「ど、どきどきする俺」
「ばか、これからだぞ!」
「そうか、そ、そうだよな!」
「大丈夫!帝は今『学園天国』でノリにノッてる筈だ!」
ざわざわと落ち着きのないここは、特設ステージ裏舞台。
肝っ玉のちっちぇえボンクラ達は、お披露目直前で縮こまりまくり。
「あそこが?…ぷっ。」
くだんない下ネタに、一人で思わず噴き出した。
やべ、今のちょっとおもろ過ぎる。
(別にそこまでじゃない)
「師匠!ろーらーすけーと準備万端です!」
「おーし、オケオケーイ。」
何とか間に合ったローラースケート(もどき)を皆に配り終わったミッチェルが、妙に華麗なローラーさばきであたしに駆け寄る。
お前、密かに練習したな。
「おーし皆の者!これからはあんた達が花形だ!巨人の星に負けないくらい、ホームランかっ飛ばして輝いてこいよ!」
「うおおおおお!」
すでにゲンジとは程遠い雄叫びが上がったとき、ステージの照明が落とされた。
(蝋燭が消されただけ)
『……♪壊れやすーいーもーのばかーりー♪』
「きゃあああああっ!」
敢えてスローなテンポで始まるガラスの十代に合わせ、一つ、二つと灯っていく明かりと共に。
何故か上がった黄色い声と。
ぱあんっ。
ぱん、ぱあんっ。
「…花火まで上げますか。」
「ふふん、あたしをナメてもらっちゃあ困るよ、君。」
上がった花火に感嘆した裏方に、鼻を鳴らして胸を張るあたし。
ぐーるぐーるとステージを暴れまくるとんちんかんなボンクラ共を嘲笑いながら(酷い)、悪代官さながらに高笑いをしてやった。
「一番の功労者はあ た し!一番輝いてるのもあ た し!」
「なかなかの悪よのう、お主。」
「ふ、そこんとこわかっちゃってるあんたもね。」
奴等の晴舞台そっちのけで密かに黒子と絆するあたし。
「あ、ミッチェルが転んだ。」
「ひいいいい!坂田のご子息様が、は、鼻血を…!」
最前列でうちわを振らされていた紫が叫んだと同時に、こっちを見てからまた叫びだす。
うっせえ女だな、マジで。
(とにかく酷い)
「あひいいい!こまち殿、どなたと肩を組んでらっしゃるかわかっておりますか!?」
「はー?黒子そのいちでしょ?」
だってこいつ、黒子のカッコしてるし。
とか、あはあはミッチェルの無様さに笑いつつ返したら。
「その御方は、帝のお付き頭の方ですよ!」
「あ、初めましてこまち殿。」
「あ、そうなん?ちーッス。」
「軽っ、軽過ぎですよ!」
紫が泡噴くんじゃねえかってくらいに、大憤慨してるのにまた大爆笑して。
「帝もきっと、今回の生誕式典に大満足なことでしょう。どうですかこまち殿、今度、帝とお会いになられては?」
「マジでーいいよー。」
うやむやに終わった生誕式典を足掛かりに、あたしはどうやら、大船にうっかり乗っかってたりした。
あたし、マジやるじゃん!
/続く。
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久しぶりに更新したら、
ひっちゃかめっちゃかになりました(笑)
取り敢えず、
全く
紫に敬意とか表してたりしません(・∀・)
帝生誕式典当日。
会場内は和やかながらも厳かに、琴の音色が雅やかに流れる中、風流に和歌が詠み交わされ……
て、いる訳ではなかった。
「皆ーノッてるかーい!?」
「イェ──────イッ!!!!!」
「Hey!」
「ヘイ!」
「Hey!」
「ヘイ!」
「Hey!」
「ヘイ!」
「Hey!」
「ヘイ!」
「「He──────y!」」
♪あいつもこいつもドイツ人ー
あの子ーをー
狙っているんだよー♪
若干の間違った歌詞に乗せて、学園天国がノリノリで流れる。
いいね、あいつらわかってんね!
掴んでる!
キョンキョンを掴んでるよ!
只今、出し物真っ最中。
キョンキョンを歌うは、我が数学塾に通うボンクラ共のオヤジ達。
(こまちに感化された)
あーおっかしー。
こいつらマジ、ノータリンでしょ。
そんなことを思ってげらげら大爆笑してれば、いつの間にきたのか、ミッチェルが隣で鼻息を荒くしていた。
「流石ですね、師匠!」
「そーお?」
「はいっ、こんなに盛り上がった生誕式典は初めてですよ!」
そりゃまあね、平安だしね。
まさか、キョンキョンの歌でうちわ片手に盛り上がるとは、誰も思わんわな。
どうでもいいけど、この空気で誰かしら帝を祝ったりしてんの?
…絶対ないだろ。
「で、帝とやらは?」
「はいっ、あそこに!」
ミッチェルが指差した先。
「イェ───────!大臣サイコー!!!!!」
最前列で踊り狂うノリノリな帝と、
「あああああっ、帝、そのような真似はおやめください!」
縋るように泣きながら頼み込む、けど、頭には『LOVE★キョンキョン』と書かれたはちまきをほぼ強制的に巻かされた紫が、そこにはいた。
「『乱れゆく この世を憂いて バカを見る』」
「おおっ、和歌ですか師匠!」
「うーん…標語?」
「標語かあ!やっぱり師匠は一味違いますね!」
バカを見てんのはお前もな。
そうは口にしなかった。
/続く。
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割りとサバけた感じの平安京。
紫以外の人は
どうやら、
新しいものに
抵抗とかはないみたいです。
帝生誕式典、
まだまだ続きます(・∀・)
♪リーラーの咲ーくー頃ー
バールセロナへー
WowWowWowWow
きっとー×3ー♪
♪壊れやすーいーもーのばかーりー
あーつめてーしーまーうよー
輝きはーかーざーりじゃなーいー
ガーラスのー10代ー♪
「はい、ストーップ!そこ、リンダ!テノール外れてるから気をつけて!」
「ソーリー、ミス・こまち!」
今日の数学塾、
皆でゲンジってます。
何か?
帝の誕生会あるとかで?
あたし、知らないうちに出し物(?)担当になってたらしいから?
ゲンジメドレーをプレゼントフォー帝!
みーたーいーなー?
(数学塾皆で合唱)
ソロで『少女A』振りつきでもよかったんだけどね。
せっかくだから、紫に敬意を表して的な?
(もう意味不明)
「ミッチェル!頼んどいたローラースケートはまだ出来ないみたい?」
ミッチェルの知り合いに、自称発明家がいるらしい。
だから、ローラースケートをイラストに描いて、そいつに頼んでみたあたし。
まあ、たぶん木製だろうけどね。
「はい、どうやら"ろーらー"部分の制作が難航してるらしくて。」
「ふーん…。三日以内に仕上げるよう伝えといて。でないと…」
「鼻フックですか!?」
ざわっ。
鼻フックにざわめく一同。
(彼等にはかなり衝撃だったらしい)
「プラスで千年殺し(※ナ
ト参照)もやるっつっといて。」
「せ、千年殺し!?」
ニューな技の登場に、またもざわめく貴族ご子息ご一行。
お前らほんとに貴族か。
メンタル的に弱過ぎる奴等に、少しだけ、平安京の未来を憂いた。
(余計なお世話)
「ほらほら、練習やるよ!そこ、カーくん役のあんた!フォーメーション崩さないで!」
ぱんぱんっと手を叩いて、あたしはまた、練習に熱意を注いだ。
「ああ、こまち殿は今度は何を…」
「どうやら、帝の誕生会で出し物をやるそうですよ。」
「出し物!?わたくしは聞いていませんよ!?」
「はあ…なんでも紫様に敬意を表して、『ゲンジメドレー』とかをおやりになるそうで…。」
「源氏雌鳥(めんどり)!!???」
「いえ、『ゲンジメドレー』です、紫様。」
「源氏雌鳥…わたくし、不安です…。」
紫がお付きの者とそんな会話をしながら、不安げに見ていたことなんて。
あたしはもちろん、全くもって、知ったこっちゃなかった。
「ああ…不安ですわ…。」
帝の誕生会まで、後一週間。
/続く。
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間違いなく、
紫の予感は的中でしょう。
キリっぺが
楽しみにしてくれてるらしいので、
更新してみたり(・∀・)
『千年殺し』は
カ
シ先生が
ナ
トにやった必殺技です。
「よいですかこまち殿、二度とあのようなことをなさってはなりません。」
「…うぜー。」
「こまち殿、"うぜえ"とは一体…?」
「"ブルータス、お前もか!"ってこと。(適当)」
「ぶるうたす…?」
こないだのパチンコ命中以来、いちいちいちいち紫がうっさいのなんの。
どうやら、ミッチェルがパクられてゲロったらしいけど。
あいつ、根性ないな。
「これだからボンボンはなー。」
「こまち殿…聞いておりますか?」
パチンコ取り上げくらってから、微妙に軟禁状態だし。
(聞いてない)
「人様をあのような危険物で狙うなど…うんたらかんたら。」
まあ、よくよく考えたらあたしは怪しい奴には間違いない訳で。
(やっぱり聞いてない)
「だいたい、坂田のご子息殿と言えば…あーだこーだ。」
確かに、紫はあたしによくしてくれてるとは思うけど。
(もう全く聞いてない)
「顔に墨を飛ばすなど、もってのほかでして…ぴーちくぱーちく」
そういえば。
紫って"あの"紫式部なのか?
源氏物語の?
マザコンかと思えば、ロリコン疑惑も浮上しちゃってたりするあれを書いた?
「…こまち殿、聞いていらっしゃいます?」
「紫。」
「…何でしょう?」
真剣に紫を見詰めたあたしに、紫が、怪訝な顔で首を傾げる。
博識、上流階級、温厚、無駄に親切(?)。
そんな言葉が、紫には確かに似合うのかもしれないけれど。
取り敢えずは。
「…あんた意外と、アキバ系なんだね。」
アキバ系がわからなかったのか、相変わらず首を傾げたままの紫に、続け様にこう言った。
「源氏物語。」
「な、なななっ、な、何故それを…!?」
かーっと真っ赤になった紫に、あれまだ公表してなかったのかと確信した。
ふーん…。
「光源氏ねえ…。」
「ひいいいいっ!な、内密に!内密になさってくださいませ!」
おたおたと真っ赤なままに慌てる紫は、たぶん、あたしがにやりと笑ったことなど。
絶対、気づいてないんだと思った。
源氏物語か。
どっかに、カーくん(そういう年代)でも登場させてみるかなー。
「こまち殿!聞いてらっしゃるのですか!?」
「よーうっこっそーここへー♪」
「こまち殿!あっ、どちらへ!?」
真っ赤になったアキバ系貴族を置いて、懐かしソングを口ずさみながら、あたしはご機嫌でそこを後にした。
ミッチェル脅して、今度はローラースケートだな!
「…ああ…わたくしの源氏物語が危ない…!」
(ちょっと動向を把握しつつある紫)
/続く。
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人の話を聞かないこまちさんは、
二十代後半です。
そのくらいの年代でないと
このネタが
わからないかもΣ(・∀・)
本日、快晴なり。
「つまんねえなあ。」
そう、あたしはすこぶるつまらなかった。
今日は塾もお休み。
(自分の都合で勝手に休みにする)
だから、やることがない。
紫で遊ぼうと思って歩いていたら、どうやら今日は、お琴発表会(?)らしかった。
縁側に座って足をぶらぶらさせてれば、どこからともなく足音が近づいてくる。
「師匠!」
振り向けばミッチェル。
ああ、そんなドラマ、昔やってなかったっけ。
「師匠も琴おやりになるんですか?」
嬉々として隣に座ったミッチェルに、煙管片手にあたしは応えた。
「やんないよあんなの。向いてないもん。」
座って琴弾いて、それをオカズ(?)に酒飲むんでしょ?
…やってらんねー。
ぶわあっと煙を吐いて、そんな中心にいる紫を眺めるあたしは、既に、平安京の風流な趣きに飽きていた。
「流石は師匠!流されないんですね!」
「まあ、そうっちゃそうかもだけど。」
あたしが言うのもなんだけど、あんた、大丈夫?
仮にも貴族のご子息様が、そんなこと言っちゃってていいのか?
あたしの珍しい思考を知ってか知らずか、ミッチェルは相変わらず感嘆していた。
あーつまらん。
あ、パチンコでも作るか。
「ミッチェル。」
「はい?」
「こう…ワイ字になってる枝と、ゴムと小石持ってきて。」
「ワイジ?ゴム?」
何もかもにハテナを飛ばすミッチェルにイラつきながらも、取り敢えずわかるように説明するあたし。
すたこらと用意に走ったミッチェルが戻ってきた数分後。
「で、これは一体?」
「こう使うんだよ。」
煙管をくわえパチンコを構えるあたし。
標的となった紫の悲鳴が響いたのは、それからすぐのことだった。
「ひいいいいっ!敵襲!?敵襲ですか!?」
「者共、出合え!出合えー!」
捕まったのは、ミッチェルだけだった。
/続く。
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もちろん、
こまちさんは逃亡しました。
こまちさんを崇拝しちゃってるミッチェル。
大丈夫か。
ちなみに、
これを読んだ優希が
「まんま真心さんじゃないですか。」
…と、
呆れてました(・∀・)