられてしまっているとのことだった。
こういう霊はけっこう大変なんだそうだ。
 
しかし、後日ちゃんと土地の供養と、弟さんの供養をしたところ、あの青年があらわれることはなくなったそうです。
 
お母さんの病気に関しては、今度のことが関係はあるにはあるが、それがすべてではないということで、今だに病気は治っていません。

首へ伸ばされた手

今から7年程前の事です。
出張で、知名度の高いPホテル(池袋)に宿泊した時のことです。
私は気配がする...位を察する程度で、特に強い霊感等は持ってませんでした。
私が宿泊した部屋は913号室、
(ダブルベッドルームのシングルユースという形での宿泊でした)
隣室は先輩が宿泊する部屋でした。

チェックインを済ませてドアを開けた瞬間です。
今まで感じたことのない妙な感覚がしました。
それでも気のせいだろうと特に深く考える事はありませんでした。
しかし、夜のことです。

やっと寝付けた時でした。
男の人がすーっと部屋に入ってきました。
それも、私は目を閉じて眠っているのに見えるのです。

男の人は日本人では無いようでした。
そして、ベッドの端に、それも入り口が見えないように背を向けて
眠っている私の背後にきてそこから顔を覗き込んだかと思うと、
今度は私の前面に回り込んできたのです。

と、いきなり、
首を絞めるように手を伸ばしてきたのです。
その形相はとても恐ろしいものでした。
恐怖のあまり目を覚まして起き上がると、彼は消えてました。
あまりの恐しさに、先輩に電話をかけて助けを求めようとしましたが、
電話は枕元から離れた所、しかも鏡の前だった為できませんでした。


朝、朝食をとるために迎えにきた先輩は、
私の顔を見るなり驚きの声をあげました。
先輩には朝食をとりながら昨夜の出来事を話しました。

Pホテルには連泊でした。その日の社用を終え、会社にいる霊感の強い先輩に
前夜の出来事を話すと、先輩は対処法を教えてくれました。
その指示に従ったところ、雰囲気は相変わらずでしたが
前夜よりは落ち着いていられる事ができました。

そして0時をまわったころです。
先輩の部屋との間の壁が強くドーンと叩かれる音がしたのです。
かなりびっくりしましたが、先輩が悪戯でもしたのかもと思い、なんとか眠りました。

しかし、翌朝です。先輩が私に

「おまえ、昨夜何で壁をノックしてたんだ?」

と聞くのです。
私はノックなどしてないと言い、

「先輩に壁を叩いた?」

と聞きました。先輩はしてないといいました。

ぞっとしました。


私の周囲には霊感の強い人が何人かいるのですが、
その中で、数年前(だと思います)にPホテルを
訪れたことのあるという友人がいました。
彼はPホテルで霊の存在を感じたそうです。

彼は強い霊を感じたと同時に、そこで会った少女の霊(彼女は強くない霊)から、
ある部屋で人が亡くなって、その人が霊となって部屋に住み着いている
と聞いたそうです。
なんで亡くなったかまでは解らなかったそうですが。
そして、そのある部屋というのが私が宿泊した部屋でした。

その霊はかなり強いもので私の場合は守護霊が強かった事,
先輩から聞いた対処法を実行した事によって取り憑かれずに済んだということです。
そして、霊が絞めようとしていたのは私の首ではなく、私の守護霊の首だそうです。
友人曰く、取り憑く執着心の強い霊は
(取り憑こうとしている人間の)守護霊が強く、憑く事ができないとなった場合、
守護霊を弱まらせて自分が憑けるようにするために(守護霊を)攻撃するのだそうです。
恐らく、その部屋は、今は封鎖している状態のはずだと、
その友人は言っていました。


あれからだいぶ時間は経っているのですが、
ふとした時によみがえる恐怖感等々、未だに消えません。

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