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扇風機を回しながら、冷えた肌を掛け布団に滑り込ませる。




修学旅行で初めて東京へ来たとき、寝付けなくて夜中の音楽番組をぼんやり見てた。

何もかもが怖かった高校生のわたし。

東京タワーの階段を駆け降りる、視界に朱色がきらきら眩しくて、スカートの裾が傷痕に擦れても痛くなかった。






あのね、ほんとうはずっとさみしかったんだよ。

それで泣いてたんだよ。

誰かに赦してもらわなきゃって思ってた。

誰にも理解してもらえないって思ってた。

それでもあの人がいたから、その姿を見るだけで呼吸できた。











あなたに名前をつけたのは誰?


わたしは自分の名前も忘れてしまいそうです。


大人の振りしても悲しいだけね、もうことばが見つからないよ。



膨れあがった身体をかくさなきゃ、虹色の傷痕を潰さなきゃ、

ことばが見つからないんだよ、なにもないんだよ










泥の雨が降る泥の雨が降る


何も聞こえない

鼓膜が膨らんで羽虫の群れが耳を覆う


お前の言うことは全部嘘だって言う

傲慢で生意気で出来が悪くて使えなくて
なんにもしていないって言う

本当にそうなんだろうな

誰もいらないんだろうな

ほんとうの部分なんて誰も欲しがってなくて、綺麗なほんとうを準備するだけ


どこまで甘えてるの

誰にも必要とされてないのに

どこにも居場所なんてないのに



すこしずつ、ほんとにすこしずつだけど、笑えるようになって、誰かの親切を嬉しく思えるようになってたけど、
やっぱりだめなのかもしれない。



これから先、どれだけ頑張ってみても、ゆるされることなんてない気がしてる。

今まで周りの人にたくさん迷惑をかけてきて、それなのに誰かに認めて欲しい必要とされたいなんて思うのは無理な話だよ。








白い花のイヤリングも、優しい文字を包んだ手紙も、泥の雨でぐしゃぐしゃになってしまって、もうなんにもない






遠い遠い昔話になってしまったね。


ただのばかなこども、こまかく剥がれた肌はなにが触れても痛い。





どこへもゆきたくないの。

なににもなれると思えない。

わたしに与えられたちいさな赦したものたちは、確かにいたんだよ、いたんだよ、うそじゃない


うそじゃないのに






ガラスにぴたりと張り付いたものからわたしは逃げられない

迷えないけどだませない


誰も気づかないところにいるわ

誰もしらない

誰もしらない







幸せだよ。

毎日たくさん笑って、ふあんになることも、苛立つことも少ない。




なにをこわしたいの

この家に帰ってから、背骨に白い花が咲いているの。

胸を囲って、愉しいのか悲しいのか、みえなくする。


今朝の夢の続きをどこにかくした?

もう わかんないわね。













わかんないわかんない、って、やだなあこわい

息をひそめて、待ってるのはだれ?

どうか、かえしてね
みうしなったりしたくない









なんでもない人にかわってしまうの?
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