ただ一人になりたくて
ただ自分を取り戻したくて



車のガソリンを満タンにするついでに
鶏肉と卵の挟まったパンと
はちみつの入ったコーヒーを買った

真っ直ぐな川沿いの土手を
太陽の方へ向かって走る

視界には空と前へ進む道だけ。

陽に照らされて
白く縁取られた青い雲が
空を埋め尽くしている
薄暗いのに
少し濡れたコンクリートが
隙間から漏れた光を反射して
お天気雨の日のように
キラキラと世界を照らしていた

時折舞う風花が
外の寒さと風の強さを語るけれど
音楽と暖かさとコーヒーの香りに満たされた
この車内では異国の映像のようで。

誰も受け入れず
風さえも拒んで
小さな小さな空間に
閉じこもった

救いがあるとするならば
このどうしようもない逃避行の終点が
どこでもない海だということ。

ただ、それだけ。