絶望は親しげな顔をして私に寄り添ってくる。心地良い絶望の海に浸かって私はぼんやりと辺りを見渡す。自分の存在価値なんて、疑い始めたらもう切りがない。ゼロに辿り着くまで、ありとあらゆる可能性を否定するしか道はないのだ。

朝の駅のホームで誰かの名前が呼ばれる。私はそれについて少しいいな、と思う。誰かに探してもらえるのはいいな、と思う。外で独りぼっちで立っている心許なさを払拭してくれるような気がする。

今日はまるで季節感のない月曜日で、遠くから近くから聞こえる蝉の声もまるで抑揚がない。風は冷たくて、今にも雨の降りだしそうな空はのっぺりと均一に灰色である。背骨を伝う汗が一筋、尾テイ骨へ滑り落ちていく。

ああ、私はこの私だけの絶望を形にしたいよ。生きた証を残したいよ。

虚無感