その日の夜、次の日は学校を休んでいいと母者から言われ、俺らは複雑な気持ちで自室にいた
大きくなってなお使わされてる子供用の勉強デスクが並ぶ部屋、今も昔も散らかってる方の机は兄者のだ
泣き疲れた子供の俺はぼんやりと2段ベッドの下段のふちに座っていた
( ´_ゝ`)「…弟者」
(´<_` )「……兄者…」
(; _ゝ )「一緒に、寝ても、いい?」
(´<_` )「……」
(;´_ゝ`)「やっぱり、だめ?」
(´<_` )「ううん、俺も兄者にそう言おうと思ってたとこだ」
一人だと、思い出してしまいそうで
( ´_ゝ`)「おぉ…これが下段か…」
(´<_` )「下段がいいなら代わってやるよ」
( ´_ゝ`)「なわけあるか」
上段に寝るのは兄者で、俺は下段だった
2段ベッドを買ったその日にじゃんけんをして負けたからだ
小学生だったので別に片方で二人で寝ても十分な広さはあった
( ´_ゝ`)「……弟者」
(´<_` )「ん?」
( ´_ゝ`)「いつか、俺も死ぬのかな?」
(´<_` )「!」
( ´_ゝ`)「弟者も、死ぬのかな?」
( _ゝ )「母者も、父者も、姉者も…妹者も…」
身近な死を目の当たりにしたせいだろう
俺も兄者も、死が怖かった
今まで死は、親戚のお葬式とかでも見てきたが、普段会わない親戚が死んだと言われてもピンとこなかった
でも、あんなに可愛がっていた子犬が、もう二度と、会えない
あのふわふわな毛並みに、つぶらな瞳に、よく揺れる尻尾に、会えない
自分も、寝てる間に死んでしまうんじゃないかという恐怖
それを兄者も抱えていた
あぁ、そうだった、確かにこの人は俺の兄だ
でも、俺らは双子で、僅かな時間しか違わないのだ
それなのに、兄は強いんだなんて思って、頼ってばかりで、俺は馬鹿だった
弱っている兄者をすぐ支えられるのは一番近くにいる俺なのに
(´<_` )「俺は、兄者を置いて死んだりしないよ」
( ´_ゝ`)「!」
(´<_` )「俺ら、双子だろ?いつも一緒に決まってるだろ」
(´<_` )「兄者は俺を置いて死ぬ?」
( ´_ゝ`)「いや…」
(´<_` )「ならいいだろ、俺らはずっと一緒だ」
( ´_ゝ`)「うん…」
(´<_` )「おやすみ」
( ´_ゝ`)「…おやすみ」
(-<_- )
( -_ゝ-)
(-<_- )
( -_ゝ`)
( ´_ゝ`)「弟者、ありがとうな」
( -_ゝ-)
その夜はいつもよりぐっすり寝れたっけ
子犬の墓には今も二人で墓参りに行っている
俺らが子犬を飼ってた神社にある、でかい桜の木が一番綺麗に見渡せる場所
モナー先生はなかなかいいところを選んでくれたと思う
春にはあたり一面桃色にそまるその場所
いや、今はまだ冬だから見れないのだが
大学生と言う名の半ニート生活を過ごしている兄者がやっと椅子から立ち上がった
正直、甘やかしすぎたと反省も後悔もしている
( ´_ゝ`)「弟者、そろそろ行くぞ」
(´<_` )「ん、わかった」
( ´_ゝ`)「今日は寒いぞ、ファミチキを買って行こうか」
(´<_` )「うむ、俺もちょうどファミチキが食いたかったとこだ」
コートと、妹者が姉者に習いながら編んでくれたちょっと歪なお揃いのマフラーをして外へ出かける
ファミマに寄ってファミチキを買い、食べずに暖をとりながら歩く
くだらない話をしながら神社への道のりを歩く
ゆっくりと石段を上り、しっかりと作られてて未だ健在な鳥居をくぐり
今や見る影もないほどにボロボロになってる社を横目に桜の木のほうへ歩く
( ´_ゝ`)「おぉ、寒い寒い…缶コーヒーも買ってくれば良かったな」
(´<_` )「そんな金が兄者にあるのか?そのファミチキは誰の金で買ったんだっけか」
(;´_ゝ`)「うぐ…」
新作のエロゲを買って一文なしの兄者は言葉を詰まらせる
傍にあるベンチ(こっそり俺らが持ち込んだものだ)に腰掛け、ファミチキを取り出す
ふと視界に小さな白
(´<_` )「雪…?」
(*´_ゝ`)「おぉ、今年の初雪だな!」
(´<_` )「だな」
(*´_ゝ`)「まるで桜の花びらみたいだ」
(´<_` )「……」
白くちらちらと舞うように落ちる様はまさに桜のそれに似ていた
兄者もロマンチックなことを言えるんだなと笑うとムキになってくる俺の双子の兄
どこかで、子犬の鳴き声が聞こえた気がした
あぁ子犬、お前には色々大切なものを貰ったよ、ありがとうな
あまり長く生かせてやれなくて、すまんかった
だが、お前と過ごしたあの時間は今でも俺らの宝物だ
お前が生まれ変わって、俺らのことを忘れていたとしても、俺らはお前のことを忘れないよ
(´<_` )「なんて…ちょっとくさかったかな…ん?」
(´<_`;)「あれ?兄者?」
( ´_ゝ`)「おーい弟者!」
(´<_`;)「どこに行って……マテ、兄者、その手にあるのは…」
( ´_ゝ`)「そこで震えてたんだ……さすがに雪の中は可哀想だろ?」
(´<_`;)「空耳じゃなく現実かよ…」
兄者に抱えられている子犬は確かに寒そうで、俺らは今日は早めに切り上げて子犬を連れて帰ることにした
もちろん、母者に叱られるのは覚悟のうえでだ
おしまい