さあぁぁ,と風は髪を弄ぶ。
隣の少女はサンディブラウンの彩りを持つ軽やかな髪を若草に広げ,正しく少女のように眠っていた。
「綱吉,翼が欲しくないか」
無論,返答は存在しないし求めていない。
多分,彼女は酷いほど純粋で,穢れを一握りも知らないだろうから,淀みの無い潔白な,それこそ四大天使のような翼を持つことができる。
反面自分は装飾を加えても,結局は目の眩む白さ,洗練された鮮烈の白は与えられない。
きっと。
「堕天使がお似合いだろうがな」
嘲笑う,そしてどこまでも嫌悪感が付き纏う。
さあぁぁ,髪は闇のような漆黒すぎる色。
性質上,堕天使ならば,髪色だけでも明るく在りたかった。
「Don il vongola」
親愛なるドン・ボンゴレ。
(貴女に愛を,捧げましょう)
彼女が掌握するのは空。
寧ろ太陽を司るのかもしれない。
戯れにシーツに溺れることも在った。
しかし生産的ではない摂理は変わらないから退廃的,最終的には嫌悪に帰着する。
「嫌いだ,お前なんか」
結局は自我に対する感情である。
「いなくなっちまえば善かったのに」
昔から陳腐な言葉は嫌いだった。
「堕ちる気は無いか」
彼女には可能性が無限大に広がっている。
其れはきっと後悔を導くかもしれないが,
それでも。
「…そこまで酷くは無ぇ」
共に,彼方へ。