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完全版
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最初




 二日匯に滞在した後、三頭の馬を調達した。
 鮑舒は黒乕と対峙する為に。
 安葹は孟鐫を探して。
 桓虔は捨てたとは言え、故郷のある場所だから、と。
 三人は、西の洽へ向かう。


 出立の日は、雨だった。
 さらさらと静かに降る雨は、もう既に梅雨の物だ。
 本格的な梅雨を迎える前に、何とか洽州に入れる事を祈りながら、三人は匯西門をゆっくりと出た。
 街道は南西へと続き、烙斐(ラクイ)へと続いている。
 匯からは、馬で五日はかかるだろうか。
 烙斐は、都梗雅と、南の国昊とを結ぶ大きな街道のある街で、瓏国第二の都市でもある。
 その昔、今の王朝が樹立する前には、烙斐が都だった事もあり、町並みは梗雅と引けを取らない。
 烙斐から西に三日行くと梗雅があり、そこから洽への道則が長く、一月はかかる。
 都からの達しから一月程で州境は封鎖されるだろうから、急がねばならない。

「果たして、間に合うか?」

 桓虔が声を低めて言う。
 鮑舒もそれは断言出来ない。

「もし間に合わなくとも、蒼瑙を超えれば良い事です」

 安葹は鰾膠も無く言ってのけた。
 蒼瑙山脈を越える事は、並大抵の装備では難しいとされている。
 山々の標高が高い事もあるが、険しさは類を見ない。

「勿論、本気で山を登るつもりはありませんよ。州境間際の場所を通って行くつもりです」

 言いながら安葹はニッコリ微笑んだ。
 この男、何か考えがあるのだな。

「とにかく、今は急ぐ事にしましょう。穏便に州境を越す事が、第一の目標なのですから……」

 鮑舒は馬に鞭を揚げ、速度を上げた。



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やっぱり洽へ向かわせて……。
珂縹出したいけど、無理だわ。
後は本編を頑張ろう……。


話題:自作小説

同明相照、同類相求

完全版
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「有り難う御座いました」

 安葹は鮑舒が腰を下ろすと、すぐさま礼を言った。
 やはり尋ね人、か。

「なに、『同明相照らし、同類相求む』と申しましょう。私も同じような物ですからね……」

 鮑舒は溜息を吐きながら、自分の盃に水を注ぎ込んだ。
 追われている訳ではないが、国家に組する黒乕と対峙している以上、いつ同じ立場になるか解らない。
 そうなる前に……。

「安葹殿は、昂醒と言うお方に支えてらっしゃるのですね。もし、よろしければ……そのお方に会わせて頂けないでしょうか」

「孟鐫に……ですか? いや、私も今、彼の所在が解らないのです。しかし、手配書が出回っていると言う事は、まだ生きていると言う事。それが確認出来ただけでも幸いです」

 言って安葹は安堵の表情を浮かべた。
 この国で黒乕と対峙している部隊は、この昂醒なる男くらいだろう。出来れば会って話してみたかった。
 もし見込みがあるのなら、付いて行くのも悪くないだろうと思ったのだが。

「残念ですね……ですが、彼らよりも早く探し出せる事を祈っていますよ。会ってみたいお方だ」




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今頃孟鐫は洽で……。
その後総攻撃で……。
澆へ……。
……ま、なるようになるさ。



話題:創作小説

昊の酒

完全版
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「そこの、お前達!」

 ドラ声士卒が鮑舒と安葹を見付け、声を上げた。
 鮑舒が先にぱっと立ち上がり、士卒と応対を始める。こう言った場面には慣れている。

「兵士さん。何か、私達に御用でしょうか?」

 にこやかな笑顔を見せながら、鮑舒は答えた。ヒゲ達磨士卒は鮑舒より背が低い。

「情報では、昂醒一味に外国人がいるとの事でな……貴様、怪しいぞ」

 まぁ、なんと実直なんだろうか、と鮑舒は内心苦笑した。
 ここで「そうですよ」などと答える馬鹿がいるものか。

「いえ、滅相もありません。私達は昊から来た、ただの行商人です。……そうです」

 鮑舒は腰の小物入れから小さな小瓶を取り出した。

「昊の酒です。見本として持ち歩いている物なのですが、一本どうぞ」

 そう言いながら士卒に小瓶を握らせる。
 昊の酒は強く、味が良い事で有名で、中々入手しにくい一品である。
 案の定士卒は一瞬顔を綻ばせ、酒瓶を懐にしまい込む。

「うむ……今は世情が安定せん。早く昊へ帰ったほうがよさそうだぞ」

「お心づかい、痛み入ります。旅仕度が調い次第、南へ旅立とうと思っておりますので、それまではこの町に御厄介になると思います……」

 「大人しくしていろよ」と言いながら、士卒は踵を返し、入口へと歩いて行った。
 物分かりの良い男で助かったと鮑舒は安堵し、自分の席へと座り直した。




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お酒=賄賂
あまり煩い事言わないで下さいなって感じですか。
お金=賄賂だと明らかに「私が一味の人間です」って言ってるような感じだから、お酒で。




話題:自作小説

反逆の者、その名は

完全版
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 手頃な茶屋の、人気がなさそうな場所に陣取り、鮑舒と安葹は声を潜めて言葉を交わし始めた。

「私は今まで堰にいました……どう言う事か、お解りになられますな」

 安葹は言葉を濁す。
 都は遥か。とは言え、ここは歴とした角孔一派の勢力圏内。
 彼等に対して、あまり悪い事が言えないような状況下である。
 安葹が言いたいのは、虎乕と対峙して来た、と言う事だろう。

「そうですか……命が助かって良かった」

 途中の村の様子を思い浮かべ、命が助かったのは奇跡的だと思えた。
 だが安葹は首を振る。

「私の命など、二の次なのです。それよりも――」

 どたばたと、品の無い足音が店の入口から響き、安葹の話は中断した。
 鮑舒は衝立から顔を覗かせ、普通の客を気取りながら様子を見遣る。

「梗雅からのお達しである! 反逆者、昂醒(コウセイ)の首に、金五百万の懸賞をかける――」

 その大きなドラ声が店内に響き渡ると、鮑舒の隣で安葹が息を飲んだ。
 昂醒……何処かで聞いた名だが、何処だったか。

「――なお堰の史穿、及びその息子灯は、反逆に手を貸した罪で死罪となった。そして洽の史煉殿にも同じ疑いがかけられている為、近々州境を閉鎖するとの事――」

 確か、史穿殿は虎乕一味に攻められた時に戦死したとか……。
 ドラ声士卒の読み上げる書類の内容に、鮑舒は度々首を傾げた。
 堰、史穿殿、反逆者昂醒……。

「……そうか。安葹殿は――」




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二月ももう終わりですねぇ……。
今月はよく更新出来たなぁ……。
この気まぐれ更新も、よく続いたなぁと思っておりますが、いっそこっちから話を持っていこうかとも思っていたり。

これから如何しようかなー。



話題:創作小説

西から来た男

完全版
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「黒乕か……雇ってもらうなら、俺も奴らに対抗する部隊が理想かも知れん……」

 桓虔は言いながら酒を啜る。
 こんな若者を、負けると解っているような部隊に関わらせたくは無いと、鮑舒は笑みを浮かべながらも内心そう思った。


 一夜明け、鮑舒は桓虔と別行動をとり、黒乕についての情報を集める為、匯の町中へと歩み出る。
 町は朝市などが開かれる所為だろうか、早くから活気に溢れていた。
 だが、何処となく暗い影が纏わり付いているのは何故だろう。
 すうっと空気を肺に吸い込むと、まだ爽やかな冷たさがある。

「あれ? 鮑舒殿ではありませんか」

 背後から、何処かで聞き覚えのある男の声で呼び止められた。
 瓏の言葉ではあるが、鮑舒とは少し違う訛りがある。

「これは安葹(アンシ)殿。奇遇ですな……」

 振り返ると、褐色の髪の蒼い瞳の男がにこやかに微笑み、鮑舒に手を降っていた。
 確か淕懿(リクイ)と言う名前の男で、字を安葹と言うのだ。
 この国に来て初めて出会った男で、やはり鮑舒と同じようにこの国の人間ではないらしい。
 それなのにこの男は瓏の為に働いていると言っていた。

「確か鮑舒殿は黒乕なる部隊を追い掛けていらっしゃるのでしたな……」

 何故だか安葹は表情を曇らせて話を切り出す。



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リンクをさらに深めてみたりした。
安葹と珂縹は気に入ってるから、出してみたいなーなんて……。


話題:創作小説

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