《膝枕》
「ねぇ、ヒノエくん。何か欲しいものない?」
望美は現代のヒノエの家で二人静かに過ごしていた時、隣にいるヒノエに問いかけた。
「いきなりどうしたんだい?」
ヒノエは読んでいた雑誌を降ろし、望美に問いかけた。
「今日ね、ヒノエくんの誕生日なの」
「誕生日・・・あぁ、お前の世界で生まれた日を祝う日・・・・だったっけ?」
「そう、その誕生日にはその人に贈り物をする習慣があるの」
望美はそう言いながら考える素振りをした。
「でも、私は料理も出来ないし、器用でもないし・・・自分で用意するより、本人から欲しいものを聞いた方が良いかな?って」
ヒノエは望美の言葉に、ふっと笑った。
「オレは何もいらないよ」
「えっ・・・・もしかしてあげるのが私だから・・・?」
望美はヒノエの一言でどんどん悪い方向へと考えを浮かべていった。
「違うよ、もう貰う必要がないってだけ」
ヒノエは望美に近づき、頬に手を添えた。
「オレはここに来てから熊野も望美も手に入れた。だから、それだけで良いんだよ」
「・・・・そんなのズルいよ」
「え?」
「私ね、自分で用意してヒノエくんに渡して、喜んでもらいたかったの」
望美は少し寂しそうな顔をした。
「でも、そんな事を言われちゃったら何も用意出来ないじゃない」
ヒノエはどうしたものかと考え、そしてにっこりと笑った。
「それじゃあ、姫君にしか出来ない事をしてもらおうかな」
「え?」
望美は顔を上げ、嬉しそうに笑った。
「何すれば良い?」
「じゃあまずは、膝枕をしてくれるかい?次は一緒に昼ご飯を作って、そのあとは・・・」
「ちょ、ちょっと待って!」
望美はヒノエの話しを遮り、大きめに声を出した。
「そ、そんなので良いの?」
「充分。オレとしては望美といろいろな思い出が欲しいんだからさ」
「・・・・」
「それとも、望美はもっと凄いものをくれるのかい?」
ヒノエの妖しい笑みに望美は顔を赤くさせた。
「もう、ヒノエくんのバカ!」
「仕方ない、それは別の時に期待するか」
「もう・・・ほら、どうぞ」
望美は姿勢を変え、自分の足をポンポンと叩いた。
「ありがとう、望美」
ヒノエは嬉しそうに望美の膝に頭を乗せた。
望美はヒノエの髪を優しく撫ではじめた。
「ヒノエくん」
「ん?」
「お誕生日おめでとう」
「あぁ」
ヒノエは目を閉じ、しばらくすると寝息をたてはじめた。
お互いの表情には優しい笑みが浮かぶばかりだった。
ヒノエくん誕生日おめでとう!
天朱雀の中では一番好きですv