蒼海はまさか和音が陸上部に入るとは思っても見なかった。
「てか、尚之。どういう経緯で風間さんを誘ったんだ?」
「陸上部一緒にやらない?って誘ったら、普通にOKしてくれたんだ。こっちも意外だったよ。」
「なるほどね。そういえば昨日、中学の時の話をちょっとだけしたけど、部活やってたかは聞かなかったな。」
「もしかしたら、中学の時、陸上部入ってたんじゃない?」
「んー、そうかも知れないな。」
色々推測を話してる内に、二人はお昼を食べ終えた。昼休みの時間もまだかなり残っていたので、二人は教室から出て、校内探検をすることになった。
高校生活二日目。蒼海は昨日と同じ時間に学校に着いた。
登校時は、偶然一緒になった尚之と一緒に、これから陸上部をどう作って行くかを話してながら学校に向かった。
二日目は午前中は学校の施設や教室の場所などを見学した。
そして、昼休みになり、蒼海と尚之はベランダで一緒にお昼を食べることにした。
「なぁ、尚之?」
「うん、どうした?」
「結局、昨日からまだ入ってくれる人はいないんだろ?」
蒼海はまだだろうと思い聞いてみた。
「いや、一人は見つかったよ。」
「え、マジで!?早くない!?」
「うん、さっき声かけて見たら、いいよって言われた。」
「え、え、誰なの?」
「あぁ、なんなら呼ぼうか?」
「まぁ、これから一緒にやってくんだから、早く会ってみたいね。」
「OK!おぉ〜い、風間さん!」
風間という名前を聞いた時、蒼海はどこかど聞いたことがあるような気がした。
「ん?風間?」
「はいは〜い。」
……もしかして、もしかしちゃったりする?
「私のこと呼んだ?」
二人の前にやって来たのは、昨日蒼海が可愛いと思った風間和音だった。
「も、もしかして今日見つけた部員って……」
「そうだよ、風間和音さん。」
グッジョブ!!
「あら、あんたも陸上部に入るの?」
和音は首を傾げながら蒼海に聞いた。
「え、あぁ、オレ!?」
あまりの出来事に蒼海は驚きを隠せなかった。
「そうよ、あんたよ。」
やっぱり口調はキツイなぁ。
「う、うん。まぁ二人目の部員ってとこかな。」
「ふ〜ん……じゃあ、これからよろしくね。」
和音は笑みを浮かべながら、蒼海に言った。
「こ、こちらこそ、よろしく!」
「じゃあ、私はまだご飯食べてる途中だから。」
「う、うん。」
そう言うと和音は自分の席に戻っていった。
「……尚之……。」
「ん、何だい?」
「……お前が友達になってくれて誇りに思うよ。」
「???」
「ただいまぁ〜。」
蒼海が家に着いたのは3時を回ったぐらい。
「にゃ〜。」
「お〜、カイ、ジル、ただいま。」
蒼海を最初に出迎えてくれたのは二匹の猫だった。
カイはシルバーのチンチラ猫で目がグリーン。ジルは雑種だが、ホワイトタイガーっぽい毛並みをしている。ちなみ両方オスだ。
この二匹は家族の誰かが帰ってくると、必ず最初に二匹で出迎えてくれる。
オスではあるが、とても人懐っこい性格をしている。
「お前らはホントにいい子だな。」
蒼海は二匹の頭を撫でると、二匹と一緒に自室に入って行った。
「ふぁ〜、疲れた!」
勢い良くボフンとベッドに倒れ込み、そのまま仰向けになり、天井を見上げた。
『まさか高校生活初日から陸上部を作ることになるとはなぁ。でも、なかなか楽しくなってきた。』
頭の中でこれからのことを楽しみにしながら、二匹の猫と一緒に昼寝をすることにした。
こうして、蒼海の高校生活初日は終わった。
「な、なぁ尚之さん?マジで陸上部を一から作るんですか……?」
蒼海はもう一度確認の為に聞いてみた。
「うん?マジもマジだけど?」
わぁお、こりゃ大真面目みたいだな。
「さいですか…。つか、例え作ったとしても、部員は俺たちだけだろ?それって部として認められるのか?」
「いや、先生の話によると、最低でも五人は必要らしいんだよね。」
「五人って…。後の三人はどうするんだよ?」
「三人ぐらいすぐ見つけられるさ!」
尚之はオレに任せろと言わんばかりの顔で言ってきた。
その顔は、自信たっぷりのドヤ顔だったが、何故かな。
尚之の顔を見たら、なんとなくだが、自分も陸上部を作ろうって気になってきた。
そして、蒼海達はいつの間にか駅に着いていた。
定期券を改札にかざし、二人はホームの一番先まで歩いていった。
『なぁ、蒼海。なんでお前は陸上部入ろうと思ったんだ?』
『んん?まぁ、他の部活にも興味ないし、なんとなく……かな?後は、走るのが好きだからっていのもあるな。』
『ふーん、なるほどね。まぁ、なんにせよ、これからよろしくな☆』
『へいへい。よろしくな。』
二人は拳を互いに突き合わせた。
そこに、帰りの電車が到着し、二人は乗り込んだ。
二人は途中の灰島駅で別々の路線に乗り換えるので、そこで別れた。
「マジで!?本当に!?」
「あぁ、俺は構わないよ。」
「よっしゃぁ!!じゃあ、一緒に陸上部を一から作ろうぜ!!」
「そうだな、一から・・・ん?ちょっと待てちょっと待て?今、一からとか言わなかったか?」
学校から駅までの距離を、丁度半分位来たところで、蒼海の足がピタリと止まった。
「うん、言ったよ?それがどうかした?」
「一からって言葉がどうも引っ掛かってね・・・ま、まさか・・・」
「いやね、暇な時間に先生に陸上部のこと聞いてみたら、何でも今年の三月で三年生が卒業して、部員が0何だってさ。」
尚之はケロッとした顔で、さらっと答えた。
「な・・・何ですとおぉぉぉぉぉぉぉぉおおお!!!」
「あ、ちなみに廃部寸前らしいよ。」
「更に何ですとぉおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉおおぉぉぉおぉぉぉおぉぉ!!!!!!!」
「あ、後顧問の先生も今年転任して居ないらしい。」
「もう驚くの面倒くせぇぇぇぇぇえええぇぇぇぇぇぇええぇぇぇぇっぇぇ!!!!!!!!!」
蒼海はもう驚くことしかできず、ただ立ち尽くした。
「どうした、タミー?なんか漫画っぽく体が真っ白になってるぞ?」
「へ?あいや、あまりのツッコミ所三連コンボに必死になって・・・」
尚之は首を傾げ、再び駅に向かって歩き出した。